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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

双子の妹が堪らんなく可愛いので全力で甘やかすために冒険者を目指します!!!

作者: こたつ猫/ニヒルなチンジャオロース


俺は兄弟が欲しかった。共働きの両親が家にいなかったこともあり、一緒に過ごす存在が欲しかったのだ。

そのせいか、友人の兄弟の世話を焼くことが多かったと思う。友達の兄弟も、自分の弟や妹の様に思えたのだ。

年下の子の面倒ばかり見ていたせいか、近所からの評判は高く、成長してからは当然の様に保育士になった。


子供達に囲まれる日々は楽しかった。堪らんなく楽しかった! 


浮かれすぎていた罰なのだろう。子供達をお散歩に連れて行く途中、突っ込んでくる車が一台。考えるより先に体が子供を庇ったが、気がついたら視界が赤く染まっていた。


(ああ。来世では兄弟がいますように……)


走馬灯で可愛かった近所の子供達を鑑賞しながら、桜井春人の人生は幕を閉じた。


──その筈だったのだが……。


『おぎゃぁ! おぎゃあ!』


気がついたら赤ん坊になっていました。







********************************







転生一年目


どうも。桜井 晴人(さくらい はると)から冬紀 雪兎(ふゆき ゆきと)にジョブチェンジを果たした雪兎です。


23歳。彼女なし。

仕事を愛する保育士。

特に注目されるプロフィールでは無かった俺だが、現在はかなり状況が変わった。


美人な母に、最高に可愛い双子の妹(重要!)ができたのだ。

前世の家庭環境に不満はなかった。両親は心の底から愛してくれたし、俺も両親が大好きだった。

だがしかし。だがしかし! 気がついたら、隣に妹がいるんだよ!!


I MO U TO ──妹がいるんだよ!! 最高すぎるだろ!!!!!


今も同じベットで、振り向けば隣に妹がいる。


(ああ……。幸せすぎて死ねる……)


妹──冬紀 真白(ふゆき ましろ)はこの世に降り立った天使だと思う。

ふくふくとした手は愛らしく、陽だまりのような笑顔は世界の宝だ。まだ喋れないが、俺の手を握って笑っている姿は神にも等しい。ときめきすぎてキュン死にしそうです。


この愛らしい妹と、優しい母を見て決心した。どんな手を使ってでも、家族は俺が守ると──






********************************






転生3年目(3歳4ヶ月)


真白を愛でながら情報を収集していたが、この世界と我が家の状況について大まかに把握した。


我ら冬紀家は3人家族の母子家庭で、親父は存在しないようだ。離婚したのか死別したのか、はたまた籍を入れなかったのか理由はわからない。とりあえず、親父がいない事だけは確かだ。


そして我らが母さん、冬紀 氷麗(ふゆき つらら)だが、バリバリのヤンキーだったらしい。今は黒髪でお淑やかな女性って感じだが、部屋に飾ってある当時の写真では金髪にピアスを大量につけ、釘バットを構えているかなり危ない人。

おばあちゃんの話では、県内のレディースを纏める総長だったらしい。


そんな母さんは、教習所でバイクの乗り方を指導している。本人的には天職らしい。


女で一つで俺たちを育ててくれる母さんは尊敬できるし、何より大切な家族だ。前世の両親には親孝行する前に死んじゃったし、氷麗母さんは幸せにできるよう頑張りたい。


親孝行するにも、真白を幸せにするにも金がいる。そう思って付けっぱなしのニュースを見ていたんだが、どうやら俺が住んでいた日本とは明確な違いがあるらしい。ザックリ説明すると、


・ダンジョンがあり、スキルや魔法が存在している。

・冒険者という職業がある。

・神様が実際に降臨している。


こんな感じで、ファンタジー要素が混じった世界なのだ。


日常風景は普通の日本と変わらないんだが、ニュースにドラゴンが写っていたり、街中に鎧を着て歩く猛者がいたりする、世界中がコミケのような世界観だ。


この世界も昔からダンジョンが存在したわけじゃなく、50年ほど前に突然現れたそうだ。

いきなり神様が全人類に『世界は岐路に立たされている〜』的な信託を下ろし、ダンジョンを島ごと太平洋の真ん中に作ったらしい。


無茶苦茶な話である。


神様曰く『世界の不浄をダンジョンという形で可視化した。浄化するためにも挑むのだ〜』的な事を言ってたらしく、世界中が騒然となり即座に国連が開かれた。

なんやかんやお偉いさんが話して、ダンジョンに挑む『冒険者連合』を設立。国・人種関わらず世界の為に頑張ろう……そんな経緯で、冒険者が生まれたのだ。


しかし、予想以上に地球の不浄は多かったらしく、神様の制御下に無いダンジョンが世界中に現れた。わかりやすいように、神様が作ったダンジョンを『神に臨む聖域(グランド クエスト)』、予想外のダンジョンを『無法地帯(イリーガル)』と呼んだ。


