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俺は私になった。  作者: 雪村 敦
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七章 天体観測

「いや~どんなところなんだろな~。西住の実家。」

 学校の有る街からバスで1時間。到着した駅から徒歩で30分。そこからフェリー乗り場からフェリーで1時間の所にある小さな島。それが西住の実家のある神滝島らしい。

「離島の漁師の家だろ?ってことはなかなかのどかなところなんじゃね?」

「でも自然豊かなところだろうから、夜は星とか見えるだろうな~。」

 泊まるための着替えとかのほかに、天体観測用の望遠鏡もあるから、割と荷物が多い。

 フェリーが島に近づいてくると、男子3人の頭の中では、西住はどんな格好で待ってるのかなって言う共通の思考で満たされている。

 音無は、少し子供っぽいTシャツにミニスカートと言った感じだと予想。

 仮名は、白いワンピース一択だと考えている。

 右田は、普通の私服だろうな~と考えている。

 フェリーが島に近づいてくると、乗客の人たちが動き出す。とはいっても、3人を含めて10数人しかいないけど。

 フェリー乗り場の前には、郵便局が1か所と何件か民家があるだけだった。

「田舎だな~。」

「田舎だね~。」

「西住ってもうすぐ来るかな。」

 それと同時に、海岸線をリヤカーを付けた1台のバイクが走ってくる。

「……あれ西住じゃね?」

「……あの緑色のカブって、西住っぽいな。」

「……でも離島だから、同じバイクが居てもおかしくないでしょ…。」

 その言葉とは裏腹に、リヤカーを付けたバイクはフェリー乗り場に入って来る。

「お待たせ!待った?」

 そこには、緑のカブの乗る薄めの黒いライダージャケットを着た小柄な少女がいた。


――――――――――――

 親父と2人で私のカブにリヤカーをつける。

 最初、歩いていこうと思ってたが、親父が「リヤカーつけてけば後ろに乗せられるじゃねぇか。」って言って、結局そうすることになった。道交法的には完全アウトだけど、島民は結構やるし、警察も必要な手段と認めてるのか、駐在さんは目の前でそれをやってても何も言わない。そしてそこだけは道交法に従うらしく、後ろに乗る人もみんなヘルメットを着けてる。まぁほとんど半帽だけど。

 前日のうちにバイクの後ろにリヤカーをボルト止めして、中にヘルメットを置いておく。朝やってもよかったが、明日は親父が朝から漁らしいから、前日に終わらせる。

「いや~明日は(すず)の友達がくるのか~。」

 親父は、数日間一緒にいた結果呼び間違いをすることはなくなった。

「数日間泊まるんだから、お父さんは静かにしてなさいね。」

 お袋は相変わらずの様子だ。

「そう言えばあんた、もう女の子のしゃべり方が板についてきたみたいね。」

「ん?なんのこと?」

 女の子らしいしゃべり方って、私は普通にしゃべってるだけだし、特段変わったことはないと思うんだけど。

「私のしゃべり方そんなに変わった?」

「変わったわよ。例えばその一人称。家に帰って来た直後は『俺』と『私』が混ざってたじゃない。でも生理の後ぐらいから『私』が増えて来たと思うわよ。」

 ……。

 ……あれ?

 ()って私って言ってる?

 あ、今私って言ってる。

 え?もう心は女子なの?

「……。」

「ちょっとあんた、大丈夫?」

「顔色が悪いぞ。(すず)、大丈夫か?」

「……大丈夫。…今日はもう寝る。」

 そのまま自分の部屋にゆっくり戻り、布団に倒れ込む。

 …まさか、知らないうちに一人称が変わってるなんて。ってことはほかにもどこか変わってるところがあるかもしれない。

 考えろ。

 どこかで言ってないか……。

 結局その日はそのまま寝てしまい、翌日起きたら、今度は女になるのが正しいのか、男の心を持ち続けるのが正しいのか分からなくなってくる。

 結果として、ありのままに生きようと決め、特に変えないことにした。

 そして、リヤカーの付いたバイクでフェリー乗り場に行くと、もうフェリーが着いてて、3人ももう港に立ってる。

 乗り場にそのまま入っても、フェリーから降りてくる人はほとんどが島の事を知ってるから一瞬チラ見してそのままスルーするが、音無達みたいに他の土地から来た人は驚いている。

