新人 自己紹介
筋肉が笑うぜ。
自己紹介な話
顔を見ると男である俺から見ても見惚れるくらいの端麗な顔立ち、瞳は金色と緑色のオッドアイ。 でも明らかに普通の魔族とは違うオーラを身につけている為、俺は思わず身構えてしまった。
ギルド長が俺達の前にある教壇まで進み、挨拶をする。
「ガハハハ!そう萎縮せんでもいいぞ。 俺の名前はガンド。 このギルドの長を務めているものだ。 見知っているものもいるが宜しく頼むな。
でだ、今回の新人講習に関してなんだが普段はギルド職員やDランクハンターが請け負っている。 そして、幸運なことに君たちは隣にいるBランクハンターである彼に指導して貰えることとなった。 では、魔王殿よ挨拶をお願いする」
ギルド長は教壇を譲り、魔族の男が進み出てくる。
ん? 今、ギルド長はなんて言った? 魔王? 物語とかで出てくるやつか? 困惑した俺を置いて男は喋り始める。
「吾が輩の名はユークリス·ボルモア·ディスタニア。 魔王である。 気軽に魔王さんとでも呼んで欲しいのじゃ」
パチパチと金髪の少年が拍手をする。 他は沈黙である。 すると魔王は何かに気づいたのか発言する。
「ふむ? やっぱりこの姿じゃ威圧感があるのかのう?」
と呟き、指をパチンと鳴らす。 その瞬間、姿が揺らめいたかと思うと角が消え、着ている服も淡い色の落ち着いたものに変わり、長髪も中程で結ばれ右肩から前の方へと流された姿に変わった。
一瞬の出来事で俺は驚いていたが、確かに先程よりは圧迫を感じていなかった。
「えぇ! 魔王さん、さっきの装備の方が格好よかったのに!」
金髪の少年が叫ぶ。
「あれで、さらっと変身できるのね」
メイサがニヤニヤしながら何やら呟く。 眼鏡は空気だ。
隣のサラも驚いているが、俺とは違う驚き方をしているのでどうしたのか小声で聞いてみた。
「······あの人、孤児院の設立者」
は? 確かに孤児院の名称はマオー院だが、魔王から来てたのかよ。 何でサラは知ってるんだよ。
「ジェシーから聞いた」
納得は出来ないが、俺は視線を魔王に戻した。
魔王は俺たちの顔を見渡しニコッと笑うと
「まぁ、よろしくなのじゃ!」
と言って教壇から下がっていった。
ラニーが教壇に上がり、午前中の流れについて発言する。
登録記入書を書いて、簡単に自己紹介して、座学をするとの事だ。 それを聞きギルド長は部屋を出ていこうとする。
「あっ、ギルド長待ってください。 出ていくなら登録記入書を持って行ってください」
とラニーに引き留められていた。
記入書に書く事は少ない、名前、生年月日、性別、種族、出身国それと自身が行方不明と死んだ場合についてだ。 つまり遺書だ。
俺は資産がある場合孤児院に寄付と書いた。
全員が書き終わるとギルド長が集め、そのまま部屋を出ていった。
静かになった部屋でラニーが拍手をしながら
「貴殿方の覚悟を見定めました。 たまに遺書を書くことでハンターになる事を諦める人もいるのよ。 みんな偉いわね」
テンションが下がっているのか、誰も反応しない。 続けてラニーはパンパンッと手を叩き
「自己紹介に移るわよー。 じゃあ眼鏡の君からお願いするわね。 名前と歳と何故ハンターになるのか言って頂戴」
今まで発言の無かった眼鏡の少年は椅子から立ち上がり、すうっと息を整えて
「僕の名前はポッツだ。 歳は13歳だよ。
僕の家は商店をやっているのだけど、店は兄が継ぐので自由な身でね。日々、魔道具に関する本を読み漁っていたら、昨日の晩に父から出不精が過ぎると言われてね。 勝手に講習の予約を取らされていたんだよ。 でも、その代わりに2週間の講習が終わったら魔道具の盛んな国に行ってもいいという許可を貰ってね。 それでハンターになりに来たんだ。 目指すところは魔道具師ってところかな? よろしく頼むよ」
爽やかにそう言うと頭を下げる。 そして頭を上げると中指で眼鏡をクイッと上げ、ポッツは着席する。
穀潰しに居られるよりか良いよなってことだろうな。
本人も目的が出来て納得してるんだし良いんだろうけど、本の虫だってことは体力無さそうだな大丈夫か?