神様は責任を感じたのか、『グランド・クエスト』には様々な保険をかけた。

・死んでも所定の位置で蘇る。

・モンスターを倒したら、死体残らずアイテムをドロップする。

・ダンジョン内をライブ中継し、定期的に天使によるイベントの企画。


しかも日本も含め所要な国に『グランド・クエスト』作った結果、完全に驚異から興行へと変化したダンジョン。賭博は行われるは、優秀な冒険者はアイドル扱いになり、神からの恵みだと声高に主張するものすら現れたのだ。ダンジョンのおかげで経済が周り好景気となった世界だったが、今度はダンジョンの負の部分──『イリーガル』が牙を向いた。


『グランド・クエスト』と違い命の危険がある『イリーガル』は、封鎖されるだけで攻略される事はなかった。

しばらくは問題なかったのだが、一定期間放置された『イリーガル』からはモンスターが溢れ、周辺の住人を襲いだす──『怪獣進撃(モンスターハザード)が発生した。


世界中で発生した新たな災害は、死傷者が100万人を超える甚大な被害をだし、人類に消えない傷跡を残す。

『イリーガル』の脅威を認識した国連の動きは素早く、軍・民間問わず大量の戦力を投入。『イリーガル』に莫大な懸賞金をかけたのだ。


そんなこんなで、『グランド・クエスト』と『イリーガル』を攻略する二つの冒険者が誕生し、一つの職業として世界に認識されたらしい。


長々とダンジョンのことを語ったわけだが、要するに、


(一攫千金を狙える冒険者になって、妹ちゃんを全力で甘やかしたい)


お兄ちゃんかっこいい! とか言われてみたいし、冒険者とかロマンのある職業はぜひとも挑戦したい。

そんなざっくりした理由で、将来の夢(冒険者になって金持ちになり妹を甘やかす)が決定したのだった。






****************






転生5年目(4月1日)


「おにーちゃん〜! みてみて〜!」

「ん〜……おお!」

「えへへ〜! ようちえんのふく、きせてもらったの〜!」


幼稚園の制服に着替え終わったところに、同じデザインの制服を着た真白が駆け寄ってきた。

可愛い。可愛すぎる。可愛すぎて、お兄ちゃん死んじゃう……!


「とっても似合ってるよ真白〜! そのピンクのリボンも愛らしくて最高だっ!!!」

「ありがと〜! おかあさんがむすんでくれたんだよ〜!」


空色の園児服に身を包んだ真白は、控えめに言っても天使だった。

光沢のある長い黒髪を眉のあたりで切りそろえた、清楚なお嬢様系の髪型。もちもちのほっぺたに、ぱっちりした眉。

天真爛漫。その言葉を体現した溌剌とした姿は、思わず抱きしめたくなる可愛さだ。


「おにーちゃん! くすぐったいよ〜!」


いかん。気づいたら抱きしめていた。


「ごめんよ。あまりにも真白が可愛いから、抱きしめちゃった……」

「えへへ! おにーちゃんならいいよ〜!」

「あ〜! 幼稚園になんていかないで真白と家にいたい〜〜〜!!!!!」


なにこの可愛い生物。ずっと抱きしめていられるわ。頬っぺたプニプニだし、頭をゆっくり撫でると嬉しそうにはにかむし、最高に可愛いし! 

それに真白と居ると以上に落ち着く……! これは真白から特殊なフェロモンが出ているに違いない……!


