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俺は私になった。  作者: 雪村 敦
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一章 下着

「…服が変わっていないと言う事は、改変されたのは俺の体だけか?」

 驚くほど冷静な言葉が飛び出したと同時に、自分の声の高さにびっくりする。

 いつもの声の高さを思い出し、その声を出そうとするが、出ない。

「……。」

 男子高校生なら、こういう状況になれば、気になる事が1つある。

「自分の体だから問題ない。自分の体だから問題ない。自分の体だから問題ない…。」

 今気づいたが、昨日着ていたはずのズボンとパンツは履いていない。おそらく寝ているうちに体が縮んだから脱げてしまったんだろう。

 ゆっくりと着ているシャツの裾を持ち上げ、鏡に映る自分の局部を見る。

「……。」

 結論から言えば、息子(マイサン)はいなかった。 

 そして、つるつるだった。

 自分の局部を見ても特に興奮することなく、そのまま裾を戻して、リビングに戻り、今後どうするか考えた結果、学校の先生に相談してみようと考え付く。

 スマホを取って、学校に電話を掛ける。

『はい。霧ヶ峰高校(きりがみねこうこう)でございます。』

「あ、すみません。1年C組の西住 涼(にしずみ りょう)です。担任の勝間田(かつまた)先生はいらっしゃいますか?」

『はい、勝間田先生ですね~。少々お待ちください。』

 そう言えば俺今女子の声だけど、大丈夫かな。

 しばらくして、電話口で担任の先生の声が聞こえる。

『はい勝間田です。西住君どうした~?』

「あ、勝間田先生。すみません、女の子になったときの戻り方教えてもらってもいいですか?」

『ごめんちょっと何言ってるのかわからない。』

 その速度で返すのか!?

『…今なんて言った?』

「だから、女の子になっちゃったんですけど、どうやったらもとに戻れるか知りませんか?」

『……ごめん状況が理解できないんだけど、とりあえず、学校にはこれそう?』

「裸ワイシャツでよければ。」

『今から女性の先生に家庭訪問してもらうからちょっと待ってなさい。』

 そう言ってすぐに勝間田先生は電話を切った。

 この先生かなりノリがいいな…。

「先生が来るまで何してまとうかな~。」

 もうこの状況を楽しむ気満々の俺は、とりあえず朝食を食べようとキッチンで昨日炊いておいた米を確認すると、ベーコンエッグを作るため冷蔵庫からベーコンと卵を取り出し、フライパンで焼く。

 皿に盛り付けて、茶碗に米を盛ると、リビングのちゃぶ台に置く。

「いただきます。」

 挨拶をすると、醤油をかけて、米と一緒に食べる。いつも朝はかなりがっつり食べないと体が元気に動いてくれないのだが、今日は様子が違う。いつもの半分程度ですでに腹が膨れている。

「…女子って本当に小食なんだな。」

 独り言を言いつつ、残った米を炊飯器に戻して、残ったおかずはラップをして冷蔵庫にしまう。

 しばらく経つと、チャイムが鳴る。

 恐る恐るドアスコープを覗こうとしたが、今の身長では届かない。

 仕方なくドアの前で声を出す。

「はい!」

『あ、霧ヶ峰高校の神田です。西住君いらっしゃいますか?』

 そう言われたので、ゆっくり扉の鍵を開けて扉を開ける。

 外には、何度か見たことのある先生が立っている。

「おはようございます。えっと、西住君の妹さんかな?」

 さすがに初手から正解にはたどり着けないか。勝間田先生も詳細は伝えてないんだろう。それくらい神田先生は到着が早い。

「…やっぱり俺、今女の子になってますか?」

「え?やっぱりって…。」

 さすがに状況が呑み込めてないか。

「俺、西住です。西住涼。C組の、西住涼です。」

「え!?ちょっと待って、本当に西住君なの!?」

「…わざわざ学校にまで電話してそんないたずらしませんよ。」

「……とりあえず、上がらせてもらえるかな。」

「かまいません。」

 神田先生は、うちのクラスの副担任だ。

 それに、臨床心理士の資格を持っていて、公認心理師の資格も取れるように、勉強をしているのだという。また、明るく口が堅いため、霧高の生徒からは、下手なカウンセラーよりも信頼できるとして、よく人生相談や進路の相談などを受けている。

