九十三日目のステータス
今日は九十三日目です。
「83にちめ」と「九十三日目」は同日です。
今日は2話投稿です。
意識だけがはっきりとして何も出来ない。卵の殻に塞がれて外界に出れない雛のようだ。状況的にも似ている。
俺は今、進化の為の肉体形成中だ。
ほとんど終了しているはずなのに後少しが足りない。そんな感覚だ。ピースは足りているのに何故かピースがはまらないような、そんな不自由な感覚だ。
だからこんなクソみたいな事態になった。
分かっていたのに反応出来ない、手も足も出せない。
怒りが、渇望が、溢れ出してくる。激情に満たされた時、俺は進化をしていた。
足りなかったのは激情だったのだとか、そんな事はどうでも良い、こんな事態にならないと進化も出来ない自分への怒りが止まらない。こんな事態にしやがったクソ野郎どもが許せない。
【念力】
兄貴と呼ばれていた男の頭を潰した。真っ赤なトマトみたいに弾けて潰れた。動揺している仲間達も全員雑巾を絞るように身体を締め上げ骨を砕き、皮を引きちぎり息の根を止めた。
その後には死体の山と、倒れたアイシアと、青い顔でこちらを不安げに見つめる烈火の獅子が残った。
自分の身体を見つめる。
木が伸びて身体を編んだ、そんな木製人形みたいな存在だ。身体を動かす度に編み込まれた木が伸縮する。ぱっと見魔物だろう。実際魔族なので間違いとも言い切れない。
「アリアさん、どうかアイシアを助けてあげてください。貴方達への借りは必ず返します。」
「貴方はアイシアさんの杖なんですか？」
「えぇ、そうです。私はアイシアの杖で元人間の魔族です。私が人里に居ていいかどうかは貴方達に決めて貰っても構いません。けれど、アイシアはちゃんとした人間です。だからお願いします。助けてください。」
俺は慣れない身体で土下座をする。ちょんちょんと突かれるので頭を上げるとレオンが困った顔をしていた。
あぁ、ダメなのか……
「あの……杖さん、アリアならもうアイシアさんの治療をしていますよ？」
「へ？あ、ほんとですね……あははっ、周りが見えなくて空回りって俺は馬鹿だなぁ。」
アイシアはアリアの治療を受けて目に見えて回復していた。助かりそうで良かった。
「アイシアさんが大事なんですね。」
レオンがにこりと笑う。イケメンスマイルだ。眩しくて目が潰れてしまいそうだ。
「そりゃ大事ですよ。初めてあった人間がアイシアでずっと一緒にいる人間がアイシアなんだ。勝手に家族みたいに思っているよ。」
「なるほど、家族ですか。」
「言っておくが、ウチの娘はやらんからなとか言う資格は無いが変な事したらあいつらみたいになるから覚悟しておけよ。」
死体の山を指差して釘を刺しておく。
「ははっ、そんな事しませんって。」
嘘くさいがこの場に免じて許そう。まあ実際アイシアが良いなら良いがどうしても親ヅラが辞められない。
アイシアをレオナに背負ってもらって、俺は杖に戻ってレオンに持っていて貰う。
なし崩し的に俺は罪を逃れたようだ。討伐しようとしてくるかと思っていた。
ダンジョンを出て、俺が居るってのと山賊が既に死んでいるので山賊の心配をしなくて良いので安心して野営をした。
飯を作り始めると鼻をひくつかせてアイシアが起きてきた。烈火の獅子の面々に謝っていた。また、事の顛末を聞いて俺をレオンから返して貰った。
「ボンちゃん、また助けられちゃったね。私はやっぱりボンちゃんが居ないと駄目なんだね。」
「そんな事は無いだろう。十分よくやったよ。それに俺だってお前を守れなかった。アリアのおかげだ。俺が居たら全て大丈夫とか言える程俺は図々しくない。それに、それにだ。俺だってアイシアが居ないと駄目だ。」
「ふふっ、言ってて恥ずかしくないの？でも、ありがと。」
飯を食べて烈火の獅子と語り合って、俺の事も話して、夜は深まっていった。
彼らは良い奴らだと思う。俺がアイシアの横にいる事を認めてくれる人は随分少ないだろう。
俺は【ステータス】を確認した。
ステータス
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名前:ボンちゃん
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種族:杖、高位魔族【異邦人】
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性別:男
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年齢:16
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状態:強欲の眷属、筋肉の限界を超えし者、
名工に鍛えられし杖、憤怒の眷属
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体力:0/0
魔力:1200/1200
筋力:600
知力:10
視力:10
聴力:10
運気:10
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恩恵:【ステータス】
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技能:【不死】、【魔力供給】、
【魔力自然回復<特>】、【念力】、
【怒りの一撃】、【威力増幅<特>】、
【並行射撃<Ⅲ>】、【対魔】、
【硬化】、【念話】、
【筋力三倍】、【限界突破】、
【気絶耐性<特>】、【欲求変換】、
【疲労無効】、【形態変化】
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名前:アイシア・ボーンヘッジ
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種族:人族
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性別:女
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年齢:16
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状態:血液不足、精霊との友好
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体力:6/10
魔力:50+1200/160
筋力:6
知力:50
視力:10
聴力:50
運気:50
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恩恵:【魔法技能】、【精霊の祝福】
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技能:【火<大>】、【水<特>】、
【風<中>】、【土<小>】、
【精霊視】、【魔力消費減<大>】
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お読み頂きありがとうございました。
