125にちめ
今日は135日目です。(アイシアの時間では125日目です)
評価ありがとうございます。
昨日、ボンちゃんが壊れてしまった。
原因は私にある。ボンちゃんの様子がおかしく思えた私がボンちゃんの偽物に問い詰めたせいで、ボンちゃんが無理をしてしまったのだと思う。
全部、後先考えずに行動した私のせいだ。
「ボンちゃん、ごめんね。」
【あぁ、そうだな。】
「ごめん、本当にごめん。」
【あぁ、そうだな。】
赤い光が部屋全体を照らしてから、ボンちゃんはこれしか言わなくなってしまった。何を言っても、ただ肯定の言葉を繰り返すだけで、ボンちゃんが今本当に目の前にいるのかも不安になってしまう。
ボンちゃんを助けたい、そう思うけれどどうしたら良いのか全くわからない。ボンちゃんに助けられて築き上げた城は崩れ去って、ただの街娘に戻ってしまったみたいだ。
これが一過性のものか永遠にこのままなのかも分からない。だからこそ、今は治す方法を探すしかない。探しているうちに元に戻って無駄になったって問題ない。それが良い、その方が良いのだ。
私は烈火の獅子の住む高級宿を訪ねていた。入り口で止められるかと思っていたが、前回も来たことがあったことや、レオンから言われていたこと、英雄として祭り上げられていたおかげでそこそこ顔が売れていたことが大きかった。
中に入って私はアリア様に会っていた。
「アリア様、突然すみません。」
「そんなかしこまらないでください、アイシアさんならいつでも歓迎ですよ。それで今日はどうしたんですか?」
私は事情を説明した。私の話を聞いて、アリア様は難しい顔で黙り込み、考え込んだ。ボンちゃんを手に取って触ったり魔力を通したり、色々な方法で調べていた。
何か解決策に心当たりがあるのだろうか。
「アイシアさん、記憶を無くしているかは分かりますか?」
「すいません、会話が出来ないので分かりません。」
「そう、ですか。私の方で杖を、ボンちゃんの様子を調べさせて貰ったのですが、どうにも魂に深く傷が付いているようです。しかも、何故かその状態から回復する様子が見られません。この状態で固定されてしまっているようです。もし回復の余地があれば教皇様であれば回復が可能でしたが、これは教皇様にも難しいと思います。」
アイシアは力なく頷いた。不甲斐なくて申し訳ないと謝ってくるアリアに、そんなことはないと、貴方にダメなら協会の力ではダメなのだろうとアイシアは返した。
一時間後、アイシアは王都を離れていた。かっての拠点としていた街へ戻る道中だ。仲間に会いに行く為ではない。ガルムさんの工房を訪ねる為だ。
あの人であればもしかして、そんな希望を抱いてアイシアは街を目指した。
すっかり日も暮れて、これ以上進むのが危なくなってきた為、アイシアは諦めて広い野原で野宿の用意をした。夕食は持ち運びだけを重視して干し肉と硬いパンだ。一人で食べる食事はとても味気なかった。それに、いつもならすぐ眠れる夜も、ボンちゃんと意思疎通が出来ないだけで不安で眠れなかった。
焚き火と共に見張りをして、夜が更けていった。
お読み頂きありがとうございました。