 急に女の子になったなんて電話してくる生徒に対して、この神田先生を向かわせるとは、勝間田先生もかなり慎重な対策をしてきたもんだ。

 先生をリビングへ通し、俺はお茶を入れている。

「西住君、はここに一人暮らしなのよね?」

「はい。実家は離島で、島に高校が無かったからこっちで一人暮らしをしながら高校に通ってます。」

 やはりまだ疑心暗鬼で、会話の途中で一瞬疑問形になりかけた。

 お茶を出して、神田先生の目の前に座る。

「……西住君、君は、本当に西住君本人なの?私にはにわかに信じられないのだけど。」

「はい。自分でも信じられませんでしたが、朝この体になれずに歩き出した時転んだんです。でも痛みがありました。よく夢では痛みはないと言いますけど、もしこれが夢なら、今までの通説の撤回ができそうです。」

「…とりあえず、君が昨日、下校した時から順々にやってきたことを正確に教えて。」

「わかりました。」

 そこから、昨日俺が帰宅してから今日の朝までの行動を事細かく思い出しながら、先生に伝えていく。

「……。」

 俺から一通り話を聞くと、その内容をメモした手帳を見ながら、黙り込んでいる。時計を見ると、今出れば始業には余裕で間に合う時間だ。

「…学校に連絡を取ってくるから、西住君はそのまま待ってて。」

 そのまま神田先生はスマホと手帳を持って部屋から出ていく。

 10分ほどたって、神田先生が戻ってくる。

「とりあえず、学校に行って対応を考えたいから、何か服持ってる?」

「俺がこの体格に合う女性服持ってたらそれはただの犯罪でしょ。」

「それもそうか。じゃぁ、ちょっと待ってて。」

 そう言って神田先生が部屋を出ていくと、外で車の音が聞こえて来た。神田先生車で来たんだな。

 しばらくと言われ、結果20分くらい待って神田先生が戻ってくる。時間的には今から学校に行っても確実に遅刻するやつだ。

「お待たせ、これ多分サイズ合うと思う。」

「ありがとうございます。」

 手渡された紙袋の中を見ると、中にはうちの女子の制服であるセーラー服が入っている。俺にオタク趣味はないが、男子はみんなこういうのが好きと言う妙な偏見があるらしい。

 袋の底には、ファミマで売っている≪着てすぐ気持ちいい ショーツ≫と、≪着てすぐ気持ちいい キャミソール≫が入っている。

 確かここから学校までの間にファミマが2か所くらいあった気がする。

「ごめんね。この時間だと洋服屋さんって開いてなくて、コンビニので我慢して~。」

「…大丈夫です。これが初めての女性向けの下着なので、違いは判りません。」

 そう言いながら、着替えようと立ち上がると同時に、俺の初めての感覚に襲われる。

「あ、トイレに行ってきます。」

「あ、うん。行ってらっしゃい。」

 そそくさとトイレに入ってパンツを脱ごうとすると、今なにも履いていないことを思い出す。

 そのまま立ちションしようとするも、今は女子だったことを思い出して便座に座るも、どこに力を入れれば小便が出るのか、分からなくなる。

 今まで通りに力を入れようにも、何か的外れの様な感覚だけ残る。

「……。神田せんせーい!」

『何かあった?』

「先生、おしっこってどこに力入れればいいんですか?」

『…あ。そうか、そうだったね。えっと、なんていうんだろうな。とにかくリラックスすれば出ると思うよ。あんまり力みすぎないで。』

「や、やってみます。」

 力みすぎてた力を抜いて、リラックスしてみる。

 すると、懐かしいおしっこの出そうな感覚が来る。思っていたよりも、おしっこの感覚から出るまでの時間が短い。女の子の尿道は短いというのは本当なのかもしれない。これから気をつけねば。

