新人 各国のちょっとした説明
本日2本目
午前はこの話で終わらせてやるぜ。
一列になり、メイサの後ろを皆でついていく。
これはいったい何の探検隊だよ。 と内心思いながらギルド内を歩いていく。
「サラは何でついてきたんだ?」
もじもじさせながら俺の耳元で
「······トイレ。さっき水飲んだから」
恥ずかしそうに言う。
「なんか、スマン」
一応、謝っておく。 すると、
「着いたわよ」
到着したようだ。 見ると手洗い場があった。
「そっちの赤いマークが女子トイレよ」
メイサが指差し、サラに対し説明した。 次に俺達に対して
「この銀色のレバーを倒すと水がでるのよ」
と実際にやって見せた。 ジャーっと水が流れる。 これは楽チンで便利だな。 井戸に行くのかと思ってたぜ。
「えっ!? これ、魔道具じゃないか!?」
ポッツが目を剥いて驚く。 良かったな、だいぶ目が覚めたんじゃないか? 狼狽えているポッツを尻目に俺とメイサは顔を洗う。
「うちの宿屋もこんな感じだよ?」
カインは何気なしに言い、ポッツは更に混乱する。 俺は魔道具に詳しくないから何も感じないが便利だ。
サラが女子トイレから戻ってきて、メイサに水の出し方を教えて貰って手を洗う。 ポッツはぶつぶつ言っていたが顔を洗った。
「んじゃ、戻ろうぜ」
と俺が言い、さっきのようにメイサを先頭にぞろぞろと部屋に戻る。
部屋に入るとラニーが先に戻って来ており
「あら? 全員が居なくなってたからビックリしていたのたけど、皆で行動してたの?」
「あぁ、さっき顔を洗ってこいって言われたから手洗い場に行ってきたんだ」
俺が答える。
「あの手洗い場、便利だけど最初見ると驚くわよね」
「良かった! 僕だけがあれ見て驚いてて、皆がリアクション薄いから僕の感覚がおかしいのかと思ったよ!!」
ラニーの発言にポッツが食いついた。
「皆それぞれ良い休憩になったみたいだし、勉強会を再開しましょうか」
ポッツだけはテンション上がってるけどな。
皆、着席する。
「じゃあ、さっき言った通り。 最近のお国事情を話していくわよ。 ポッツ君は本の虫ってことだけど主要国の正式名は知っているかしら?」
「えっと商業国家がネイルターミ連合国で、ロージュガン魔道国、バーラン帝国······あとは······」
ポッツは指折り数えながら解答していくが神聖国の正式名で躓いた。
「あっ、僕わかるよ! 確か魔王さんがアホ女神と同じ名前だって言ってたから、アホ神聖国でしょ?」
カインが実にアホっぽい発言する。 俺も名前は知らないが、それは絶対に違うと思うぞ。
「······違うわよ?」
ラニーが呆れている。 ほら、やっぱり違うじゃねぇか。 カインはあれ? と首を傾げている。
「ポッツ君は惜しかったわね。 正解はファルミリア神聖教国よ」
黒板に5つの国の名前を書いていく。
「取り敢えず最初は私達が住む、このマスフェト王国について話していくわね。 だいたい分かっていると思うけど、王国は人間界において一番面積が広いわね。 他の国に比べるとおおらかな性格をしていて、農業と畜産が盛んであると言えるわ。 魔道国に次いで魔族が多くいるわ。 王族が民の事を大切に思ってくれてるから平和な国よ」
マスフェト王国と書かれた文字を消す。
「何か質問は有るかしら?」
俺達を見回し、反応を待つ。
「無いようなので、次ね。 ロージュガン魔道国。 この国は一番魔族が多くいて、名前の通り魔法の道を極める者達が集う国となっているわ。 内情としては王家はちゃんとしてるのだけど、魔法貴族と呼ばれる方々が傲慢な性格をしているわね。 ちなみに世界中の研究者達が集い、日夜新しい取り組みをし続ける変態達の巣窟、学園都市と呼ばれる特区があるわ」
ラニーはメイサに視線を向け
「メイサちゃんは魔法使いになるのなら、一度は学園都市に行ってみると良いわよ」
「魔法使いじゃなくて、魔法少女なの!!」
ふんすと鼻息を荒く、抗議する。 どっちも魔法使いだろ? 何言ってんだこいつ。