「ほら! 仲がいいのはわかったから、そろそろ家を出るわよ〜!」


ヒョイ。5年前から全く衰えない美貌の母さんが、離れない俺たちを2人まとめて抱き上げる。

今年で27になる母さんだが、大学生と間違われる若々しさで、近所のおっさんどもから大人気だ。もちろん変なヤツは潰すけど。


そんな母さんは教習所の教官を辞め、今では在宅秘書をしている。それも俺たちとなるべく一緒にいるためという、愛すべき理由だ。


「おか〜さん! すき〜!」

「ん〜? お母さんも真白の事を愛してるぞ〜!」


あかん。実の母親に嫉妬しそう。


「雪兎。そんな顔しなくても、雪兎も真白も愛してるぞ」

「ましろもね! おにーちゃんも! おかーさんもだいすきだよ〜!」

「……うん! 俺も2人が大好きだよ〜!!!」


最愛の家族を思いっきり抱きしめて、改めて誓う。絶対に2人は俺が守ると──。





********************************





転生9年目(小学3年生)



可愛すぎる妹と大好きな母を守ると決心してからは、遮二無二に努力を続けた。

WE TUBEという動画サイトの筋トレ動画を参考にトレーニングを重ね、身体能力の強化に努めた。お陰で同年代では負け知らずだし、真白にかっこいい姿も見せられた。


他には、冒険者になるための訓練も欠かさなかった。

この世界にある魔力の扱いを学んだのだ。魔力とは物語に出てくる不思議な力ではなく、精神に関係する力だそうだ。つまり、精神を鍛えれば誰でも使えるのだ。


魔力は人によって限界値があるのだが、幼いうちから鍛える事で上限を増やすことができる。方法は瞑想など己と向き合う事なんだが、普通の子供には難しく実践できる子は少ない。


……精神年齢が成人している俺は例外だが。


魔力を鍛えることができたら、次はスキル習得の準備を始めた。スキル=特殊能力で、ダンジョンに初めて入った時に発現するのだ。

ざっくり表現するなら、ダンジョンに入った瞬間──ドラ◯エのステータス画面が出現するのだ。


実況動画で確認したが、本当にゲームのような光景だった。


ステータス画面で確認できるのは、ポテンシャル・スキル・ジョブの三つだ。


・ポテンシャル→身体能力や魔力の総量を確認出来る。

・スキル→才能・現在の能力・特技・生き方によって発言する特殊能力。同じスキル名でも、性能に個人差があり、パッシブスキル・アクティブスキルの二種類がある。

・ジョブ→発現条件は不明で、ジョブに合った能力に補正がかかる。ジョブを持たない人も多い。


このステータス画面が表示されるのは、13歳以降にダンジョンにが入った場合で、年齢を重ねる毎にスキルの習得数が落ちるそうだ。

現在の常識では13歳の誕生日、日付が変わった瞬間にダンジョンに入るそうだ。もちろん、最大限に安全に配慮した上でだが。


以上の情報を踏まえた上で、俺はスキルを多く獲得するために努力を重ねた。

有名な冒険者が幼少期にしていた事を調べ、ありとあらゆることに挑戦した。空手・柔道などの武道から、野球・水泳といったスポーツ。さらに勉強や家事にも全力で取り組み、少しでもスキルを獲得できる可能性を高めていった。


特に重視したのが、ビジネス書や自己啓発本だ。冒険者という収入が不安定な職で一生食べれないし、幼いうちからライフプランを立てたのだ。

今は母さんが在宅秘書をするために登録したクラウドソーシングで、俺ができる仕事を受注してもらい、人脈を作ることに専念している。


他には、投資の勉強に心血注いでいる。短期的に儲けが出るハイリスクハイリターンの投資ではなく、投資信託の積み立て・インデックスファンドなど、長期投資によるテイリスク・テイリターンによる不労所得の獲得を目指した。


来るべき13歳の誕生日に備えている俺だが、それより重要なことが──


「お兄ちゃん〜!」


真白が可愛すぎることだ……!!!!!!!!!


今も目の前にいる真白は可愛い! 母さん譲りの健康的な肢体に、溌剌とした笑顔。泣き黒子が幼さの中に、男子を夢中にする魅力を加え、誰もが振り返る美少女へと成長したのだ!


