表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

龍の溶岩焼き

作者: 初月・龍尖




光沢のある黒い外皮の龍。土に属するその龍を討伐することとなった。

鑑定士であるルーティスはその龍を見た瞬間、悪寒が走った。大声が飛び交う中でルーティスは指揮官に懸念を伝えようとした。しかし、熟練の龍討伐隊であるから心配するなと一蹴されてしまった。

遠目から見ただけで感じる違和感。嫌な予感を感じながらルーティスは龍を見つめ続けた。


討伐が始まる。

まず10人ほどの呪加士が同調術式で一気に龍の護りを削る。龍は自分の護りが削られていることなど気にせずに食事を続けている。

次に槍士が代わる代わる槍を突き刺してゆく。そこで問題が起きた。槍が刺さらないのだ。

龍と言えども同調呪加にさらされ護りが無くなれば簡単に槍が刺さる。幾度も龍を討伐を指揮してきた隊長からしたら槍が刺さらないことは寝耳に水だった。

そこでルーティスは指揮官に激しく怒られた。なぜもっと詳しく視なかったのだ、いつもと違うことがあるならなぜ伝えないのだ、と。ルーティスは反論したがそれはただの言い訳だと切り捨てられた。

結局、ルーティスは龍と討伐隊の激しい攻防の中を護衛を伴い龍に接近することとなってしまった。

術が飛び、怒号が飛び、槍が飛び、剣が閃き、矢が空を舞う中、ルーティスは護衛の盾に隠れるように龍へと接近した。

近づくと龍は小さいいきものが餌場を奪いにやってきたと思っており怒っているのがすぐに判った。そして、餌場を見た瞬間、ルーティスは違和感の正体に気がついた。

餌は原石だった。ただその種類が問題であった。それは黒護石というかなり硬度があるものだった。

ルーティスがその事実を確認し固まった瞬間、偶然にも龍の視線がルーティスの方向へ向いたが動きと匂いで感知しているため衝撃で固まってしまったルーティスの事に気が付かなかった。

護衛に促され陣へ戻ったルーティスは指揮官にそのことを伝えると指揮官は頭を抱えた。

黒護石の脈が地表に出ていること、土龍が見つけ食べていたこと、最上級の討伐難度であることがいまさら分かってしまった。

ルーティスは鑑定士として自分の得たこの龍の情報を全て指揮官へと伝えた。

しばらく目を閉じていた指揮官が出した答えは炙り焼きであった。

全力の呪加と全力の火術。外からの攻撃が通らないのなら中へ熱を伝えてしまえ。外皮が黒護石なら熱の伝わりも早いはず。

指揮官の指示で包囲網が作られた。耐火付加された槍と綱で龍をつなぎとめ動きを封じ全力で呪加と火力を浴びせる。

呪加の影響と火力の熱量により地面がふつふつと沸きはじめ龍の周囲はまるで火口のようだった。

龍は激しく身をよじり自身を留めていた綱を何度も切った。そのたびに槍で刺し動きを止め綱を張り直した。



龍が活動を停止したとルーティスが指揮官に伝えたのは地平線に陽が沈む寸前だった。

煮えたぎる地面が冷え固まるまで2回陽が昇ったが外皮を裂いてみると中の肉はしっかりと熱を持っていた。

討伐隊が肉を食べたところ、かなり美味しかったという。

龍を討伐したその地には黒護石の採掘場が作られた。

黒護石は超火力で精錬されていて高純度のものが産出された。

龍を丸焼にして討伐したことにあやかって大物討伐の前に採掘場の食堂でステーキを食べると討伐がうまくいくという噂が流れた。

いつしか龍の溶岩焼きという名の願掛けステーキになったとかならなかったとか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