『どう?できた?』

「出ました!ありがとうございます!」

 すべて出し終わってから、トイレットペーパーを手に取ると、外から神田先生の声が聞こえる。

『あ、おしっこした後はしっかり拭いてね~。あでも拭きすぎるとひりひりしちゃうから気を付けて。』

「わかりました。」

 今までの感覚と何もかもが違う。

 そしてトイレを出ると、神田先生が立っている。

「無事出来てよかった。女の子は男の子よりおしっこの感覚があってから耐えられる時間が短いの。だから西住君も、いえ、西住さんも気を付けて。」

「一人称変えた方がいいですかね。」

「それはあなたが自分の体に慣れてからでいいと思うよ。取り敢えず一回学校で今後の事を話し合いましょう。」

「わかりました。じゃぁ着替えますね。」

 さっき神田先生が持ってきてくれた制服と下着に着替える。いや、下着は着てなかったから下着を着て制服に着替える。

 神田先生が買ってきてくれたのはありがたいが、Mサイズでは大きかったみたいで、ショーツは結構緩めでキャミソールはぶかぶかだ。普通にMサイズでこのサイズ感って、今の俺のサイズはいったいいくつなんだよ…。

 仕方なく部屋にあった細めのベルトで対応して、ずり落ちるってことはなさそうだ。

 とりあえず、神田先生の車で学校へ向かうために家を出る。持ち物はとりあえず財布とスマホとカギだけでいいらしいから、それだけ持って家を出る。

 今後もこの体で生活するならジャケットとかヘルメットとかグローブ買い替えなきゃな~。まだどれも買ってから2ヶ月くらいしかたってないのにな~。

 車窓にファミマを2回通り越しながら、走っていると、神田先生が心配そうに聞いてくる。

「そう言えば下着はサイズ大丈夫そう?」

「どうなんでしょう。男子目線で言えば結構緩いくらいかもしれません。」

「近くのファミマは取り扱いがそのサイズしかなくて。制服も少し大きめでしょ?」

「これもどれくらいなのか分からないですけど、少し袖は余ってますね。女子ってどれくらいのサイズ感で着てるのか分からないですけど、自分的にはは結構緩いですね。」

 言ってて悲しくなるわ。

 もともとの体格は男子の中でも割といい方で、身長こそ高くないが体格はがっちりとしてたのに、今ではこんなかわいらしくなっちゃって。そう言えば鏡で見たときの顔は女子の中でもかなりかわいい方なんじゃないかなって顔をしてたな。

 車で学校に入り、駐車場から校舎に入って、職員室前につくと、クラスメイトが数名立っている。面子的にはたまに遅刻してる面子だ。ちょくちょく話すが、まぁクラスメイトって肩書が似合うくらいの位置だ。

「あ、神田せんせ~。おはようございま~す。」

「今日は遅いんですね~。もう始業してますよ?」

「それを君達に言われたくないよ。今日も遅刻?」

「はい。今勝間田先生が書類取りに行ってます。」

 すると、本当に職員室から勝間田先生が出てくる。

 男の時なら、勝間田先生は俺より身長なら高かったが、肩幅とかで見れば俺の方がよかったから、恐怖心何てみじんも感じなかったが、今の身長と体格だと、少し怖いかもしれない。世の中に男性恐怖症の女子が一定数いる理由がわかるかもしれない。

「おいお前ら!これ書いて2時間目始まるまでに俺の机に置いとくように!お、神田先生、帰られましたか。どうでした?西住の様子は。」

「え~西住今日休みなんすか~?」

「まだ分からんから、お前ら先に行ってろ!HRはほかの先生に頼んであるから。」

「わかりました~。」

「神田先生もじゃ~ね~。」

「ちゃんと授業受けなさいよ!」

 そうしてクラスメイト達は教室の方に歩いていく。俺の事は神田先生に隠れて見えなかったんだろう。

「…まったく。で、西住どうでした?」

「あ~西住さんなら……。」

 神田先生は自分の後ろに隠れていた俺を前に出す。

「はい!西住さんです!」

 もちろん、この場に女子の制服を着た男の時の俺が出てきたら、おそらく失禁ものだろう。だけど、今この場に立っているのは女バージョンの俺だ!

