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俺は私になった。  作者: 雪村 敦
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十一章 バイト

(すず)、何かあったらすぐに帰ってきなさいよ。」

「俺たちはいつでも待ってるから。」

 親父もお袋も、実家から高校の近くのアパートに戻る事が心配らしい。

「なんかあったら連絡するよ。それに、片道3時間くらいで帰ってこれるから。」

「そうは言っても…。」

紀美子(きみこ)、本人が言ってるし、俺たちは信じる事しかできないだろ?」

 それに納得したのか、お袋は何も言わなくなる。

「だけど涼、紀美子だけじゃなくて、俺も心配するんだ。たまには、連絡の一つでもよこせよ。」

「…わかったよ親父。お袋も、ちゃんと連絡するから。な?」

「……分かった。気を付けるのよ?」

「ああ。じゃぁな。」

 バイクの箱に鞄をしまい、バイクで走り出す。

 来た時と逆の道のりでアパートに帰る。約1ヶ月ぶりのアパートだからか、かなり懐かしく感じる。

 あ~。帰って来たんだな~。

 あと2日で学校が始まるが、多分何事もなく過ぎる気がする。だから、とりあえず何しようか考えた末、バイクのエンジンオイルを交換しなければいけないことを思い出し、ホームセンターに向かう。工具とかオイルとかはあるけど、処理箱がないから、それを買わなきゃいけない。まぁ処理箱じゃなくてもいいけど、貯めた容器を洗わなきゃいけないことを思うと、処理箱でいいやってなった。

 処理箱を買ってきて少し時間を置く。走って来た直後のエンジンは熱いから、しばらく冷やさないといけない。と言うか、火傷したくないからまぁまぁ冷えた状態でやりたい。

 しばらくしてから、色々準備してバイクの横に立つ。

 オイルキャップを外して、エンジンの下についてるドレンボルトをメガネレンチで緩め、手でボルトを外す。外れる前に、ボルトの下に処理箱を置いてオイルを受け止める為に置く。ボルトを外して、オイルが抜けきるまで待つ。親父曰、オイル交換は待つのが大事らしい。

 オイルが抜けきると、ドレンパッキンを交換して、ドレンボルトを締める。前の体なら、普通に締められたけど、今は結構力を入れないと締められない。

 ボルトを締めると、オイルキャップのついてた穴からオイルを流し込む。昔は測ってやってたけど、今では感覚でできるようになった。

 オイルを入れて、オイルキャップを一度つけて、オイル量を見る。今回は一発で丁度いいくらいに入れられたから、そのままオイルキャップを締めて、紙で垂れたオイルを拭きとって、残ったオイルとかをもって部屋に戻る。

 そして、グローブとヘルメットを持ち、腕時計をつけて、もう一度部屋を出る。オイル交換をしたら、しばらく走り回るのが俺と親父の習慣みたいなもんだ。まぁ親父はほとんど島から出ないから、そこまでオイル交換をするわけじゃないから、そこまで頻度的には多くないけど。

 ヘルメットをかぶってグローブをして、バイクにまたがると、キックを蹴ってエンジンをかける。

 そのまま近所を走りまわっていると、ふと高校の前を通りかかる。

「……バイト探さなきゃな~。」

 ぼそっと独り言をこぼす。

 夏休み前に見つけていたバイト先は、他の人が入ったのか、募集が打ち切られていた。

 この辺では、あまり店が募集をかけてもやってくれる人材が少ない。だが、近くに高校があるなら、需要はある。そして、店側としても高校生をバイトとして雇いたい。高校側は、バイトをすることはダメではないが、危ないバイトなどはやってほしくはない。結果として、高校側がバイトの内容を調査して、問題が無ければ高校側が高校生にバイトを斡旋するという形をとることにしたらしい。だから、うちの高校に通っていて、バイトをしている生徒はそのほとんどが高校斡旋のバイトだ。ちなみに、俺もそこで見つけた。

