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「ハァハァ…初日から遅刻等という無様な姿は晒したくない…」

走る道の両脇には桜が満開に咲いていて、本来は歩きながら眺めていたいものであったが今回はそうはいかない。

「仕方ない次の休日まで我慢か…」等とブツブツ独り言を呟きながら走っていると自転車に追い抜かれた。

その自転車は追い抜き様にベルを鳴らしてきた。チリンチリーン!

無性に腹が立ったが言い返すのには労力がいる、黙っておいた。

「チャリは先に行った姉に盗られてしまったからなぁ、もう一台はパンクしてるから駄目だ、気付いてはいたんだが直すのをすっかり忘れていた…」


丁字路に来た。ここを曲がれば学校の校門への入り口は直ぐである。学校のグラウンドに差し掛かったとき無慈悲にもチャイムが鳴った。

「あ、終わった…俺の学校生活二年目は最悪のスタートを切ったのである…」

ガックリと視線を真下にし、ゆっくりと時計を確認する為視線を上げた。

長針は真上では無かった。例のチャイムは始業五分前のものであった。

「八時五十五分!?やった遅刻ではない!神は俺に微笑んだのだ!ありがとう神様(と俺の足)!」

校舎に入り階段を駆け上がる。行くべき教室は既にリサーチ済である。

教室に入った。まだ始業のチャイムは鳴っていない。勝利である。

指定された椅子に着席し教師を待つ。


二度目のチャイムが鳴り、教師が入ってきた。教師は教壇に立ち、軽く挨拶を済ませた後すぐさま私達に用事を話した。「おはよう、欠席者は…いないようだな、早速だが君等に前年度の成績表を渡す。番号が呼ばれた者は隣の223教室に来るように。」

教室が騒めき始めた。教師は「静かに。」と生徒を黙らせた後一呼吸置き、番号を言った後教室を出て行った。

悪夢の時間がやってきた。生徒達が教室のドアを行き来する。大体顔で評点が解ってしまうから顔を隠しつつ戻ってくる者が多い。俺は戻ってくる生徒をニヤニヤ見ているとその後の自身の結果が悪ければただの残念な人間と化してしまう気がして机に突っ伏すことにした。


さて自身の番号が呼ばれ、223教室に移動した。

空木大知(うつろぎだいち)君で間違いないね?」

「はい。」

「さて、君の一年秋学期の成績なんだが… かなり低いぞ?どうしたこれは?」

「嘘だろ…」

渡された成績表には、「秀」(一番上)・「優」(二番目)の字が見当たらず、良・可・不可の三字のみで構成されていた。しかもそこそこの頻度で不可の字が。

総合2.2。驚異的低さであった。

「ゲームばかりしているのだろう?私から君に言うことはないよ、以上だ。さあ教室に戻りなさい。」

黙って223教室を後にし、顔を隠しながら元の教室のドアを開いた。

周りから嘲笑される声が聞こえる。猫背かつ顔を隠しながら入っているからから皆は俺の良し悪しを把握したのだろう。ものすごく恥ずかしい。直ぐに表を鞄に放り込み机に再度突っ伏した。周りの人間に詳細を聞かれたが全て無視した。


全員に返し終わったのか教師が戻ってきた。「本日はこれでおしまいだ。解散。」

今日の授業は成績返しのみである。教室にいる生徒は我先にと教室を後にした。

俺は一番最後に教室を離れることにした。

「よし、もう誰もいないか。」特に寄り道はする気がない為真っ先に家を目指す。

今日は同じ道を歩く友人とも一緒に歩く気分ではない。奴は成績がいい上からかってくるタイプの人間(思い込みである)だからだ。


桜が満開の道に戻ってきた。行程の半分である。行きは急いでいたので今景色を楽しむ。

「桜は唯一俺を癒してくれる…」

そう思いながら歩いていると後ろから早い足音がして俺に飛び込んできた。

「だーいち!」友人の両手が俺の両肩を捕まえた。

「よーう元気にしてるかー?」陽気に話しかけてくる。

「ンな訳ねぇだろ!!」彼の手を振り払った。「話かけんなよ!こっちはお前にかまっている暇は…」

「いや、すまんこれは失礼…」彼は態度を直ぐに変えた。

「熱くなりすぎたな、こちらこそ悪ぃ」お互いの謝罪で決着がついた。小さな拗らせは直ぐに対応することで大体何とかなるものである。友人は数少ないからこの程度で終わらせる訳にはいかない。

「セイ(友人に対する俺その他数人からの渾名。本名は桂征也(かつらせいや)である)に自身の愚痴をぶつけるのは頭可笑しいわな(笑)SNSにぶち撒けることにするよ」

「それがいいさ、俺も気に入らない評価の教科あったから同じくSNSに撒くぜ」

ハハハハハ… 笑い声が町に響いた。


                      ・

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                      ・

家の玄関を開けた。「只今帰還。」

返事は無かった。

SNS中毒であるが手洗い、嗽はしてスマホに目を向けた。

俺が今嵌まっている短文投稿型SNS「Worldposter」(ワーポスとよく略される)と言われるもので今世界でワーポス旋風を巻き起こしている。一見普通に見えるワーポスであるがリアル世界で知られるものとは違い、有名になればお金が入るというのが最大の特徴である。何かしらの発言をし、リツイートやGoodマークを大きく稼ぐと運営であるAlut社からその発言をしたユーザーに対し報酬が支払われるようである。(勿論個人情報をAlut社に渡す必要はあるが)…細かいことは此処では書かないことにする。

俺にSNS報酬何てものは遠すぎる代物であるし、有名になりたいからと炎上発言を繰り返すと退会処分を喰らってしまう(通報の蓄積が原因)ので俺は専門という訳ではないが聞き専としてアカウントを運営している。各人が色々な議題で争っているのを見て回るのだ。自分が関心のある分野での論戦は見ていてとても勉強になる。

さて、今日もポストサーフィンするか…


晩飯、就寝準備等を挿み今日のポストサーフィンは深夜三時まで続いた。


翌朝、TVに映し出されたのはSNS中毒の俺にぶっ刺さる内容であった。

「WorldposterにVIP制度を導入するアップデートを施した」


















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