妖精さんがいる
近所のスーパーには、『いつの間にか買い物かごに勝手にこっそり商品を追加する妖精』がいる。
「ちょっと誰よ、この恐竜のおもちゃ付きのガム、かごに入れたの!」
「僕は知らないよ。でも、誰もいらないなら僕がもらってもいいよ」
「ちょっと誰よ、このおつまみチーズ、かごに入れたの!」
「私は知らないよ。でも、誰もいらないならビールのつまみにしようかな」
「ちょっと誰よ、このおせんべい、かごに入れたの!」
「あたしゃ知らないよ。でも、誰もいらないならあたしが食べようかねぇ」
「ちょっと誰よ、この豆大福、かごに入れたの!」
「ワシは知らんぞ。でも、誰もいらんというならワシが食べてやろう。まったく仕方ない」
「ちょっと誰よ、この高級猫缶、かごに入れたの!」
「にゃー」
「ちょっと、この、なに? 国産無添加ヘルシージャーキー? 高っ!? 誰よ、かごに入れたの!」
「ワンワンッ!」
まったく、この『いつの間にか買い物かごに勝手にこっそり商品を追加する妖精』には困ったものだ。おかげでいつも買い物は予算オーバー。ほんと、どうにかならないものかしらねぇ。
……おや、こんなところに見覚えのない高級生チョコが。きっと『いつの間にか買い物かごに勝手にこっそり商品を追加する妖精』の仕業ね。困ったわぁ。ほんと困るわぁ。
あ、これおいし。