ただ、問題のなが、


「真白。なんで俺の膝の上に座ってるの?」


真白が俺の膝の上から離れないのだ。もちろん真白と一緒にいられるのは嬉しいが、今は()()()()()()だ。

周りにはクラスメイトがいるし、俺は給食当番として片付けをしなきゃいけないんだが……。


「うん? 嫌だった?」

「嫌じゃないさ。真白ならいつでも大歓迎だ!」

「よかった〜! じゃあこのままでもいいよね!」

「もちろん! ……あれ?」


思わず返事をしたが、給食当番があるしこのままじゃダメだろう。


「真白。俺は給食当番に行かなきゃいけないんだ。申し訳ないけど、一度降りてくれる?」

「お兄ちゃん。給食当番に行く必要はないよ!」

「いや、ダメだよ。みんなに迷惑が──」


『『『『真白ちゃん! お呼びですか!!!』』』』


「うん♪ 実は、給食当番をお願いしたいんだけど……」


『『『『我ら真白ちゃん親衛隊にお任せを!!!!!』』』』


「いや、ダメだろう! 陸! お前まで何やってるんだ!!」


思わず眉間を押さえ、幼稚園からの友人を諭す。こいつ、いつからアホになったんだ。


『真白ちゃんの言葉は神の言葉! 親友の雪兎だろうと、邪魔することはできない!!』

『そうだ! 雪兎は大人しく真白ちゃんと一緒にいるんだ!!!』

『ぐぬぬぬぬ……真白ちゃん……!!』

『…………はぁはぁ……真白ちゃん……』


ダメだ。クラスメイトが変態集団に調教されている。それと後ろ2人、もう手遅れだろ。


「みんななりがとう〜! 優しくて働き者の人はかっこいいと思う〜!」


『いっよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 俺が片付けるぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


猛然と走り去る友人を見て心底思う。

──どこで道を誤ったんだ。


「お兄ちゃん♪ これで一緒にいられるね!」

「真白さんや。友達をアゴで使うのはダメだと思う」

「お兄ちゃん……ぐす……怒った……?」

「怒ってないから泣かないで! ほら、頭撫でてあげるから!」

「えへへへ。ありがとう〜!」

「よしよし〜。真白はいい子だなぁ〜」

「ふにゃ〜……(にやぁ)……お兄ちゃん大好き〜!」

「おう! 真白は甘えん坊だなぁ」


『ねえ、見た。今の顔』

『うん。雪兎君に見えないところでの会心の笑み。確信犯ね』

『雪兎君も甘いからなぁ。一生気づかないんだろうね』


クラスメイトの女子が何か話している。真白といるといつも何か噂されてるんだよな。やっぱり真白がクラスメイトに命令してるのが気に食わないのかな。ここはお兄ちゃんが円満に解決を──


「──うおっ!」

「お兄ちゃん。お兄ちゃんは真白だけを見ててね♪」

「お、おう……」


首を無理やり動かされて目眩がする。この甘えん坊で小悪魔な妹を守るためには、やっぱり強くならなくては……!!


来たるべき時に備え、決意を新たにした。






********************************






転生13年目(誕生日)


ついにこの日が来た。ステータスが与えられる、すなわち俺の努力の集大成が見れる日なのだ!


「お兄ちゃん。緊張してるの?」

「うん。ついにステータスが見れると思ったら……」

「大丈夫だよ! お兄ちゃんは誰よりも努力したし、何より真白のお兄ちゃんだもん!」

「はは! そうだな、俺は真白のお兄ちゃんだ! 怖いものなんてないさ!」

「その息だよ、お兄ちゃん!」


13歳になっても変わらず慕ってくれる真白を抱きしめ、緊張が和らいでいくのを感じる。見守ってくれていた母さんが、真白ごと抱きしめてくれて、


「2人とも、本当に立派になったね。お母さんは誇らしいよ」


そっと頭を撫でてくれた。女で一つで俺たちを育ててくれた母さんに報いるためにも気合を入れ直す。


俺たちがステータスを確認するために訪れているのは、『グランド・クエスト』の一つ、東京にある『妖精の花園(シークレットガーデン)』だ。

名前の通り妖精たちが集う花畑が広がるダンジョンで、入り口付近は観光名所として開放されるほど鮮やかな空間であり、安全なダンジョンなのだ。そのおかげで、ステータスを確認する為に訪れる親子連れも多い。


「さあ、時間だ」


母さんのスマホのアラームが鳴り、俺と真白が13歳の誕生日を迎えた事を告げた。


「真白、誕生日おめでとう」

「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!」


手を繋ぎ、微笑み合ってから、同時に花園へ足を踏み出す。そして──


「………これがステータスか!」

「ふぁぁぁ! お兄ちゃん、すごい!!!」


目の前に現れた、半透明なディスプレイに感嘆の声を上げる。そこには、俺の積み上げた努力の結晶があった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:冬紀 雪兎

