六章 生理
「ふぅ……。」
実家の風呂は気持ちがいい。と言うか風呂は久しぶりだ。いつもシャワーだからつかるのは久しぶりだ。
風呂から出て居間に向かう。
家自体が結構古いから、ほとんどの部屋が畳で、2階建ての木造日本家屋と言った所だ。
「お、涼!なんだよ戻ってたんなら漁協で待っててくれよ~。」
「待つわけないだろ親父。私はきれい好きだし何より帰省してきた所だよ。それに俺は涼だ!」
今の畳に座りながら、親父の相手をする。お袋は台所で夕飯を作ってる。
女子になったからってわけじゃないが、俺は昔からきれい好きで、漁師はつがないって言ってある。
「いいじゃねぇかよ~。親子で一緒に帰ろうぜ~。」
いつでも親父はくっついてくる。
中学の時もこんな感じだった。
それを無視して、机においてあったスマホを取ると、仮名からLINEが来ている。
≪西住、今週の木曜から空いてる?≫と来てるから、≪俺今帰省中だけど、どうした?≫と返しておく。
「2人とも~。ご飯できたわよ~。」
「「は~い。」」
親父と2人で食器を運んで夕飯食べてお袋と2人で皿洗い。その後は今でお茶を飲みながら、家族でテレビを見る。
「そうだ。涼、明日俺の船で釣りに行かねぇか?」
「釣り?いいけど、私ライフジャケット無いよ?」
「子供用のライフジャケットなら漁協にあるぞ。」
「ならいく。釣り竿とか用意しといてくよ。」
「おう!じゃぁちょっくら明日の準備してくらぁ。」
親父が居間から出ていくと、スマホに通知が来てるのに気づく。
「…お父さん、久しぶりにあなたと釣りができるから楽しみなのね。」
「そうなんだな。俺、もう寝るわ。」
「そう。疲れてるもんね。おやすみ。」
2階の自分の部屋に入って、そのまま布団を敷く。
スマホの通知は完全に忘れている。
そのまま布団に入って、眠りにつく。
次に目が覚めた時、まだ外は暗いが、スマホを見ると、3時と書かれてる。
「……そろそろ起きるか。」
起き上がると、1階に降りてシャワーを浴びる。
朝起きてすぐでは、体が緊張して筋肉がうまく動いてくれない。だから、体を洗うって意味ではなく、緊張をほぐすって意味で体にシャワーをかけて、緊張をほぐしていく。なんだか妙におなかとか胸が張ってる気がするけど、久々の実家だからまだこわばってるのかな。ちょっと腹も痛い気がする。
シャワーを浴びて体を拭くと、さっきまで来てた寝間着を洗濯機に入れると、下着はそのまま着ようと手に取る。すると、クロッチの部分が何か濡れてる。少しピンクの様な色だが、とりあえず無視してそのまま洗濯機に入れる。
しかたなくタオルを巻いて自分の部屋に戻り、一通り着替えて、スマホとか財布とキーホルダーをもって、麦わら帽子をかぶると、1階に降りる。俺が着替えている間に親父も起きてきていたらしく、釣り竿とかを玄関に運んでいる。
「リアカーお前のカブにつけていいか?」
「親父の方が排気量多いだろ?なんで俺なんだよ。」
「いや久しぶりに親子で走るからさ、かっこいいとこ見せたいじゃん?」
「そう言えば、私親父の新しいバイク見たことないんだけど、何買ったの?」
「ん?そりゃおめぇ、カブよ!110ccの!」
「…やっぱカブなんだね。」
お袋もプレスカブ乗ってるけど、一家そろってカブって…。
「そりゃおめぇ、そんな頻繁に壊れちゃぁ使いモンになんねーだろ。それにカブなら俺でも整備できるし。お前のカブも元は俺のだったんだから。4速走りやすいだろ?」
「まぁ、4速あれば速度にも乗りやすいけどさ。それより今日は何狙うの?」
「あぁ、今日はアジ狙いで、できればブリとか行こうと思う。」
「だから竿が少し多いのか。」
会話をしながらも、親父は玄関を出てリアカーを組み立て始める。
俺も外に釣り具とかを運ぶ。クーラーボックスは、いつも漁協にあるのを使うから家からはもっていかない。
「涼、バイクの鍵くれ。」
「ほいよ。」
ズボンのベルト通しにつけてるカラビナを取って親父に投げる。
親父は俺のバイクと自分のバイクを外にもっていくと、リアカーをリアキャリアにロープでつける。そこに俺が釣り具を積み込み、2人でバイクにまたがってすぐに走り出す。夜明け前に船を出して、戻ってくるのは8時前には帰って来るから、弁当はもっていかない。漁協でみんなに豚汁がふるまわれるため、朝も食べずに行く。
「うわ!」
走り出した瞬間、いつもとの感覚に違いに驚き、少しぐらつく。
「大丈夫かー!?」
「ああ!一瞬ぐらついただけ!」
「走り始めたら1速で引っ張れ!速度が乗ったら2速だ!」
「そんな距離無いから1速でいく!先に行っていいよ!25キロしか出せないし!」
