二百六十九日目のステータス<2>
ギリギリ間に合った。
269日目です。
鬼は地面が己の踏み込みに耐えうるか確かめるように数度足を遊ばせると、その強靭な踏み込みでこちらへ詰めてきた。
何度も同じ手をくらうか！
俺は詰め寄る口をかわしてガラ空きの腹を殴り付けた。動きだけを説明すればその通りだった。
けれど、かわしたはずの口は空間ごと食らったのか触れてもいないのに俺の身体は削れ、殴り付けたはずの拳は衝撃ごと拳を食われていた。
鬼はにやりと笑って羽交い締めを狙ってきた。それだけはまずいと脱兎のごとくその場から逃げ出した。二度三度と地を吹き飛ばさんばかりの勢いで後ろへ飛んだ。
抱き着かれて全身を食われると俺でも死ぬはずだ。
「ははっ。」
「逃げるのか。」
「鬼ごっこは得意だ。」
「なんたって、」
「俺は鬼だからな。」
全力で逃げているというのに鬼は追いついて離れない。
「離れろ！！」
人間形態の喉を震わせ、俺は【怒りの一撃】を広範囲にぶつけた。当然鬼を倒すには足りないがそれでも鬼を吹き飛ばして皮一枚剥がれ落ちて肉まで傷つけていた。
そんな努力は無駄だとばかりに鬼は逆再生のように身体を再生させる。食われた分を全て再生させている俺が言えたことではないがふざけた回復力だ。
「それだけは」
「気を付けなきゃな。」
「それは面倒だ。」
面倒か。面倒だが問題ないとでも言いたげに聴こえる余裕が気にくわない。
格闘が力だけでしょぼいと舐められるのも気にくわない。素人だからその通りだが、鬼だって力任せなのだ。いつも負けない分野で完全に負けていると無性に張り合いたくなる。
「決めた。格闘で、力任せでお前をたおす！」
「ははっ、」
「そりゃ無理だ。」
「今までで理解しなかったか？」
「だが、まぁ」
「おもしれぇ」
鬼は構えた。俺の攻撃を待ってくれるようだ。その余裕がむかつくんだ。だが、怒りは最後まで溜めておこう。
筋力値任せに全力でただ殴るだけではダメだ。身体を人間に固定するからいけないのだ。元の身体に固執するな。身体を鞭のようにしならせ、勢いを生み、拳ではなく腕に念力を纏わせ勢いを増し、踏み込む足に体重を移動して拳に体重を乗せる。
そうして放った一撃は鬼の身体に風穴を開けるよりも先に俺の腕が消える。鬼の身体は破けて中身が溢れそうになるが回復する。
回復させるな。
俺は人間じゃねえ。
人間にこだわるな。
残像が残るような連打と表現するだろう。あれを事実として再現するのだ。
全力で打ち付ける一撃が終わる頃には新しい腕、新しく踏み込む脚の用意が終わっている。一撃ごとに身体を作り変えて、残像とは名ばかりの実体を身体に取り込みながら連打を繰り返す。
大量の四肢を持つ身体はシステマチックに鬼をやたらめったら殴り続ける。最初は一箇所だけを一度に殴りつけていた。だが、まだいけるまだ殴れると回転率を上げ、更には殴る箇所を増やしていくと一度に八本の腕が鬼の上から下まで満遍なく殴り続ける化け物になっていた。
逃げ出すことも許さず殴り続けた。
何度殴ったかは分からない。だが、目の前から鬼が粉微塵になって消えた頃、俺はようやく腕を止めた。
「……勝ったか？」
フラグを立てるとはこういうことを言うのだろう。
ぞくりと悪寒がしたかと思うと血溜まりがぶるりと震えて俺を取り込むように鬼の形を成した。
「残念。」
「惜しかったな。」
「だが」
「それじゃあ俺を殺せない。」
口々に鬼の身体についた継ぎ接ぎの口がしゃべる。身体を抑え込まれて逃げ出せない。【分離】しようにも端から魔力を吸われていく。
いや、逃げるな。ここがチャンスだ。今が勝負どころだ。危機感も逃げ出したい気持ちも全部怒りに変えて塵すら残さず消す。
【欲求変換】【怒りの一撃】
俺は全身を覆う鬼に対して全身から【怒りの一撃】を放った。鬼は吹き飛んだ。
「もういい加減にくたばれ。」
だが、鬼は僅かに残ったカケラから復活しようとしていた。もう一度【怒りの一撃】を撃つには怒りを貯め直さなくてはいけない。今撃てる一撃では消すことはできないだろう。
【聖剣解放】
その宣言と共に光の奔流が鬼をのみ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、すごい音がして戦ってるのが分かったから来てみたら僕はいらなかったかな？」
「いや、すごく助かった。ありがとう。」
俺はレオンに礼を言うと倒れ伏した。
俺はステータスを確認した。
ステータス
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名前:ボンちゃん
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種族:神聖杖、上位一等魔神【異邦人】
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性別:男
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年齢:16
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状態:強欲の眷属、筋肉魔神、
鍛冶神に鍛えられし杖、憤怒の眷属、
ダンジョンの核
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体力:0/0
魔力:-10000/100000
筋力:100,000
知力:6000
視力:10
聴力:10
運気:10
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恩恵:【ステータス】、【精霊の祝福】
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技能:【不死】、【魔力供給】、
【魔力自然回復<極>】、【念力】、
【怒りの一撃】、【威力増幅<極>】、
【並行射撃<Ⅴ>】、【対魔】、
【硬化】、【念話】、
【筋肉魔神】、【限界突破】、
【気絶耐性<特>】、【欲求変換】、
【疲労無効】、【形態変化】、
【魔力二倍】、【技能貯蔵】、
【調和】、【念力の衣】、
【神聖樹の癒し】、【憤怒解放】、
【強欲解放】、【分離】、
【連鎖解放】、【世界干渉】
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お読み頂きありがとうございました。
アイシアとの接続が切れたのでアイシアのステータスは無いです。
