ゲーマーズ特典SS 保育園 ファムバージョン
ファムが何やら実家近くの保育園でバイトをしているらしい。ということでファムにお願いして働きぶりを見せてもらうことになった。
あのファムが本当に子供たちを相手にできているのかという一抹の不安がある。黒いオーラを纏い、震え上がらせているんじゃないかと心配だ。
「……ゼオくんはきっと私から溢れる母性に悶える」
「そんなこと自分で言うか? つうか母性にどうして悶えないといけないんだよ」
「……その疑問はもうすぐ解決する」
真意はわからないが、ここまで自信をのぞかせるファムに少々対抗意識が燃えてくる。
「絶対悶えないから! ファムは少々俺を見誤ってるようだな」
「……ふふふっ」
怪しい笑みを湛えるファムと共に保育園に到着する。
そこそこ大きい保育園だが、本当にこんな黒いファムがいてよい場所なのだろうか! まずはそこを問いただした方がいいかもしれない!
中へ入ると少しふっくらした中年女性が出てきた。
これが園長先生らしいのだが、ファムと話している姿を見ると結構ファムを気に入っているようだ。
「あなたはファムちゃんのお友達らしいわね。この子はスゴくできた子よ。今のうちにツバをつけておくのをおすすめするわ」
この人はいったい何を言っているんだ……。
初対面の、それも一五歳の男に向かっての第一声がこれとは!
「……園長先生大丈夫。ゼオくんは巨乳に弱い」
「あらそうなの? ファムちゃんがツバをつけてるのかしら? ふふふっ」
ヤバイ! この園長先生きっとファムと同類だわ。子供ができたらこの園に入れるのはやめておいたほうがよさそうだな! この園は外から見ると普通の園のようだが、中は瘴気渦巻く魔物の巣窟だ。
慣れた様子で建物の中へ入っていくファム。俺も後をついて行くと乳児のいる部屋へと入っていく。
「もしかしてファムが面倒を見てるのって乳児なのか?」
「……そうだけど。おかしい?」
「おかしくはないけど、ある意味一番大変なんじゃないかと思ってさ」
「……悪魔の三歳児よりよっぽどマシ」
ファムに悪魔と言わしめる三歳児恐るべし! この言い方はきっと三歳児を担当してエライ目にあったんだろう。いつもより実感こもってたわ。
手慣れた動きでベビーベッドから赤ちゃんを抱っこするファム。
その目はいつもより優しく、俺が見たこともない顔をしている。
「あ……うぅ……あ」
「……喃語喋る。かわいい」
ファムの顔を見てニコニコする赤ちゃんと、それを抱っこしてゆっくりと左右に揺れるファム。少し赤ちゃんになりたい気分だ。
その赤ちゃんはというと、お腹が減ってきたのか徐々にグズりだし、ファムのおっぱいに吸い付こうと顔を押し付け始めた。
「……ごめんね、まだ出ない」
だがしかし、赤ちゃんにそんなことは関係ないらしく、豪快に顔を押し付けている。
ま、あの巨乳ならもしかしたら出るんじゃないかと俺でも思う!
「……くすぐったい」
いっこうに止める気配のない赤ちゃん。もうわざとやってんじゃないかと疑うほどだ。
それでもまったく顔色を変えず、されるがままでミルクの用意をするファム。
黒いオーラなんてどこへやら、初めて見る天使のファムがそこにいる。
今なら何をしても怒らないんじゃないだろうか?
よし! 赤ちゃんよ俺と変わるんだ! あとで俺がミルクをやろう。だからその場所を俺に譲るんだ!
「……ゼオくん、わかりやすい」
そう、ファムの言葉に俺は気付かされてしまった。
ファムの瞳には赤ちゃんに嫉妬し、見たこともない天使のファムに悶える自分が映っていたことに!
「ファムは見誤っていなかったようだ。自分で自分を殴りたい!」
ファムと赤ちゃんが俺を笑っていた。