冬/そして世界は今日も平和
マッドサイエンティストの狩賀博士の研究・開発した『ゆきうさぎA』は、歌って踊れる画期的な雪うさぎだった。博士は言ったものだ。
「ふっ、私は天才さ。私にできない事はなぁい!」
『ゆきうさぎA』はあらゆるものを冷却する怪光線を発し、半径一キロ以内のあらゆる物音をキャッチでき、瞬発力、機動力に富んだ高性能の、一種の生物(?)兵器だった。博士はこれで世界征服をもくろんだのだった。
三体造られた『ゆきうさぎA』の得意技は、超音波を組み込んだ、催眠効果を及ぼす歌入りのラインダンスだった。これで政界の要人をコントロールし、手始めに日本を支配する予定だった。博士は高笑いしつつ叫んだ。
「踊れ、踊れぇ、ゆきうさぎ! 私の為に踊るのだぁ!」
しかし博士が雪にこだわったもので、日光に照らされるとみんな溶けてしまった。
現在博士は日に照らされても溶けない雪を開発中である。いわゆる『天才』というやつは、よくわからない。
『街角のトルバドール』
竪琴が歌い
笛の音が重なった
私はそこでは 悲しみを忘れてしまったよ
とても重い荷物だったもので
落としてしまったのさ
それ あの風の窪みのある
舞い狂う雪の中にでも
首尾は上々
気分は軽々として 羽でもはえたよう
美人に囲まれて毎日楽しく暮らしたよ
けれどその内 考えた
ここのワインは甘すぎて
少しばかり 退屈だ
美人のいるのもそりゃ結構だが
騒々しい男たちの話も懐かしい
それで私は捨てた悲しみを拾い上げて
幸せなその世界におさらばしてきたのさ
そうしてまた 歌いながらの旅に出た、ねえ
聞いておくれよ みんなほんとの話だよ
さもなきゃ私は食いっぱぐれちまうよ!
「ダンス」ギャグバージョン、終わりました。最後の「街角のトルバドール」は、字数合わせです。本文だけだと四百文字ぐらいしかなかったので。でも雰囲気にはあってるかな?