年齢:13歳

ジョブ:お兄ちゃん 喧嘩師 拳闘士 調教師 お母さん 戦士 軍人 秀才


筋力:B 防御:A 魔力:SSS 敏捷:A + 幸運:S


【スキル】

棒術 剣術 射撃 拳法 格闘術 立体移動 金剛 短剣術 暗器術 追跡 忍術 槍術 盾術 喧嘩殺法 鉄パイプの極み 家事 算術 裁縫 投資 見切り 千変万変 回復術 火炎術 身体強化


【称号】

最強のお兄ちゃん 天然 アホの子 妹に愛されすぎた者 鉄パイプを極めし者 努力の鬼


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



ステータスの評価は、Cが一つでもあれば優秀であり、スキルは一つから二つあればいい方。称号・ジョブはないのがあたり前。

世間一般の同年代と比べれば、俺は優秀であると言える。


「お兄ちゃん! すごいすごい!! やっぱり私のお兄ちゃんは素敵………!」

「ありがとう! 真白のステータスはどうだったの?」

「うーんとね! 恥ずかしいから、あまり見せたくないなぁ……」

「わかった。無理に見せなくても大丈夫だよ。それに、どんな事があろうと──真白のことは俺が守るよ」

「お兄ちゃん……!!!」


頬を染めた真白を抱きしめ、頭を優しく撫でる。様子を見持っていた母さんが、焦れてソワソワしていたので、ステータスを見せた。


「はぁ〜。予想以上にとんでもないステータスね」

「うん! 母さんと真白が支えてくれたおかげだよ!」


柔らかく微笑む母さんは、俺の頭を撫で、


「よくできた息子を持って幸せだわ。それで、本当に冒険者になるの?」

「もちろん! その為に努力してきたんだから!」

「わかったわ。冒険者は危険な職業だけど、雪兎が本当になりたいなら止めないわ」


『……危険?』


「ありがとう! さっそく明日からダンジョンに挑戦するね!」

「一番近いここでも片道1時間かかるのよ? 1人で大丈夫?」

「もちろん! ただ、学校終わったらすぐに向かうことになりそうだけど……」


『……1人……一緒にいる時間が減る……』


「ムリは禁物よ。それに冒険者がモテるかっらって、東京でナンパしちゃダメよ〜」

「しないよ〜! まっすぐ帰ってくるよ!」


『……ナンパ……悪い虫がつく……』


「あれ、真白? 具合が悪いの?」


途中から黙り込んでしまった真白。心なしか顔色も悪いし、震えているようだ。

余程ステータスにショックな事が書いて合ったのかな? ここはお兄ちゃんらしく、妹を安心させよう。


「──真白。冒険者になって、もっと強くなって、真白を守るからね」

「うん! お兄ちゃんが頑張るなら私も頑張るね…………ホントウニガンバルヨ」


家族の愛情を確かめ、俺の冒険者としての物語が始まった──



──ハズだった。







********************************






「──っふ!」


短く構えた鉄パイプを突き出し、ゴブリンの溝内に打ち込む。

体がくの字に折れ、下がった頭に、鉄パイプを渾身の力で振り落とす。


──バキィ。


鈍い音と共に、手に伝わる嫌な感触。ゴブリンが小さな水晶を残し、光の粒子になるのを見送って『妖精の花園(シークレットガーデン)』を後にした。


── 13歳の誕生日から半年後、俺は冒険者として順長に活動していた。恵まれたステータスと多彩なスキルのおかげで、最年少で昇格を果たした冒険者として取材されたりしている。

学校から直接きているせいで、真白と過ごす時間は減ってしまったが、貯金は着実に増えている。


多い日では1日で100万稼ぐ日もあり、母さんが家事に専念できる日も近いだろう。今までは母さんに気を使って、かなり節約した生活を真白にさせていた。

俺が稼げるようになってからは、真白にも金銭面で遠慮しないように言ってるし、やりたいと言っていた習い事にも通わせてあげることができた。


ただ、何をしているかだけは頑に教えてくれなかったが……。


「ただいま〜」

「お帰りなさい! お兄ちゃん!」


いつも通り、玄関でお出迎えをしてくれる真白。ただ、連絡してなくても、俺が帰るタイミングで必ず玄関に居るのが凄い。真白に聞いても『妹だからだよ!』としか言われないし。