法律でリアカーを引いてるときは25キロしか出せない。
すると少し前を走ってた親父がゆっくり近づいてくる。
「たまには一緒に走りたいんだよ!」
そう言って、俺の少し前を走る。
…まったく、素直に言えよ。
漁協につくと、俺は船の近くにバイクを停めて、船に釣り具を積み込む。親父は、漁協の方に行って豚汁をもらいに行ってる。
「……。」
…髪を縛ってくればよかった。
一通り積み込んだらどっかでゴムか何か貰ってくるかな。
まぁ結果誰もヘアゴム何て持ってなくて、テグスで縛った。
船で親父と豚汁を素早くかき込み、出港する。
親父が船の操船をしながら、俺がもやいを解くが、思った以上に重い。今まで力が弱くなった弊害を、あんまり実感してこなかったけど、もやいが重く感じる。
「どうしたー?」
それに気づいたのか、親父が声をかけてくる。
「だ、大丈夫ー!」
大丈夫と言った手前、どうにかしなきゃいけない。必死にもやいを解いて船に乗り込む。
それを確認した親父は、船を出す。
「今結構ギリギリだったろ。」
「仕方ないでしょ!私今は女子なんだから!」
「それもそうか!」
船は暗い夜の海を漁場にまっすぐ進んでいく。暗くて周りが見えないけど、船にはライトが付いてるから、それで釣り具の準備をする。一応、釣りに行こうとは言われたが、これも漁らしい。アジの一本釣りで、それも卸すらしい。まぁ形が小さかったり売り物にならないものは持ち帰るけど。
「ついたぞ!」
そうこうしているうちに、漁場に到着して、親父がアンカーを下ろすと、2人で釣りを始める。まつらない為に、親父は船尾側、俺は船首側で仕掛けを垂らす。波は穏やかだが、少し船は揺れてる。
海底についたことを確認すると、少し巻き上げる。そこからアタリを探すて少しずつ層を上げていく。すると、海底から5メートルくらいの所でアタリが来る。
仕掛けを食わせて、そのままリールを巻くと、すぐにアジが見えてくる。
「親父ー!今海底から5メートルくらいで1匹来た!」
「了解!5メートルだな!」
俺は釣れたアジを素早く船の水槽に入れる。この船は小さい船だが、水槽が付いてるから陸まで運べる。
「おっし!俺も来たぜ!」
親父のその声から、ちょろちょろ釣れた。
合計で60匹くらい釣れた頃に、太陽が昇り、アタリが無くなる。
「そろそろ厳しいかぁ。」
日が昇ってから少し波が出て来た。
「そろそろ引き上げよう!ちょっと釣果悪いけど。帰ろうか。」
「そうだね。」
そう言った瞬間、腹の中で何かが垂れてくる感覚を覚える。
何か、おしっこでも漏れたのかな。女子ってのはトイレが近いとは言うけど、どうなんだろう。
しばらくすると港が見えてくる。周りには、同じ業種の船が同じような方向を向いて走っているが、ほとんどは本土かほかの島に向かっているから、同じ島に向かってるのは数隻だけだと思う。
島に着くと、すぐに魚の選別をする。
大体50匹ぐらい卸して、残りは持ち帰る。漁協のクーラーボックスに入れて、親父と一緒に帰ろうとしたところ、また腹から何かが垂れてくる感覚を覚える。
まぁ大したことないだろ。家に帰ってパンツ変えればいいし。でもさっきから少しおなかが張ってる感じがする。ちょっとピリピリした痛みもあるし。
そのまま釣り具とか道具何かをリアカーに乗せて、2人そろって走り出そうとすると、漁協の人が寄ってくる。
「コウさん!今日卸してくれたアジの代金は後々渡せばいいかい?」
「ん?ああ。いつも通り頼みます。」
中年くらいの男性だ。見たことはあるけど名前は知らない。私はこの島の住人の顔は知ってるけど、ほとんど名前は知らない。
「あれ、こっちのべっぴんさんはだれかね。見たことないけど。」
「あぁ、涼っすよ涼。何かの病気かなんかで女の子になっちまったとかで、今は涼って名前で生活してます。」
「へ~そんな病気があるんだね~。世の中は広いもんだ。どうも、久しぶりだね。僕のこと覚えてるかな。昔よくコウさんと一緒に漁に出てた加藤です。」
「どうも。西住 涼です。訳あって今は女性やってます。」
この人加藤っていうのか。そう言えば昔こんな人と親父と3人で釣りをしたことがあったっけ。
「うん。じゃぁコウさん、また明日ね。」
「おう!また明日!」
親父は元気よく挨拶をすると、そのまま走り出す。私もそれに続いて走る。
やっぱり釣り具を満載にしたリアカーは重い。でも、これくらいなら大して苦にはならない。
家について釣り具とかを片付けていると、もうすっかり日が昇って、7時くらいだ。
「じゃぁ俺は風呂入るから、この魚紀美子に渡しといてくれ。」
