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えっ?吾が輩に何か?  作者: パンダ玉子
第一章 プロローグ
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宿屋2 思出話

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 あれはそうじゃのう。 お主が生まれる前の話じゃ。


 その頃はのう。 まだこの地域にも根強い魔族差別のようなものがあってのう。

 吾が輩がこの土地に来たとき、一番最初に絡んできおったのがロン毛金髪イケメンのお主の親父じゃった。


 出会った一言目がこれじゃった。


「おい! そこの魔族、悪いことは言わねえ! 殺されたくなかったら、この街から出ていきやがれ!」


 吾が輩キョトンじゃったよ。 力量も分からぬチャラチャラした若造が単身で吾が輩の前に現れたんじゃからのう。

 吾が輩どうしたものじゃろ?とか、今日のご飯なんじゃろ?とか、どうでもよいこと考えておったら、街の方から二人の人間が出てきたんじゃ。 

 また何か言われるんじゃろうかと身構えておったらの? その二人にチャラ造が全力で殴り飛ばされてのう。


 更に吾が輩、困惑してしまったわい。 話を聞くとのう。 まず自己紹介をしてくれたんじゃ。 女性がマイヤー、男性がガンドと名乗った。

 その後、この辺りは差別があることなど、チャラ造が調子に乗っておるハンスという名の青年であること、魔族でもギルドの利用ができる事などを教えてもらってな。 登録して一緒にパーティを組むようになり、ハンスとのわだかまりは無くなったのじゃ。



 そして、街で数ヶ月程過ごしたある日、突然それは起こったのじゃ。スタンピードじゃ。 街付近の魔物達が大群で押し掛けて来よった。 その時この街に住む全ハンターに緊急依頼が出されたんじゃが、そこで魔族の仕業じゃないかという意見が出てのう。 吾が輩を初め、魔族は一時的に取り押さえられたのじゃ。 吾が輩も身の潔白を証明するためギルドで大人しくしとった。

 じゃがのう。 多勢に無勢よ、劣勢を窮めた。 その時、ギルドのドアが勢いよく開けられ、ガンドが飛び込んできたんじゃ。


「ミノタウロスのキング種が現れた!! 撤退と救援を呼ぶため、ハンスが1人で残りやがった!! どうすればいい!?」


 その凶報聞いた瞬間、吾が輩は転移魔法を使い外へ出たんじゃ。

 それに連なりギルドにいた魔族たちも戦線へと向かった。 実はのう。 この時すでにハンスは結婚宣言をしておってなマイヤーも既にハンターを引退しておったんじゃ。

 そこからは吾が輩や魔族が戦い、ハンスは戦線から下げられた。 スタンピードはすぐ治まったのじゃ。 何たって吾が輩が戦線へとでたのじゃからな。 じゃがな、街へ戻るとハンスは虫の息じゃった。 側ではマイヤーが泣いておったのう。


 でじゃ。 吾が輩それを見て余裕で助けられると思ってのう。 イタズラ心に火が着いたのじゃ。


「『死んで守るなど命の冒涜じゃあ! 生きて綺麗さっぱり生き抜いてやれ!!』 吾が輩ならお主を救える! その代わりにそのチャラチャラとした髪をいただこう!」


 と宣言してのう。回復魔法をかけてやったんじゃ。

 その後、マイヤーが嬉し涙を流しながら、ありがとうと言いつつハンスの髪の毛を剃り始めたんじゃ。

 吾が輩、短髪にして欲しかっただけなんじゃがのう。 綺麗さっぱりってそういう意味じゃなかったんじゃよ。 若干引きつつも、吾が輩は怪我をした周りの者達に回復魔法をかけていったんじゃ。 するとな、助けた者達の恋人や妻もそれに倣ってしまってのう。 皆、剃るまでいかなくても坊主されてしまったんじゃ。

 狂喜極まるってコレなんじゃなぁ。 じゃがの、この事件きっかけで結婚者数も増え、魔族に対する差別も減ったんじゃ。

 終わりよければ全て良しじゃったのう。


 ちなみにハンスとわだかまりが無くなったのはマイヤーの手料理の一件じゃ。 あの時、吾が輩達は盟友となったのじゃ!!



──


「という感じじゃった!」


 倅は真面目にメモっておるのう 。吾輩の伝記でも出してくれるのかもしれんのう。 皆のトラウマであるから、出したところで売れやせんじゃろうが。どうやら書ききったようじゃな。


「だから、誰も教えてくれなかったんですね」

「そうじゃろうな」

「でも、そのお陰で今は元気に過ごせているんですもんね。 父さんを救っていただきありがとうございます」


 ぺこりと頭を下げてくる倅。


「気にするでないぞ、救えたから救ったまでじゃよ」


 倅よ、今の話聞いて目を輝かせておるのか異常な奴じゃな。 お主は何を目指しておるんじゃ?


「僕は魔王さんみたいな格好いい人に成りたいんです」


 吾輩の思考の問いに答えてきたのう。 吾輩は何か格好いいことしてるのかのう? まぁ格好いいと言われて悪い気はせんがのう。


「精進するんじゃぞ! 成りたいものを明確にイメージ出来ておれば近づくことはできるからのう(筋肉と同じじゃ!)」

「はい!! それで、もし時間があれば稽古をつけていただけないでしょうか?」

「んーどうじゃろう? 吾輩、明日から2週間ほど冒険者ギルドで新人教育をすることになってのう」

「えっ? じゃあ僕もそれに参加します!」

「えっ? そんな容易く参加できるんじゃろうか?」


 締め切りに関しては吾輩と一緒ならば特に何かを言われることもないじゃろうけど。


「とりあえず父さん達からも店に泥棒とか入るかも知れないから、ハンターになってある程度の実力を身に着けろと言われているので」

「まぁ、そういうならば明日の朝になったら、吾が輩と一緒にギルドに行くかのう」

「ん? なんの話してんだ? これがガッツリステーキセットだ!」


 店主が夕飯を運んできた。


「倅が稽古をつけて欲しいと言うのでな。 明日の朝、吾が輩と共にギルドに行こうという話じゃ。 うむ、美味そうじゃ。 いただきます」


 シチューから頂こう。 具材にしっかり味が染みていて美味しいのじゃ。


「そうなのか? カイン?」

「そうだよ。 魔王さんが新人教育係になるらしいから、それに付いていこうと思うんだ。 大丈夫だよね父さん?」

「まぁ店は従業員もいるし、気にしなくて大丈夫だぞ。 行ってこい!」


 ステーキって偶に切らずに齧り付きたくなるのじゃ。 そして噛みちぎってヒャッハーと言いたくなるのじゃ。 今はせんがのう。 ちょっと大きめに切って食べる。 うむ、美味い。


「ありがとう父さん。 では、魔王さん明日からよろしくお願いします!」

「魔王さん、息子のこと頼んだぜ!」

『うむ、任せよ!』


 食事中じゃからのう、念話で返答しておく。 店主は年々、料理の腕が上がっておる。


『倅よ、明日は吾が輩と一緒なら早めに出発するのでな。 準備をしっかりしておくのじゃ』

「はい、分かりました。 では、準備してきます」


 倅が立ち去った後、店主と他愛ない話をしながら食事を終え自室に戻る。 それにしても本当にガッツリじゃった。 少し胃が重く感じるので消化魔法かけて、就寝準備をして寝る。


 明日は新人との対面じゃな。 面白いやつが居れば良いのう。





ガンド 現ギルド長です。

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