 まぁ男に戻れるかはわかんないけど。

「………これは、西住?」

「先生、生徒に向かってこれはないでしょ。」

 思わず口から出てしまった。

「本当に西住なのか?」

「間違いなく西住です。西住涼。1年C組26番西住涼です。学生証は…顔が違うから証明できないし、免許証……も顔が違うから証明にならないか。何が証明になりますかね。」

「そのジョーク交じりなしゃべり方は間違いなく西住だけど、やっぱり信じられないな…。」

「おや、勝間田先生、神田先生、おはようございます。」

 勝間田先生の向こう側から、中年の女性教諭が歩いてくる。

「あ、教頭先生。」

「おはようございます。」

「そちらの生徒が、先ほど話してた西住君ですか?」

「あ、ええそうです。今朝彼から電話がありまして、その…。」

 教頭先生は、この学校で一番の常識人であり、なおかつ生徒に教えるのも上手く、教職員からの信頼も厚い人物だ。

 にしても、説明しにくいだろうな~。わかるよ~その気持ち。俺だって今朝2回説明したけどいまだにちゃんと説明できてるのか気になるし。

「西住君、さん?」

「今は西住さんでお願いします。」

「わかりました。では西住さん。取り敢えず場所を変えましょう。第2会議室を取ってあります。勝間田先生、あなたはクラスに戻ってください。神田先生は西住さんに付き添いを。」

「わかりました。」

「了解です。では自分はこれで。西住、後でな。」

「はい。先生も頑張ってくださいね。」

 勝間田先生は職員室へ戻っていく中、教頭先生はそのまま歩いていく。もう会議室の鍵は持ってるのか。

 俺と神田先生もその後について会議室に入る。

「では座ってください。」

 教頭先生に案内されて、椅子に座ると、反対側に教頭先生と神田先生が座る。

 何も悪いことをしたわけじゃないのに、教頭先生が正面に座ると威圧感が半端じゃない。できればこういう機会は回避したかったんだけどな~。

「さて、西住君。いえ西住さん。あなたの事を在校生名簿にて確認したところ、間違いなく男性。そして、現住所や本籍の場所も確認できてます。唯一違うのは、目の前にいるあなた自身の性別と容姿です。今のあなたはどう見ても男性には見えません。」

「自分でも分かってます。本当に女なのか確認もしました。」

「その結果は?」

「言わせないでください。」

 今の俺は女なのだ。だから少し女子らしいことを言ってみる。

 中身は男だから女子らしいことを言っても意味はないか。

「いえ、無理に聞く必要はないと判断します。これに関しては、神田先生が確認していると思いますので。」

「直接ではありませんが、確認はできています。」

「わかりました。とにかく今はこの状況になった理由の解明が先決です。学校より病院の方に連絡を入れておきます。各種の検査などを受けてください。また、今日はこのまま下校してかまいません。神田先生、この後お時間空いてますよね。彼女を送ってあげてください。さすがに今日これから検査と言うわけにはいかないので、今日は自宅待機でお願いします。それと、明日親御さんをお呼びして親御さんと我々教師陣、それとあなたで面談を行います。この件についてご報告しなければなりませんので。」

 一通り説明を終えると、手に持っていたバインダーに目を落とす。

「西住さんのご両親は、明日は学校にご足労願えますか?」

「入学式の時にあったのが最後なので、分からないですね。それにこの時間帯は港にいるか漁具(ぎょぐ)の点検をしていると思うので、実家にかけてもつながるかはわかんないですね。」