 俺は一度家に戻ると、高校の制服に着替えて、もう一度バイクに乗る。

 高校に入ると、駐輪場にバイクを停め、図書室に向かう。図書室に設置してあるパソコンで、バイトの斡旋を確認することができ、そこから応募することもできる。

 図書室は、夏休みと言う事もあって、生徒は誰もいない。それに、司書の先生もいないらしく、代わりの先生が常駐している。

 図書室に入って、先生に一言かけてからパソコンの前に座ってバイトを探す。

 最初は特にキーワードとかを絞ることもせずに、ただバイトの募集を眺める。

 多すぎて意味が分からなくなってきたため、バイトのキーワードを絞ることにした。

 《対面なし》《一人作業》《手軽》

 これで絞ると、最低賃金の仕事しか出てこない。まぁあたりまえだ。

 ほかにもいくつかのキーワードを検索していると、後ろから肩を叩かれる。

 振り返ると、そこには神田先生が立ってる。

「よ。元気してた?」

 神田先生は、俺が入院中にお見舞いに来てくれたらしいが、残念ながらその時の俺は記憶がなかったうえ、その時は意識がなかったから全く覚えていない。

「神田先生、お久しぶりですね。入院中来てくれたみたいですけど、俺眠ってたんで、あいさつできずにごめんなさい。」

「あら?口調が男らしくなったじゃない。」

「まぁ、色々あったんですよ。」

 少し視線を逸らすと、神田先生はパソコンの画面を見る。

「バイトを探してるの?」

「はい。さすがに親から小遣い貰い続けるのはどうかなと思いまして。まぁ接客とかはできれば避けたいので、仕分けとか配達とか探してるんですけど、配達はどこもジャイロ使ってるから、原付免許取っちゃってそこに行く人が多いんですよ。俺みたいに中免持ってるやつもほとんどいないし。」

「西住さん、普通二輪持ってるんだっけ。」

「はい。ミッションでとりました。」

「そうか…。」

 それを聞いて、神田先生は少し考えだす。

 この学校って申請なしで免許取ったらダメなんだっけ。

「西住さん、ちょっと待っててね。」

 そう言って神田先生は、急ぎ足で図書室を出ていく。

 何かあったらしいけど、とりあえず、怒られるわけじゃなさそうだから、ひとまず安心する。

 パソコンに向き直って、改めてバイトを探していると、神田先生が封筒をもって駆け足で戻ってくる。

「西住さんお待たせ!」

 まぁまぁ大きい声だったから、本人も言ってから周りを確認する。図書室内は俺以外の生徒が居なく、常駐の先生も、イヤホンをしながら本を読んでるから、気にしていなさそうだ。

 そのままゆっくりこっちに歩いてくると、俺の隣に座る。

「これは、学校側で調査が終わってるけど、これの募集条件を満たす生徒がほとんどいないって理由から、募集元に断りの連絡を入れようか審議されてたものなんだけど、西住さんにちょうどいい内容だったから。」

 そう言いながら、持っていた封筒を俺に差し出してくる。

 そのまま封筒を開けて中を見ると、コンビニとかスーパーとかの募集要項とも、デリバリーの募集要項とも違い、バイクにまたがった女性たちの写真や同じジャケットを着た女性たちの集合写真が載っている。

 募集要項の一番上に書かれていた企業名は《バイク便 モトガールズ》。

 募集条件は、《中免を持っていること》、《バイクでの通勤が可能であること》、《女性であること》、《素行不良ではないこと》、《バイクが好きなこと》と書かれている。

「これは…。」

「あなたにぴったりだと思うけど。」

 これは、また楽しそうなバイトだこと。

 いや~やっぱり一週間くらいかかっちゃいました~。

 お待たせしすぎて申し訳ない。

 そしてもう一つ謝らねばならないことがあります。

 前回のあとがきで、「水着回あるかも」と書いたんですけど、バイト探しで終わったー!

 何気自分でも水着回楽しみにしてたんですけど、浮かんできたストーリーがこれでした。

 まぁまだ夏休み中だし。

 これからだし。

 と言うわけで、次回もよろしく~。

 今回同様更新がなかなかに遅れることが予想されますので、気長にお待ちください~。

 あ、そう言えば、リアルでのお話失礼しますけど、自分もカブを中古で購入しました~。

 本当はキャブ車が欲しかったんですけど、災害とか、乗らなくなった時のことを考えてインジェクションを選択いたしました。これで涼ちゃんと同じくカブ乗りです!まぁ涼ちゃんが90㏄でも自分は50㏄です…。

 長くなってしまいましたね。それでは次巻もよろしく~。

 ではでは~。


―追記―

2020/8/4 20:51

 不具合からか、《バイク便 モトガールズ》が、《モトガールズ バイク便》になってしまっていたので、書き替えました(多分自分自身の不具合です…)。


―追記―

2020/8/10 8:30

 新章本日中に公開予定です。

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