「わかった。」
親父はそのまま風呂場の方に行ったから、私はクーラーボックスをもって台所に行く。
台所ではお袋が朝食の準備をしている。
「あらおかえり。どうだった?」
「ほとんどは卸したけど、10匹ぐらいは持ってきた。」
クーラーボックスを台所のテーブルに置くとお袋が中を見て調理方法を考える。
「……あのさお袋。」
「ん?どうしたの?」
俺は悩んだけど、結局さっきの腹の違和感を聞いてみることにした。
「…さっきなんか腹から垂れるみたいな感覚があったんだよね。あと何か腹がピリピリするんだよね。」
「え?ちょっとパンツ脱いでみて。」
ちょっと恥ずかしいけど、帽子をテーブルに置いて、服を脱いでいく。そしてパンツを脱いだ時に俺でも気づく。
パンツに血が付いている。
「これ、生理じゃない?」
「へ?生理?でも痛みなかったよ?生理痛って結構痛いんじゃないの?」
「わかんないけど、とりあえずナプキン付けときなさい。あぁでもその前にパンツ変えなさい。それに着替えも。」
「わかった。」
ナプキンを1枚貰って着替えて戻ると、親父が風呂から上がっていた。
「涼!生理来たって本当か!?」
お袋から聞いたらしい親父が、詰め寄ってくる。
「う、うん。来たみたい。」
「紀美子!今日は赤飯だ!」
「いや初潮じゃないし!」
その後、騒ぐ親父をお袋が押えて、どうにか家族で居間に集まる。
「……そうか、とうとう涼もちゃんと涼になったんだな。」
「でもどうなんだろう。調べた感じ初潮の特徴が何個かあったんだけど。」
生理前に胸とかが張るというのは初潮の特徴らしく、それと同時に経血の量が少ないのも同じらしい。まぁ経血が少ない人もいるらしいが、少なくとも初潮の特徴に数えられていた。そして生理前におなかが痛くなるというのもそれらしい。そして極めつけに、生理が来ても痛みがほとんどないというのは初潮の特徴らしい。
「初潮の特徴があるから初潮なのかもしれないけど、私が女子になってから初めての生理だから初潮なのかもしれないけど、どうなんだろうね。さっき調べた感じだと15歳か16歳くらいに初潮が来るって人も少なからずいるらしいし、初潮なのかなぁ。」
俺とお袋が悩んでいると、親父が締める。
「まぁとにかく、初めての生理なんだから初潮でいいだろ!ってことは赤飯で問題ないだろ!」
「……まぁそうね。じゃぁ今日は赤飯を炊こうかしら。」
「おう!それがいい!」
話がまとまったようで、昨日から見てなかった仮名からのLINEを見る。
≪金曜からみんなで集まって天体観測しようって言ってるんだけど、西住も来るか?≫≪どこか宿が安くて星が見やすい場所知らないか?≫
「……。」
天体観測でどこか行きたいけど、その場所が見つからないと。それで私も来ないかと誘ってるってことは、まぁ荷物運びだろうな。バイクあるし。
にしても星が見えて宿が安い場所か…。
……。
「……親父、お袋。」
「ん?」
「どうしたの?」
「……高校の友達、家で何日か泊めていいかな。」
今回の章を友人に一回読んでもらった所、「お前これ調べたの?」と聞かれたんで、「ほとんど調べてないよ。」と言ったら、変態扱いされました。
でも実はこれ事実で、女の子の体の事は男子たるもの女の子以上に理解していることが重要だと考えているので、前々から調べてたりしてたんですよ。まぁ執筆にあたって一応もう一度確認の為に調べているので、間違った情報はないと思います。
そして、女の子の体に興味がある方に、1つおすすめしたいマンガがあります。
谷村まりか先生の『ほけんのせんせい』と言うマンガです。
この漫画は女の子の体を詳しく、分かりやすく書いているので、入門編としてはとてもいい作品だと思います。
ていうか入門編ってなんだ(笑)
まだまだ続きますよ~。
―追記―
2020/07/10
小説をアップした時深夜テンションだったため書き忘れてしまいました。
九州にて起こりました大雨や洪水で亡くなられた方々に、ご冥福をお祈り申し上げます。
また、今もなお避難生活を続けていらっしゃる皆さまには、神奈川県民の大学生からは『頑張って』の一言と募金程度しかできませんが、いち早い復興と立ち直りをお祈り申し上げます。
九州と言えば、自分は真っ先にSL「人吉号」やまいてつの聖地である人吉市や、ガルパンのみぽりんの実家がある熊本が連想されます。
大学入った最初の夏休みに行きたいなと思っていた場所でもあるので、ぜひともいち早い復興をお祈りもい仕上げます。
―追記―
2020/8/18 11:51
誤字報告を受けましたので、誤字部分を修正いたしました。