百三十四日目のステータス
今日は134日目です。
評価ありがとうございます。
今日の天候は晴天。
敵が怠惰の眷属だなんて最悪な気分だ。あの気怠げな状態は潜伏期間だったわけだ。
こいつに対しての心当たりなんて1つしかない。こいつは俺に寄生する前は魔物の王に寄生していたのだろう。それで魔物に指示を出していたのだろう。
【怒りの一撃】ぐらいしか攻撃手段がないが、それで攻撃してこいつの精神体を倒せるのだろうか。倒せたとして俺は元に戻れるのだろうか。
そんな不安が心に過ぎった。不安に駆られてアイシアを見るとアイシアは元気になった杖を心配そうに見ていた。
「ボンちゃん、まだ調子悪い?」
【そんな事はない。快調だ。】
「ほんとに?無理しなくて良いんだよ。」
【いつもと何が違うというんだ?いつも通りだろう。】
アイシアは杖の事をなぜか疑っているようだ。俺から見たらこの杖はいつも通りの杖なのだが、アイシアからは違って見えるのだろうか。
些細な違いに違和感を感じてくれたのは嬉しい限りだ。
いや、だがちょっと待てよ。
アイシアが杖に気付いて、杖がアイシアを危険視してしまったら、簡単に殺されてしまうんじゃないだろうか。
その考えに至った俺は現状の危うさを思い知らされた。そもそも今アイシアが無事なことさえ杖の気まぐれかもしれない。
それなら今すぐこいつを倒さなければいけない、俺のせいでアイシアを殺すわけにはいかない。
けれど、【怒りの一撃】を使うための原動力となる怒りがたりない。こいつに乗っ取られた事への怒りが薄い。アイシアが害されたら怒りも湧いてくるだろうが、それじゃ遅いのだ。
やられる前にやらなきゃいけない事は確かだが、それと怒りがどうにも結びつかない。
「……ねぇ、ボンちゃん?」
【……ああ、俺か。なんだ?】
「私の名前は覚えている?」
【……】
悩んでいるうちにアイシアがとんでもない爆弾を投げ込んでしまった。恐らく知らないのだろう、そしてアイシアはこの質問で杖が俺じゃないと気付いてしまうはずだ。
ああ、もう何振り構ってられない。
(【欲求変換】!!俺に怒りを寄越せ!!何でもいい、全部持ってけ!!だから俺に怒りを寄越せ!!)
言い終わるのが早かったか、【欲求変換】は俺から感情という感情を奪って怒りへと変換していく。
理性すらも怒りへと変換されていき、杖への怒りで視界が真っ赤に染まる。
憎い、こいつだけは許してはいけない、心が怒りに支配される。何もかもが許せない。こいつも俺自身も、そしてアイシアさえも、何もかもが憎い。
……アイシア。
唯一最後に残った感情が怒りの矛先を決めた。俺は【怒りの一撃】を杖に向けて放った。
杖から何かが消えていった。怒りを全て消費して、俺は何もわからなくなった。アイシアが涙を流しながらこちらを向いた。それがどういう感情か、俺にはもうわからない。
俺は、何かをしようとした。だが、何故それをするのか分からなくて辞めてしまった。
お読み頂きありがとうございました。
なんでこうなった……