「そうですか。では夕方か、失礼になりますが夜に連絡を入れると言う事で問題ないですかね。」

「大丈夫だと思います。親父もお袋もそういう所は気にしない人なので。」

 実際、深夜に「ちゃんと飯食ってるか?」と聞くだけの電話をしてきて速攻で切られたことがある。

 心配してくれるのはありがたいけど、深夜3時はさすがに起きてないんだよな~。もうもはや早朝とかいうレベルじゃないぞ。

「では本日は以上です。今日の出欠席は、校長や勝間田先生と、今までの生活態度をもとに協議します。」

 あ~まじか~。

 俺今まで真面目に生活してきたっけな~。

「では神田先生、あとよろしくお願いしますね。」

「はい。わかりました。じゃぁ西住さん、家まで送るよ。」

「感謝です。今この格好で誰かに合ったらさすがにSAN値削れます。」

 神田先生に連れられて校舎を出る。

 時計は、腕の太さに合わず家に置いてきたが、会議室でチャイムが鳴り、外が騒がしくなったため、おそらく1時間目が終わったころかな。と言う事はもうすぐ11時か。

 校舎を出て、神田先生の車に乗ると、先生が運転席に乗る。

「先生、家帰ってから外出してもいいですか?」

「自宅待機だから家に居なさい。」

「いや、下着一枚だけなのはちょっと…。それにこの下着も大きいので、少しの間だけだとしても、一応買い足しておきたいんですが。」

 男用の物は着る気になれない。と言うか、サイズが全く合わないから着れない。しかも女子が男子物の下着をつけてるのはただの変態だ。

「あ~下着か。でも外出させるわけにはいかないし…。でも必要だからな~。」

 まだ動き出していない車の中で、エンジンすらかけずに悩み込んでいる。

「あ、だったら先生、先生が一緒に来てくれればいいんじゃないですか?」

「え?」

「だって、単独での外出がだめなのであれば、監視する人が居ればいいんじゃないですか?先生の時間があればの話ですけど。」

 よく考えれば、先生と下着を買いに行く状況はだいぶやばいな。あ、今俺女だった。セーラー服姿の少女がスーツ姿の人と下着を買いに来るって、店員から見たらどうなんだろう…。いやでも今は女だから普通に見えるはず……。

「確かに、私が一緒に行けば問題はないね。でもそれなら今のあなたのスリーサイズとか身長とか図らなきゃいけないけど。あ!保健室で測れる!」

 そう言えば保健室には体重計とか身長測るあれもあるな。そう言えばあれってなんて名前なんだろう。

「保健室なら身長計もメジャーもあるから測れるし、保健室の先生ならあなたの事知ってるから行けるね。」

 あ、あれ身長計っていうんだ。まぁそのままの名前だけどさ。あれ?俺今から身長とかスリーサイズとか図られるパターン?

 そのまま神田先生に連行されて保健室に向かい、身長計で身長を測ったところ、140cmだった。

 …小学生かよ。

 そのままスリーサイズを測るために制服を脱いで神田先生に測ってもらう。その数値を保健室の先生がメモしていき、すべてのサイズを測り終わると、保健室の先生がぼそってつぶやいた。

「……小学生みたいな体格ね。」

 俺って今そんなに小柄なの!?

 確かに勝間田先生も確か170cmか170中盤だったはずだし、それから見ても明らかに20cm低いって感じではなかった気がする。

「このサイズだと、140サイズで丁度いいかもね。」

「そうですか。ありがとうございます。」

 神田先生が保健室の先生と話している声を聴きながら、とうとう少女ではなく幼女だったんだなと考えていた。

「じゃぁ、下着買いに行こうか。」

「はい。来てくれますか?」

「もちろん。」

 神田先生の車に乗って、近くで女性用下着、いや、女児用下着が売っている店を思い出す。

 …しまむら。

 …イオン。

 …ユニクロ。

 この中ならユニクロ一択だな。たまに行くし。しまむらは行ったことないし。イオンの下着コーナーも入ったことないし。と言うか、一緒に測ったバストサイズがAAA(トリプルエー)サイズってなんだよ。それただの幼女じゃん。つーか幼女だったわ。見た目は。中身は高1だ!

