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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
2章 新入生歓迎オリエンテーション
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4-3-3 逆風

門番。


『かーっ……。俺の負けかよ。ここまで生前のスペックに戻して、そんで負けるなんて初めてじゃねえの?』


「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」


 地面の上で大の字で倒れている外道丸。口調こそは余裕があるが、身体はボロボロ。それはそうだろう。玄武に肉弾戦を挑み、その間あいだでマユから強烈な陰陽術を五発は受けた。これでまだ身体が残っている外道丸がおかしかった。

 一方のマユは息絶え絶えだ。霊気をかなり使ったこともそうだが、これほどまでに死を肌で感じる戦いは初めてだった。今までも修羅場はいくつか超えてきていたが、死闘と呼べるのは今回が初めてだった。

 玄武から外道丸がもう起き上がってこないと聞いていたために膝に手を乗せながら休憩していた。マユの方は目立った外傷はない。玄武が全部攻撃らしい攻撃を防いでくれたからだ。


『強くなったねえ、外道丸。でも、やっぱり、二対一は卑怯だった……?』


『んなこったあねえよ、玄武。数の差ってのは圧倒的な実力があればひっくり返せる。同じ二対二だったらオレが勝っただろうが、相性もあるからな。今回は負けを受け入れてやる』


『……もう、マユは君と戦わないと、思うよ?』


『今後も玄武を続けてたらいつかは戦うだろうよ。そん時は勝ってやる。できればもっとAから霊気をせしめねえとな。あいつは他にも色々雑多なことに霊気を使いすぎなんだよ。もっとこっちに寄越しやがれ』


 戦闘が終わっているからか、小さくなった玄武と外道丸が呑気に会話していた。まだ騒動は収まっていないのでマユはこれからもやることがあるが、その前の一休みだ。

 その間なら玄武が何をしていても何も言うつもりはなかった。


『マユ。お前当分京都にいるのか?暇見付けて襲いに行っていい?』


「ダメです!何故わたしの所に来ようとするのですか⁉」


『お前気に入った。呪術省に置いておくのもったいねーわ。今日は負けたけど、今度は攫いに行くわ。瑞穂に頼めば気配ぐらい消せるだろ』


「……あの瑞穂さんは、本当に瑞穂さんなのですか?」


 マユも映像を見ただけで直接見たわけではない。それと、瑞穂という人物についても過去のデータにあったから知っているだけで本人と面識は一切ない。

 大峰翔子のことは知っていても、瑞穂のことはあまり知らないのが現状だ。


『呪術省があいつのことをどこまで正確に知ってるのかまでは把握してないからこちらからの見解になるわけだが。あいつは本物だぞ?』


「……死後に、あの天海って人が式神にしたのですか?」


『そうだ。優秀な駒だろう?人間にしては』


 死後、式神になる存在は一定数いる。だからこそ降霊術と式神という技術は成り立っている。だが、それでも人間で式神になったという前例はほぼないに等しい。それほど、まず降霊術で人間を呼び出すことが難しいからだ。

 そして、降霊されることも式神になることにも、本人の意思が必要だ。本人が拒絶すればどんな凄腕の陰陽師でも降霊することはできない。


「呪術省は、何を隠しているのですか?立て続けに離反者を出して……」


『おっと。それには首を突っ込まない方が良い。お前、殺されるぞ?』


「呪術省に、ですか?」


『そうだ。お前は麒麟のように個人としての情報を抹消したわけじゃねえだろ?Aのように全国指名手配されるな。殺されなかったとしても』


「むしろ麒麟の方々は個人情報がなかったからこそ、ただ追放されただけ……?」


『追放だけで済めばよかったがな。もっとも?十二のガキを見殺しにした組織がまともだと思ってんのか?』


 マユも瑞穂が十二の時に亡くなっているのを知っている。当時からしても十二歳を争いの場に出すことは異常だ。それがたとえ、誰よりも強かった瑞穂だとしても。


「……呪術省は、何故破綻しないのでしょう?」


『大きな闇を偽善っていう大きな光で隠しちまってるからさ。今頃ズブズブの闇が巣食ってるぜ。あのハリボテの塔にはよ』


「それでも……あの人は止めます。学生を襲うのは間違っていますから」


『おう、いけいけ』


「ゲンちゃん、いくよ」


 玄武を抱えてマユは校門から敷地内へ入っていく。それに続いて他の陰陽師たちも突入しようとしたが、霊気を再び与えられて回復していた外道丸がそれを許さなかった。


『ここを通れるのはオレに勝った奴だけだ。そこら辺の影でビビりながら見てただけの腰抜けを通すわけにはいかねえよなあ?門番って、そういうもんだろ?』


「う……うわあああああああああああああッ‼」


 雄たけびを上げながらも勇敢に立ち向かうプロたち。だが、それは勇敢ではなく無謀の間違いだった。

 外道丸はまさに一騎当千。彼からすれば、四神に劣る陰陽師などまさしく千人いなければ相手にならない。


「ゲンちゃん、さっきから感じる大きな霊気は何……?霊気とはちょっと違うけど、大きくて、どこまでも広がっていきそうな強い力……」


『これが神気だよ。この神気が満ちれば、魑魅魍魎も妖も神様もぼくたちも活性化するねえ……。これがAの狙い、だったんだ』


「これが、神気……?」


 霊気よりも澄んだ力。今までは漠然と捉えていたマユだったが、今回ははっきりと感じていた。この力が京都を包んでいるのだが、違和感を覚えるわけでもなく、むしろ温かみすら感じていた。

 不快ではない。だからこそ、不思議に思う。こんな力が日本を覆うように広がっていくのは今じゃないといけなかったのか。どうしてこのタイミングだったのか。


 それを考えながらも敷地内を進んでいくと、大きな霊気がこちらに向かってくるのを感知した。玄武を降ろしてすぐに大きくする。上空からやってきた式神が足で玄武に襲いかかろうとしたが、堅い身体がその足を弾いた。

 弾いた対象を見る。それは独自の翼で浮かんでいる岩の形をしている日本の竜。先ほど見た青竜と比べても遜色ないほどの竜。今だからこそマユは気付いたが、その竜は神気を纏っていた。


「黄龍……?」


『だねえ。あの瑞穂って子が呼び出した式神だよ。ぼくたちの、邪魔に来たんだねえ……』


「倒さないと先に進めないってことですか……」


 大分霊気を消費していたが、それでも事態解決のために目の前の竜と対峙する。相手に主が近くに居なくて、こちらも霊気が万全ではない。

 だからこそ、五分五分の状態。その中でも早期に倒さなくてはならない。

 ここはまだ道半ば。終着点ではないのだから。




次も二日後に投稿してみます。

感想などお待ちしております。

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