「じゃあ次は宿屋さんの所の君ね」
とラニーに指定され、立ち上がる金髪の少年。 一度、頭をぺこりと下げ話し始める。
「初めまして、僕はカインです。 歳は12です。 昨日、僕の家がやってる宿屋に魔王さんが泊まりに来てくれたんですが、修行をお願いしたら新人講習があるとのことで参加しました。
両親が元ハンターで、店を守る程度の強さを身に付けるためハンターになります。 憧れの人は魔王さんです。 よろしくお願いします」
こいつは勤勉って感じだな。 なぜかキラキラした目で魔王を見つめているが・・・ってか元ハンターの店で暴れるような奴がいるのか? そいつら馬鹿なんじゃないかと思うぜ。
あっ、ラニーと目があった。 次は俺なのか······。 バッと立ち上がり、親指で自分のことを指差す。
「俺の名前はアランだ! 13歳だぜ。 ヨロシクな! 俺と隣にいるちっこいのは孤児院で過ごしているんだが、俺はいろんな場所を冒険したくて、強さを求めてハンターを志望したんだ。 まだ見ぬ世界ってワクワクするよな! そんで、こっちのちっこいのは俺が危なかっしいから付いてくるらしい。 ほら、サラも挨拶しろよ」
隣にいるサラに話を振ると立ち上がり
「······サラです。 13。 よろしくお願いします」
それだけ言って、すぐに座った。
「まぁこんな感じで口数が少ない奴だけど俺共々、仲良くしてくれると助かる」
と俺も着席する。 サラがほぼ喋ってないが挨拶は出来たから大丈夫だろう。
「じゃあ、最後はメイサちゃん貴女ね」
とラニーが発言を促す。
メイサは立ち、手をキュピッと挙げ
「私はメイサ。 あと2ヶ月で13歳なの。 よろしくなの!
私がハンターになる理由は魔法少女になるためなの。 魔王さんが教えてくれると聞いて参加を決意したの。 魔法少女への近道は魔王さんなのでよろしくお願いしますなの」
ワッと喋りきり魔王にペコペコ頭を下げている。 サラと違って存在自体がうるさいな。
「メイサちゃんはね、ギルド職員の娘さんなのよ。 だから魔王さんのことを知っていたのね」
ラニーの言葉にメイサはそうなの! と言いながら首を縦に振る。
「じゃあ、これで自己紹介は終わりね。
この後は勉強会になるから少し休憩にしましょうか。 そこに給水器があるから喉が乾いてたら飲んで良いわよ。 私は教材を取ってくるわね」
と言ってラニーは部屋から出ていった。 次の瞬間、横に居たメイサが魔王に話しかけにいった。
俺は水を取りに行き、サラの分も注いで元の場所に戻りコップを手渡す。
「ほら、水飲んどけよ」
「ん、ありがとう」
そこにメイサがトボトボと戻ってきた。 なんかテンション下がってるけど、どうしたんだこいつ。
「サラ、俺ちょっと男連中と話してくるからメイサと少し会話しておけよ」
「······うん」
メイサの方に顔を向け、
「なぁ悪いんだけど、良かったらサラと会話してくれないか? 女同士の方が話しやすいこともあんだろう?」
と言って席を立ち、ポッツとカインと話をするために移動をした。
魔王さんは魔王装備をやめた。
慈善活動もします。
生年月日順にすると
ポッツ>アラン>サラ>メイサ>カイン。