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特約店特典SS 保育園 リーゼバージョン

 実家の近所に保育園ができたということで、本日はリーゼの体験入学に同行させてもらった。

 芝生がきちんと管理されている庭園には小さい子が元気よく走り回り、窓から建物の中を覗けばベビーベッドに寝かされた乳児までいるようで、かなり幅広く受け入れているようだ。


 そんな保育園でリーゼが担当するのは五歳時クラスらしい。


「どうしてもっと小さい子にしなかったんだ? 乳児とか可愛いだろ?」


「だって落しそうで怖いもん。それに泣かれたらイヤだし」


「で、五歳時なら大丈夫だと思ったわけか。違う意味で怖そうだけどな」


 保育園に入ると園長先生が気持ちよく出迎えてくれる。

 ベテラン感がヒシヒシと伝わってくるおばさんだ。

 園長先生は早速園庭で走り回っている子たちを集めるとリーゼを紹介し、リーゼが一日先生役を引き受けることになった。


「えーと、おはようございます。今日は一日一緒に遊ぶことになりました。リーゼです。よろしくね」


「おねえちゃんいくつ?」

「かれしいるの?」

「あのおにいちゃんだれ? すきなひと?」


 子供って怖い! 俺が聞けないことを平然と聞いてくるぞ!


「お姉ちゃんは一四歳で彼氏はいないよ。あのお兄ちゃんは知らない人」


 ほほぅ~、知らない人ときたか。なら何があっても助けてやらないからな!

 子供たちがリーゼの足に纏わりつき、抱っこ抱っこと注文をしてくる。そんな子を抱っこし遊んでいると、一番わんぱくそうな男の子の番となった。

 リーゼは他の子と同じように抱っこしてあげる。そしてその男の子が毒を吐いた。


「おねえちゃんはおんなのひと?」


「そうだよ。だからお姉ちゃんなの」


「でもママみたいにおっぱいないよ」


 そう言いながら男の子はリーゼの胸を掴みにいった。しかし、掴めるほどの胸がない!!


「!!!!!!!」


「おっぱいないのは、おとこのひとなんだよ」


 顔が引き攣るリーゼ。

 どうだ一切邪な感情の宿っていない子供からの会心の一撃は!

 俺がどう返答するか待っていると、必死に作り笑いをしながらリーゼが口を開いた。


「女の人はね、赤ちゃんを産んだらおっぱいが大きくなるんだよ。お姉ちゃんはまだだから小さいの!」


「ふーん、そうなんだ。だからママはおっきいんだね」


 リーゼの言ったことは間違いではない。間違いではないが子供が疑問に思って言った本質とはズレている。悲しいかな、リーゼの目に薄っすらと光るものが見えてしまった。

 乳児は怖いからという理由で避けたのに、その結果が五歳に泣かされるとかどうしようもねえな。


「リーゼ。自分から敗北宣言とか悲しすぎるだろ。まだこれから成長するんだから大丈夫だって」


 俺は心にも思ってないことを言って励ましてやったよ。

 さっき助けてやらないと宣言したことを思えば優しいだろう?

 俺の励ましの言葉を受けたリーゼは喜ぶどころか「キッ」と俺に鋭い涙目を向けてきた。


「本気で思ってもないくせにっ!」


「じゃあ大きくするために毎日揉んでやろうか」


「本気で大きくなると思ってないでしょ! 本気で揉みたいだけのくせにっ!」


「藁にも縋る思いで揉んでもらおうという気はないのか! 実際揉むとだな、女性ホルモンが分泌されて大きくなるんだよ。だからこれは藁程頼りなくはない、縄にも縋る程度には期待していいと思うんだよ!」


 リーゼは俺をジト目で睨むと子供たちと一緒に走り出してしまった。

 おかしいな……下心はあっても嘘は言ってないんだけど……。


 俺の力説空しく、この日一日、本当に知らない人扱いされてしまった。

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