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俺は私になった。  作者: 雪村 敦
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四章 日常

 病院で検査を受けた1週間後の朝、俺は学校の会議室にいた。

 病院や学校、俺の親と俺の話し合いの結果、おそらく授業に参加しても問題ないだろうと言う事で、今日から学校に復帰することになった。

「とりあえず、クラスメイト達には朝のホームルームの時に伝えるから、それまでは教室の外で待ってて。説明が終わったら、勝間田先生が呼ぶから、そこで教室に入って。」

「了解です。」

 病院で検査した次の日、俺の親と先生たちで話し合いをして、しばらく経過観察したのちに学校に復帰と言う事になった。だから、経過観察の為に1週間自宅待機をして、今日初登校をすることになった。

「じゃぁ、そろそろチャイムが鳴るから教室に行こう。」

 会議室に集まっていた先生方の中から、担任の勝間田先生と、副担任で色々世話を焼いてくれた神田先生が立ち上がり、俺を促す。

「西住さん。」

 俺達が会議室を出ようとすると、教頭先生が呼び止める。

「なんでしょうか。」

「あなたはもと男子。性格的なことで男子との距離が近いのも当たり前のことです。でも、身近ゆえに起こる事故もあります。気を付けてくださいね。」

 教頭先生が気にすることもわかる。

 今までは男子同士の距離感で事が済んでいたが、これからは男女の友達と言う接し方をしなきゃならない。男子同士の距離感で接すれば、勘違いする男子も出てくるだろう。そうなれば、もしもの場合に損害を受けるのは、俺だけだ。

 いくら友達だと言っても、可能性がゼロだと言い切れるほどの仲の奴はクラスにはいない。

「わかりました。気を付けます。」

 勝間田先生たちと一緒に廊下を歩く。

 もうすぐチャイムが鳴る為、職員室前にいる生徒はほとんどいない。何人か知ってるやつがいるが、相手からすると今の俺は完全に知らない奴だから、転校生にしか見えないだろうな。