「お待たせ!待った?」

 3人とも無言でこっちを見ている。

「…どうした?」

「西住、この2人はお前の私服に期待してたんだよ。」

「あ!右田言うなよ!」

「秘密だっていったろ!?」

 2人とも右田に詰め寄る。

「…お前ら、元男に盛ってたのか?」

「西住!勘違いすんな!」

「1人の男子として女子の格好が気になっただけだ!」

「いや同じだろ……。」

 そのまましばらく言い争いをしてたが、とりあえず移動することになった。

「…本当にこれに乗るのか?」

「ああ。そうだよ。」

「本当に?」

「ああ。」

 3人とも恥ずかしいみたいだけど、丁度そこに同じスタイルのバイクが通り過ぎる。リヤカーには、男性が2人乗ってあとは農機具で占められていた。

「あんな感じだから、結構ここでは普通だよ?」

「……。」

「……。」

「…2人とも、覚悟を決めよう。」

 右田の言葉で、3人はリヤカーに乗り込む。

 しっかりと後ろの板をはめて、バイクで走り出す。

 最初こそ恥ずかしがっていたが、3人とも、走り出しちゃえばノリノリだ。

 海岸線を走ってる時の海風に気持ちよさに、3人とも喜んでいる。

 漁協に近づいてくると、丁度親父の船が戻ってくるのが見える。

「ちょっと漁協寄ってもいいか!?」

「いいよ~。」

 漁協の前で曲がり、中に入る。

 入り口にバイクを停めると、丁度親父の船が入港する。

「なんか用事でもあったの?」

 リヤカーに乗ってた3人がきょろきょろと見回してる。

「丁度親父の船が帰って来たからさ。一応紹介しとこうと思って。」

 船の方に向かうと、漁でとれた魚を漁協の人たちと積み下ろしをしているところだった。

 少し待って、すべての積み下ろしが終わって親父が船から降りた所に走っていく。

「親父!」

「ん?おぉ(すず)!合流できたのか!」

 親父が、うれしそうな顔でこっちに近づいてくる。手には、魚が入ってるだろうクーラーボックスを持ってる。

「ああ。丁度通りかかったとき親父の船が戻ってくるのが見えたから。あ、こいつらが今日からうちに泊まる音無と仮名と右田。」

「音無です!」

「仮名です!」

「右田です!」

 なんでこいつらここまで揃うんだ…。

「おう!(すず)の親父の西住幸太郎だ!これからしばらくよろしくな!」

「「「お願いします!」」」

「じゃぁ先に家行ってるから。」

「おう!紀美子は漁協で手伝いしてるから、家でゆっくりしててしててくれ!」

「うん。じゃぁ後で。」

 親父は漁協の建物の中に入っていくが、私たちはバイクに戻って家に走り出す。

 普通に走って数分の所にある家だけど、25キロ制限だと、結構時間がかかる。

 それでも5分くらいで家について、駐車場にバイクを停める。

「ついた?」

「ついたよ。」

「お~!」

 バイクを降りると、3人もリヤカーから降りる。

「ようこそ、私の家へ!」

「でかいな~。」

「それに空気も澄んでる。」

「これなら星もきれいに見えそうだな。」

 居間に通して、麦茶を飲みながら今まで何してたか話していると、親父とお袋が帰ってくる。

 夜になれば、みんなで食事をして、3人の天体観測に同行する。

 島にある山の頂上には神社があり、そこからなら遮るものなく空が見えると親父に言われたから、みんなでいくことになったが、3人とも土地勘が無いから、私も同行することになった。

「すげ~。ここでも学校より星がきれいだ。」

 頂上の神社に向かう長い階段を登る。これがまぁまぁ長いんだ…。

 まぁ頂上って言っても、そんなに高いわけじゃない。せいぜい数百メートルくらいだ。わかりやすいところだと、高尾山より少し低いくらいかな。

「学校の天文台で見るよりきれいな星が見えそうだな~。」

「むしろここに天文台欲しいよな~。」

「一応ここ神社の敷地だから……。」

 神社の敷地に天文台なんか作ったら、怒られそうだ。

「にしても、西住は女子になった直後に比べたら随分女子っぽくなったな。」

「それな。それに、夏休み前は俺だったのに、気づいたら私になってるし。」

 やっぱり気づいてたか。

 こればっかりは気付かれると思ってたけど、やっぱり気づかれるよな~。

「…やっぱり、普通に話すときも私になってる?」

「ああ。それに、話し方もちょっと男子の話し方から女子っぽい話し方になってるし。これじゃぁどう見ても女子だな。」

「そうだね。まごうことなき女子だね。」

 そんなにか。

 頂上について、望遠鏡とかを組み立て、ランタンをつけて星図を確認している。

「よし、じゃぁ観測を始めよう。」

 音無の言葉と同時に、星図を見ながら、角度を指示する仮名と、角度を調整する右田、記録用のバインダーを用意する音無。3人で役割分担をしながら、すぐに望遠鏡のセッティングが終わり、観測を始める。

 今日は晴れていたこともあり、すごくきれいに星が見える。

「そう言えば、3人は個人でも星を見たりするの?」

 観測を始めてから少したって、ふと気になって聞いてみると、3人とも顔を見合わせる。

「いや、1人ではみないかな。」

「おれも見ないな。」

「1人で見ても何か寂しいだけだし。」

「そんなもんなの?」

 星なんてどれも同じに見えるけど。

「…雲がかかった星空でも、楽しく見れば美しい空。どれだけ美しい星空でも、寂しく見れば雲がかかった空にも劣る。」

 仮名が、星図から顔を上げて、眼鏡を持ち上げながら言う。

「だな。」

「まさにその通りだ。」

 他の2人も同意してるけど、私にはわかりそうにない。

 その後、4人でわいわいと星空を観測し、3人が記録を取ってるのを見て、さっきの仮名の言葉の意味が少しわかる気がした。

 大学のレポートの影響で書き上げる時間が意外にかかっちゃいました。

 文字数的に少し少ないですけど、多分今後もこんな感じになりそうです。

 大学の授業が対面授業できないからってことで課題を増やして理解度を高めようってのはわかるんですけど、理解できてない問題にあほみたいな量の課題だされても「そんなの出来ないよぉ!」って感じです(笑)

 課題からの攻撃にATフィールド全開にしたいです(笑)。個人的にはクラインフィールドでもいいんですけど(笑)。

 しかももうすぐ試験があるらしいので、次回の投稿はさらに遅れそうです。

 楽しみにしてくださってる方々には、申し訳ないとお詫び申し上げます。

 でもこれからも頑張っていくので(課題もレポートも小論文も執筆も)よろしくお願いします!

 ではでは~。


―追記―

2020/8/18 12:39

 誤字報告を受け、誤字を修正しました。

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[気になる点] 誤字: 親父は漁協の立って物の中に入っていくが、 「そう言えば、3人は個人でも星を見たるするの?」 
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