「あのね、お兄ちゃんに大切な話があるんだ」


着替えてリビングのソファーに座ったところで、真白が真剣な顔をして切り出した。


「どうしたんだ? そんな改まって」

「あのね、実は私──アイドルになったの」

「………………へ?」

「元からWE TUBEで動画を投稿してたんだけど、チャンネル登録者数が100万人を超えてね!」

「………………へ?」

「月収が1000万を超えたんだけど、噂を聞いたテレビ局の人にスカウトされてアイドルになったの!」

「………………oh」


ウチの妹がスペック高すぎた件。俺が死ぬ気で稼いだ額の、数倍を妹が稼いでいたなんて……。


「それでね! 有名になったせいでストーカーとか出てきちゃってね、お兄ちゃんに守ってほしいんだ!」

「ストーカーだと!! 絶対に許せん! お兄ちゃんに任せなさい!!」

「お兄ちゃん大好き! だからね、私のマネージャーとして側にいて守ってほしいんだ」

「ん……それだとダンジョンに行けな──」

「──行かなくて大丈夫だよ。お兄ちゃんが冒険者になったのは金銭的な理由だし私が十分稼げるからお兄ちゃんはダンジョンに行く必要は無いのだから──」


真白はおれの頭を優しく包み込むように、自分の胸に抱きしめて、


「──ずっと真白のそばにいてね! お兄ちゃん♪」


結局。真白に反論もできず、ストーカーが心配だったおれは、冒険者兼・真白のマネージャーとして真白のそばにいることになったのだ。









****************









私──冬紀 真白の生活はお兄ちゃんを中心に回っていた。


生まれた時から側にいたお兄ちゃんは、私にとってのヒーローだった。幼稚園では誰よりも運動ができて、先生が驚くほど頭も良かった。

小学校に入ってからも常に成績はトップで、常にクラスの中心。私の自慢のお兄ちゃんだった。


憧れのお兄ちゃんに近づくために、私も努力し続けたんだ。お兄ちゃんがWE TUBEの動画で色んな事を始めているのを見て、私もお兄ちゃんとは違う分野で努力を始めた。

お兄ちゃんや他の人に好かれるためにあざとい仕草や言葉遣いを練習して、まずは周りからの評価を集めた。


お兄ちゃんが目立てば目立つほど嫉妬する馬鹿な奴も増えたし、そういうやつを裏でコントロールする事で、私の出来ることも増えていった。


中学校に上がってからもクラスの掌握は問題なくできたし、またお兄ちゃんと楽しい生活が遅れると思ったんだけど、一つ問題が出てしまったのだ。


お兄ちゃんの昔からの目標だった冒険者だけど、必ず冒険者としての活動より私を優先してくれると思っていた。なのにお兄ちゃんはダンジョンにばっかり行くし、何より私の手が届かないところでもモテ始めた。


お兄ちゃんはステータスも高いし、昇格のスピードも以上に速い。メディアに取り上げられているし、人気が出るのはしょうがないことなのだ。だからこそ、お兄ちゃんをそばに置くためにも私もステータスを生かすコトにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:冬紀 真白

年齢:13歳

ジョブ:ストーカー 支配者 先導者 調教 妹


筋力:F 防御:F 魔力:B 敏捷:B + 幸運:SSS


【スキル】

洗脳 歌唱 支配 調教 交渉 魅了


【称号】

最恐の妹 女王様


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



……うん。こんなステータスお兄ちゃんには見せられないよね。


とにかく、このステータスのおかげで人気配信者にもなれたし、アイドルとしてデビューもできた。お兄ちゃんがダンジョンに潜る理由だったお金は解決したし、お兄ちゃんが私のそばにいる理由も作れた。これでもうお兄ちゃんは、私から離れないよね。


「ずっと一緒だよ、お兄ちゃん……!」















閲覧いただきありがとうございます!

微妙にタイトル詐欺な気がしますが、そこは生暖かく見逃してください( ;∀;)

同時に『箱推し少女の異世界譚 〜箱推し少女はヒロインに溺愛され、悪役令嬢と腹黒王子にペット認定される〜』と『ツンデレ少年は天然少女と変態を連れて青春ラブコメをする』を投稿しています!

少しでも面白いと思っていただけたら、感想いただけ得るとこた猫めっちゃ喜びます☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


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