「…なぁ、あの子かわいくね?」

「…うん。あの子かわいいな。」

 後ろからそんな声が聞こえてくるが、自分の事だとわかるまで少しかかる。やっぱりまだ女子になり切れない。

 教室の近くにつくと、チャイムが鳴る。

「先生おはよー!」

「勝間田先生おはよーございまーす!」

 後ろから何人か女子生徒が走り抜けていく。

「おーい!廊下を走るなー!」

「「はーい」」

 よく見ると、彼女たちは俺のクラスメイトだ。

 2週間あっていなかっただけで忘れるもんなんだな。いや、目線の高さが変わったから、見え方が変わったのかもしれない。

 教室前についた時には、廊下に出ている生徒はいない。みんな教室内に入っているのだろう。

「じゃぁ、少し待っててな。俺が呼んだら入るように。神田先生、お願いします。」

 神田先生に一度会釈すると、勝間田先生は教室に入っていく。

「ほらホームルーム始めるぞ!」

 教卓前に立つと、生徒はみんな自分の机に戻っていく。

 一番後ろの俺の席は、変わらず残されている。

 号令の後、勝間田先生はそのまま出欠の確認をしていく。空いている席は、どうやら俺の席だけみたいだ。

 連絡事項を満を持したように勝間田先生が話し始める。

「じゃぁ最後に、みんなに紹介したい奴がいる。」

 その瞬間クラスでは男子が騒ぎ始める。

「それってこの前一緒だった女の子ですか!?」

「まじで!?女子か!」

「キター!!女子なのかー!!」

 こう見ると男子はうるせぇな。まぁ元男子の俺が言うのもあれだけど。

「まぁ待て。それも間違いじゃないが、ちょっと特殊でな。詳しい説明は後でするが、とりあえず本人に入ってもらおう。良いぞ!」

「じゃぁ行こうか。」

 神田先生に促されて、教室に入る。

「ヒャッホー!!女子だー!!」

「かわいいぞ!」

「ロリっ子だー!」

 男子たちはどんどん盛り上がっていく。

「ほら静かにしろ!」

 勝間田先生がその場をなだめると、生徒たちが静かになっていく。

「じゃぁ、自己紹介してくれ。」

「はい。」

 俺はチョークを持つと、黒板に名前を書く。

 最初の『西』と書いただけじゃ誰も気づかないが、2文字目の『住』を書いた瞬間、何人か疑問の声が出てくる。最後に、『涼』の漢字を書くと、またざわめきだす。

 振り返って生徒たちの方を向くと、自己紹介を始める。

「久しぶりだな。西住 涼(にしずみ りょう)改め、西住 涼(にしずみ すず)だ。よろしく。」

 俺はこの1週間の間に両親と役所にいって、名前の変更手続きを行った。まぁ変更と言っても、読み仮名を変えるだけだが、割と時間がかかった。

「まじかよ!西住なのか!?」

「性転換手術でもしたのか!?」

「まぁお前ら、静かにしろ。」

 生徒たちが騒ぐ中、勝間田先生が声を出す。

「こいつは、間違いなく西住で間違いない。病院での検査でも、間違いなく本人だと確認された。そして、どうしてこうなったのかは、不明のままだ。西住が今まで休んでいた理由は、こうなった理由を調査したりしていたからだ。だから、転校生ってわけじゃないけど、仲良くしてやって欲しい。」

 勝間田先生の言葉は、生徒たちのざわめきを押えて、自分の独壇場に変えていく。教師ってのはほんとにすごいなって思う瞬間だ。

「見た目はかなり変わっているだろうが、中身は西住で変わりない。変わらずに接するのは難しいかもしれないが、よろしく頼みたい。じゃぁ席は今まで通りの席でいいかな。」

 一度それを言ってから、俺の席を見る。俺の席は、扉側の一番後ろ。前に座っているのはかなりでかい男子だ。男の頃でも見にくかった席だ。

「変えた方がいいな。誰か前の方で変わってくれるってやついるか?」

 誰も手を上げない。

 そりゃ、でかい男子の後ろに行きたい奴なんていないだろ。

「じゃぁ、この列の奴は全員一個後ろにずれてくれ。そして、じゃぁ前の2人は右側に一個づつずれてくれ。」

 結果として、教卓の目の前の席が空く。

「じゃぁ西住は今日からこの席で頼む。」

「了解です。」

 俺はそのまま席に着き、鞄を机の横に掛ける。

 そのままホームルームが終わり、先生たちは出ていく。それと同時に、生徒たちからの質問攻めが始まる。こればっかりは仕方がない。

 今でこそ転校生たちの気持ちがよくわかる気がするが、今の俺はイレギュラーなことが起こった末にこのような形で紹介されているため、通常の転校生以上の反応がかえってくる。

「なぁ西住!今どんな感覚なんだ?」

「女子になるってどんな気分なんだ?」

 質問の内容はどれの好奇心によるものだ。誰もスケベな質問をしてくる奴はいなさそうだ。

「感覚的には体が縮んだという感覚だ。体重の変化は、力の変化のせいで特に変わらない感じがするけど、やっぱり体が軽く感じる。女子になる気分は、いまいち変わらん。」

 そのまま質問に返事をしていると、1時間目の授業開始のチャイムが鳴る。2週間ぶりの授業だ。

 1時間目の現代文が終わると、2時間目は体育だ。残念ながらまだ体操服が用意できていないから、体育は見学だ。正確に言うと、今の俺のサイズに合う制服の在庫がなかったから、しばらくは届かないらしい。

 校庭の端で座ってみてると、男子が何人かこっちに手を振っている。高校に入ってできた友達だ。みんな、俺が休んでいる間、LINEなどを送ってくれていた奴らだ。

 2時間目が終わって、3時間目と4時間目は連続で英語だ。いやになってくる。

 4時間目が終わると、昼休みだ。

 その瞬間、クラスメイト達が俺の方を向くのを確認し、逃げ出そうとすると、俺の手首をとって数人の男子が走り出す。

「西住!ついてこい!」

「かくまってやるよ!」

 さっき体育で俺の方に手を振っていた高校でできた友達だ。

「あ、ああ!ありがとよ!」

 俺の手を引いて走っている音無(おとなし)。部員3人だけの天文部部長だ。

 少し前を走っている眼鏡の男子仮名(かりな)。勉強ができる奴だけどバカだ。もちろんいい意味で。

 俺の後ろを走ってるデブは右田(みぎた)、パシリみたいな感じなことをしてるが、元野球部だけあって体力や運動は、俺を含めた4人の中で1番できる。スポーツテストでも確か学年上位だった気がする。

