126にちめ
今日は136日目です。(アイシアの時間では126にちめです。)
グルルという、低いうなり声で目が覚めた。どうやら眠ってしまっていたみたいだ。
2m程の大きさの狼が5匹ほどの群れをなしてこちらの様子を伺っていた。一番近い狼との位置は飛びかかられたら噛み付かれる程度の位置である。そんな近くまで魔物に気づかなかったとは、今までボンちゃんに頼り過ぎだったのだろう。
ボンちゃんを持つと【魔力供給】の感覚がした。けれど、今のボンちゃんから魔力を借りてボンちゃんが大丈夫なのか不安で私は自分の魔力で魔法を放った。
【威力増幅】の感覚はしなかった。ボンちゃんを通さなかったからだろう。いつもなら倒せていたはずが、狼は吹き飛んで弱るだけでまだ生きていた。
結局、リーダー格の狼以外は1撃で倒せた。それでも、いつもとの違いをひしひしと感じてしまう。
「こんなにボンちゃんに依存してたんだ。」
つい独り言を言ってしまう。相槌は返ってこない。
パンッ、と一度頬を強く叩いた。弱気になりそうな気持ちを切り替えて街を目指した。
二、三度魔物と遭遇したが、そのどれもを無傷で勝利した。そして、ようやく街に辿り着いた。
既に日が落ち始めていたが、私は工房を目指した。一日も早くボンちゃんを看て欲しかった。
駆け足で工房を目指した。工房に明かりが灯っているのを見つけた時、駆け足は更に速くなった。
「ガルムさん!!!」
「あれ?アイシアじゃない!」
工房に駆け込んだ時、私を出迎えたのはユリアたちだった。ユリアとイザベラさん、そしてエマさんが居た。
「ユ、ユリアちゃん?」
「そうよ、愛しのユリアちゃんよ?」
「お嬢様、冗談は程々にして要件を伺いませんか?」
「じょ、冗談じゃないわよ……でも、そうね。そんなに焦ってどうしたの?」
「ボ、ボンちゃんが……」
私は眼から涙を溢れさせて泣き出してしまった。ユリアがあわあわと慌て、イザベラさんが優しく背中を撫でてくれた。
そうこうしているとガルムさんが工房の奥から出てきて、四人にボンちゃんの事を話した。余裕がなかったがユリアたちは少し驚いていたように思う。
ガルムさんは、ユリアに依頼の延滞を願い出てユリアはそれを快諾した。その後、ガルムさんは一晩ボンちゃんを預かるといって工房の奥へ帰っていった。
私は疲れからか、地面にへたり込んでしまった。ユリアに同じ宿に誘われた私はイザベラに肩を貸してもらって宿で休むことにした。
到着した宿は長年この街に住んでいたのに泊まった事のなかった高級宿だった。しかも、ユリアの貸切のようだ。遠慮するべきだったのだろうが、不安で仕方なくて誰かと一緒に居たかったので私はユリアの誘いに甘えることにした。
湯浴みを軽く済ました後、私はすぐに寝室へと向かった。柔らかなベッドが優しく私を包み込んで、私はすぐに眠りに落ちるのだった。
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