「そういところが変態達と気が合いそうなのよ。 行ってみると面白いと思うわよ」
と言い、魔道国を黒板から消す。
「次は帝国ね。 ここは特に話すことも無いけど、一言で言うと脳筋集団ね。 獣人が多くいるわね。 帝王が治めていて、実力主義派の国よ。 実力があれば、平民でも出世しやすい。 争いが耐えない国ではあるけど、その戦力は計り知れないわ。 ちなみに今の帝王は子供が20人以上いるらしいわね」
少し気になったので質問する。
「なぁラニーさん、子供の数が正確な数字じゃないのは何でなんだ?」
「女性に対し節操がないせいで、庶子も沢山いるからよ」
うわっ、明らかにラニーから嫌悪感が溢れだしてる。
「帝国についてはここまでにしましょう」
雑に帝国を消し去った。
「じゃあ次はポッツ君の目的地でもある商業国家ね。 ネイルターミ連合国は小さい国が集まって出来た国よ。 この国には王さまではなくて首相と呼ばれる人がトップに座り、政治をしているわ。 選挙と呼ばれる方法で国民の中から選ばれるらしいわよ」
ポッツの姿勢が良くなり、真剣に聞いているようだ。
「商業国家と呼ばれるほど交易が盛んな国ね。 利益を産み出すための商品開発、研究等もすごいわね。 魔道国と一緒に開発した魔道列車でさらに交易がしやすくなるそうよ。 ポッツ君の方が知っているような気がするから、こんな所で良いかしら?」
俺達は頷き、次の説明を待つ。
「最後はファルミリア神聖教国ね。 でもその前に、さっきカイン君が女神の名前だって言ったじゃない? 実を言うと国の名前は全部、神様の名前なのよ。 各国で崇めている神様が違うから調べないと気づかない人が多いんだけどね」
へーっと皆で言うと
「雑学みたいなものだけど一応、神様ごとに役割があるから教えておくわね。 まず、豊穣の女神マスフェト。 商業の神ネイルターミ。 勉学の神ロージュガン。 闘いの武神バーラン。 そして、愛の女神であるファルミリアね」
と黒板に書き込んでいく。
「他にも鍛冶の神ヤンガール、海の女神シーラルール等いっぱいいるわね。 神様達は天界で過ごしていてね。 時々、天啓を授けに人間界へ来ることがあるのよ」
サラとカインがノートにメモしていく。 必要かなこれ?
ラニーは、ふうっと一息ついてから
「話が脱線しちゃったわね。 では、神聖国について話していくわね。 教国と呼ばれるように宗教国であるわ。 トップは教皇ね。 異世界から勇者を召還したのもこの国ね。 主要国の中でも一番面積が小さく、人族主義で他の種族に対し排他的ね。 愛の神様を崇めているのにね?」
と肩を窄める。
「まぁ、女神様が魔王さんと魔族に対して距離を置くように天啓で指示したせいで、そんなことになってしまったらしいわ」
と黒板に書いてあるものを全部消す。
消し終わるとこちらに向き直り。
「あっ、そうだわ!女神の天啓と言えば、魔王さんの復活まで後3年っていうのもあったわね」
は? ついさっきまでそこに居たじゃん。 とラニーを見つめる俺は変な顔をしていると思う。
「ぷっ。 そんな顔にもなるわよね。 実際、さっきまでそこに居られたのですしね。 神聖国からそんな声明が届いたのですが、王国を含め、どの国も実情を神々から天啓で知らされているので知らぬは神聖国のみね」
そこでゴーン、ゴーンと正午の鐘が鳴った。
「あら、ちょうど良いタイミングで鐘が鳴りましたね。 私からの話は以上となります」
頭を下げ、にこりと笑う。
「情報は糧です。 知らない場所に行ったらギルドで情報を集めて下さい。 さぁ、お昼にしましょう。 午後の講習の前に予鈴が鳴りますので聞こえたら、またここへ集合してくださいね」
と言ってラニーは部屋を出ていった。
ギルド内の魔改造は魔王と勇者の仕業。
詳しくいうと銀色のレバーについては魔道具ではない。その横に付いている赤のレバーがお湯の出る魔道具。
長いな。だがしかし、1日目はまだまだ続くのだ!