 そのまま教室のある校舎を出て、少しいった所にある旧校舎に入ると、階段を駆け上がって、3階の天文部の部室に入る。俺は天文部じゃないが、ちょくちょく放課後にここで暇つぶしをしてるし、休みの日の活動の時、手伝いで来ることもある。

 部室の中は、真ん中に長机が2つ置かれ、その周りに椅子が並んでいる。入り口の反対側には、ソファがあり、部屋の端には望遠鏡とかの色んな観測機材、その隣には机の上に置かれたデスクトップ型のパソコンがある。そして、入り口の扉の横には梯子があり、それを登ると天文台がある。週に1回、夜まで残って星の観測をしているらしい。

 こんな地方の公立高校の天文部なのに、結構本格的な機材がそろっている。なんでも昔は結構盛んに天体観測が行われていたらしい。

「いや~。どうにか逃げ切れたな。」

「クラスの奴らすげぇ勢いで狙ってくるんだもんな~。」

「あ、俺飯買ってくるよ。みんな何がいい?」

 音無と仮名がソファに座ると、右田がもう一度外に出ようとする。

「あ、俺焼きそばパンとコロッケパン。」

「俺焼き鳥丼。」

 音無と仮名は、右田に注文を出しながら、金を机に置いていく。それを聞きながらメモを取っている。

「ふむふむ。じゃぁ西住は?」

「俺は、何でもいいや。千円渡すから、適当なの買ってきて。」

「ラジャ。じゃぁ行ってくるぜ。」

 全員小銭が無かったらしく、千円札3枚持って右田が走っていく。

 右田が出ていくと、音無と仮名がお互いの顔を見合わせて、息を整える。

「さて、と。」

「…よし。」

 息を整えると、2人とも俺の方を振り向く。

 その瞬間、少し背中に電撃が走る感覚がある。これが俗にいう危機感と言う奴なのだろうか。

 2人はゆっくりと俺の方に近づいてくる。

「お、おい。何する気だ!?」

 ゆっくりと後ずさりしていると、すぐに壁に背中が当たる。

「ひゃ!?」

 自分でもびっくりするような声と同時に、後ろを振り向く。

 木の壁だ。

「おい!やめろ!俺は男だぞ!?」

 それでも2人ともゆっくり近づいてくる。

「や、やめろー!!」

 目を閉じて、周りを見ないようにする。

 2人は俺にとびかかって来た。2人の手が触ってる場所は、頭と顎と腕?

 ゆっくりと目を開けると、そこには俺を撫でてだらしない顔になってる2人が居た。

「あ~これはかわいいな~。」

「これは世の中にロリコンと呼ばれる人種がいる理由がわかる気がするな~。」

「……。」

 これはあれだ。

 かわいいものをめでる人だ。

 俺を襲う気はないようだ。

 そのまま5分くらい撫でられ続け、さすがにうざくなってくる。

「あーもう!うざい!もうやめろ暑苦しい!」

 2人を押しのけて、ソファに座る。

「あ~もうちょっと~。」

「そのぷにぷにの肌をもう少し触らせて~。」

「キモい!うざい!寄るな!」

 こいつらがオタクだって忘れてた。

 それにロリコンってのはこんなにうざいのか。

 ロリコンから狙われてる幼女の諸君には、頭が上がらないな。

「え~。でも俺らがかくまってあげたからゆっくり昼飯食えるんだよ?」

「教室でみんなに騒がれながら飯食いたいの?」

「ぅぐ、それを言われると何も返せないじゃないか。」

 確かに、あのまま教室に居たら間違いなくゆっくりとした昼休みは取れなかったな。

 ここは仕方がない気がするが、女子目線ではここまで男子は信用ならないのかと、改めて思う。

「…わかった。ただし!変なことはするなよ。俺も今は女子だ。貞操は守りたい。お前らがここで童貞を捨てるかどうかはどうでもいいが、俺ではするな。あと、俺をオカズにしたら殺すからな。」