 そんなこんなでユニクロに到着すると同時に、俺今財布に金入ってたっけと思い出し、財布の中を確認する。所持金5320円。

 …噂で聞いた話、女性の下着って高いって聞いた気がする。

「先生、下着ってどれくらいするんですか?」

「値段ね~。普通のブラジャーなら2000円くらいかな~。でも西住さんのサイズならキャミソールで十分よ。もし足りなければ私が出してあげるから。」

「5000円で足りますかね。」

「あ~どうだろう。どれくらい買うかにもよるからね~。一回行ってみよう。」

「はい。」

 ユニクロに入って一番の衝撃は、まじで自分が子供用の下着しか合わなかった事。

 今ならチビな高校生が泣く泣くキッズサイズを買う理由がわかる気がする。少なくともユニクロには大人向けの物で私に合う商品はなかった。と言うか大人向けのキャミソールが置いてなかった。

 キッズ商品の所に行くと、丁度値下げしてたようで、1枚500円くらいだったから、5枚かごに入れ、次にショーツを見に行く。

 やっぱり大人向けの物に私に合うサイズはなかった。

 現実を知って落ち込むたびに慰めてくれる神田先生の胸を見て、この人は日本人の平均くらいなのか。と思いつつ、キッズコーナーに向かった。

 ここでまたもや俺は驚きを隠せなかった。

 なんで無地がないんだ!

 品切れしてますってなんだ!

 仕方ないじゃねぇかこの野郎!

 もう困ることを通り過ぎて笑いをこらえる神田先生を横目に、唯一私のサイズに合うものがあった青のドットが入った3枚組のショーツを2セットかごに入れる。

 これで大体4500円くらいか。

 そこで、俺はある事を忘れていたことを思い出す。

 俺、このサイズの靴下もってなくね?

 靴下のコーナーに向かうと、これまたまぁまぁな量がある。

「うちの学校は指定の靴下無いから、適当に買っていかなきゃダメだね。」

 そう言えば今自分が裸足ってことを忘れてた。

 先生の助言の元、ハイソックスを2足ずつ、白と黒をかごに入れて、これ以上はないことを確認して、レジに向かう。

 結果5000円を超えて先生に借りた。

 先生まじですみません後で返します。

 心で必ず返すと誓い、買ったものをもって神田先生の車に乗る。

「じゃぁ、これから家に行くけど、くれぐれも外出しないこと。一応まだ午前中だけど、絶対に出ちゃダメ。宅配便とか以外で出ちゃダメ。わかった?」

「わかりました。」

 そうして家の前まで送ってもらい、先生と別れて自分の部屋に入る。

 一人暮らしってのは、案外寂しいもんなんだなぁ。

 部屋に入って、特に腹が減ってるわけじゃないから、昼飯も作らないで制服を脱ぐ。一応借りものだから、ハンガーに掛けておく。

 下着だけになったけど、どれもぶかぶかで気持ち悪から全部脱ぐ。

 ふとさっき買ったものが入ってる紙袋を見る。

 無言で紙袋を開けて、キャミソールを着てみる。

 しっくりくる。

 そりゃそうだ。サイズをあわせてかったんだから、合わないわけがない。

 次にショーツを履いてみる。

 子供っぽいデザインだが、これまた妙にしっくりくる。

 男性用のパンツなら、息子(マイサン)用に少し出っ張っているところを、女性用にショーツなら、そんなでっぱりは必要ないため、ぴったりと股にくっついているのが分かり、意外にも股でクロッチの感触もわかる。多分元男だからそう言う感覚には敏感なんだろう。

 ふと今の自分の姿が見て見たくなり、洗面台の前に行き、台に乗って自分の姿を見てみる。

 どこからどう見ても子供だ。

 まごうことなき子供だ。

 だけど、容姿はなかなかかわいい方なんじゃないだろうか。

 こういう子がかわいい服着てればかわいいんだろうな~。

 ……。

 ……あれ?

「……俺、この体に合う普段着、無くね?」

―追記―

 次の話、6月20日13時ごろ更新予定です!


―追記―

2020/8/13 11:40

 誤字を発見いたしましたので、修正いたしました。


―追記―

2020/9/3 0:57

 今頃気づき、一部加筆しました。

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