「俺らってそんなに信用無いの…?」

「らしいな。まぁその条件でいい。じゃぁ撫でていいのか?」

「…。」

 こいつら話を聞いてるようで聞いてないな…。

「……分かったよ。変なことしないならいいよ。」

「ヤッホー!!」

「やったぜー!!」

 ソファに座っていた俺の横に座り、そのまま俺を撫で始める。暑苦しいからやめてほしいが、これが意外に気持ちい。人に撫でられるというのも、結構気持ちいものなんだな。

「ほ~らなでなで~。」

「あごなんかどうだ~。」

 俺は猫か。

 まぁ気持ちいいししばらくはほっとくか。

 あれ?俺前に撫でられた時って気持ちよかったっけ?撫で方がうまいのかな。それか、女子ってのは頭とか撫でられると気持ちいいのか?

 ん?俺が心まで女子になって来てるのか?

 少し撫でさせてると、右田が帰ってくる。

「お待たせ~。あれ!?お前ら何してんの!?」

「あ、おかえり。今はこいつらが俺を撫でまわしてる。2人とも、飯来たから飯食おう。」

「え~。」

「もうちょっと~。」

「離れろ!暑苦しい!」

 2人を引き離し、机につく。気を使ったのか、右田が俺の隣に座る。

「まぁとりあえず飯食うか。」

「そうだな。にしても…。」

 2人は反対側の椅子に座り、右田から渡された弁当を受け取る。

「あの西住がこんなにかわいくなるなんてな~。」

 仮名がしみじみと俺の顔を見てくる。

「西住、弁当かつ丼でよかったか?」

「ああ、ありがとう右田。」

「……。」

 今度は右田が無言でこっちを見てくる。

「…なんだよ。」

「…いや、こんなかわいい子に名前呼ばれてありがとう何て言われるなんて……。野球やってた頃から1回もなかったけど、こういうのはうれしいもんだな…。」

 …男子ってのはこんなもんなのか?俺は1回も思ったことないけど。

 右田が買ってきた飯を食べ終わると、3人は俺がこの2週間何をしてたのか、どんな生活なのかと言う質問をしてくる。

 そんなこんなで昼休みが終わって教室に戻ると、女子に捕まる。

「西住ちゃ~ん、どこ行ってたの~?」

「かわいい~。」

「ぷにぷにだ~。」

 クラスの女子たちに抱き着かれて、撫でまわされながら、男子たちに助けを求めるように目線を送ると、男子たちが「すまんな。」と言う感じの顔でこっちを見る。

 …助けは来なかった。

 女子たちに撫でまわされながらチャイムが鳴るのを待っていると、女子たちに拉致られそうになる。さすがにやばいと思ったのか、音無を筆頭とする男子たちがドナドナされるのを阻止してくれる。

 あのまま拉致られたらどうなるかわかったもんじゃない。こればっかりは助かった。

 5時間目の授業が終わって、6時間目が始まるが、6時間目はロングホームルームだ。

 休み時間は音無達の近くに逃げて乗り切り、先生が教室に入って来るのを待つ。

 勝間田先生が入って来てホームルームが始まる。

 ホームルームは、来年の修学旅行の確認事項と班内での役職決めについてだった。

 行先は北海道。

 地方の学校だと、普通東京とか横浜とかが多いけど、うちでは珍しく田舎から田舎に行く。

 俺が休み始めたころに初期案で班を決めてたそうで、すでに音無達の班に入っているようだ。先生たちは何も言ってなかったが、こういうことは言ってほしい。

 一通り話がおわって、班に分かれて話し合いを始めている。

「西住、ちょっとこっち来てくれ。」

 音無達の所に行こうとすると、勝間田先生に呼ばれる。

「はい。なんですか?」

「ちょっとこっち。」

 扉を開けて教室の外に出ると、神田先生もいる。

「どうしました?」

「西住、修学旅行の班分けについてなんだけどな。どこか女子のグループに合流してほしい。」

「それはどういう?」

 まぁ理由は想像できるけど。

「男子同士である想定で組まれてた班分けだったけど、西住が女子になったことによって、少し状況が変わってきた。学校側の考えとしては、女子と一緒の班に入ってもらいたいと思っている。」

「別に、男子と分けなくてもいいと思いますよ。それに班員は音無達ですよね?ならいいと思いますよ。あいつらなら特に問題は無いと思いますけど。」

 それにあいつらはみんなロリコンではない。…と思う。

 仮名が前に年上が好きだと聞いた気がするが、昼休みを思い出すと少し疑問が残る。

「それなんだけどな。確かに行動班ならそれでいいんだけど、実はその班分け、部屋班も同じ班なんだよ。」

「……へ?」

 部屋班と一緒?

 あいつらと同じ部屋で寝泊まりか。

 ……何か大丈夫そうだな。

「1人部屋を用意してもいいんじゃないかって話しにもなったんだが、うちのクラスで人数の空きがある女子の班もあるし、そっちでいいんじゃないかってなったんだ。」

「……。」

 女子の班かぁ……。

 それはそれで少し心配なんだよな~。

「……少し考える時間をください。」

 そのまま教室に戻って、音無達の話し合いに混じる。班長とかの話し合いはもう終わってるらしいく、今はしおりの読み合わせをしていた。

 そのまま特に何事もなく授業が終わり、生徒たちは下校し出すが、俺は勝間田先生に呼ばれ、職員室に来ている。

「はい。2週間分のプリント。板書のノートは誰か友達のノートを写させてもらってくれ。あと、班分けの件はとりあえず考えがまとまり次第教えてくれ。」

「了解しました。では失礼します。」

 結構話はすぐわった。

 帰りに天文部の部室に行ってノート借りて帰るか。帰りにどっかのバイク用品店かなんかによってヘルメット買うってのも手だな。

「あぁちょっと待て。」

 職員室から出ようとしたら、勝間田先生に止められる。

「ひさびさの学校はどうだった?」

 あ~先生が絶対聞く奴か。まぁこればっかりは仕方がない。

「……楽しかったですよ。良いですね、久しぶりの学校ってのは。」

「そうか。じゃぁ明日からも頑張れよ。」

「はい。分かってますよ。」

 職員棟から旧校舎まで行き、階段を登って天文部の部室前に立つ。

 放課後はいつもあいつらが駄弁るか宿題やっている。たまに観測してる。顧問が来ることは絶対にない。だから俺もよくたまり場的な感じで遊びに来てる。

 部室の扉をたたいたが、中から返事はない。

 扉を開けて中に入ると、真ん中の長机に鞄が置いてある。

 太陽の黒点観測にでも行ってるのかな。

「おーい!お前らいないのか~?」

 返事はない。

 鞄あるし、観測用の器材が無いから出かけてるのかな。少し待ってるか。

 鞄を机に置いて、ソファに座ると、急に眠気が来る。多分久しぶりの学校で、疲れたのか、そのまま眠ってしまう。

 どれくらい寝たんだろう。

 結構寝た気がするけど、どうなんだろう。

 ゆっくり目を開けると、部室には夕日が差し込んでいる。

 ソファの横には、さっきなかった機材が置いてあるから、もう帰って来たのかな。机にはまだ鞄があるから、まだいるんだろう。

「……!」

 急いで体を確認するけど、一応いたずらはされてなさそうだ。スカートの中を確認するけど、大丈夫そう。上も確認するけど、問題なさそう。

 すると、上から物音が聞こえる。

「……上にいるのかな。」

 梯子を上ってみると、2人が望遠鏡を操作して、仮名が端の机で何か調べ事をしている。

 3人の所に行くために、梯子の出口があった廊下をまっすぐ道なりに歩くと階段があって、それを登ると、でかい望遠鏡と机に本棚が何個か置いてあり、本棚の中には本がぎっしり詰まっている。

「お、西住起きたのか?」

「随分ぐっすり寝てたみたいだけど、やっぱり女子の体って疲れやすいのか?」

 3人とも作業を中断して俺の所に駆け寄ってくる。

「いや、単に久々の学校で疲れただけだよ。それより、何してんの?」

「ああ今は今夜は小惑星の観測をしたいからそれの軌道を確認したり、望遠鏡の調整をしてるんだよ。」

「西住もよかったら見て行かないか?」

 久しぶりにこういうのに誘われた。

 まぁ学校自体が久しぶりだからそれもそうか。

「…じゃぁ少し見て行こうかな。」

 この女子の体も、案外悪くないかもしれない。

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