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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
2章 新入生歓迎オリエンテーション
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3-2-3 陰陽師大家・賀茂の実力

中休み。


 中休みになった途端、祐介がやってくる。近くに座っていた天海も深い息を吐いていた。


「どうなるかと思ったよ……。瑠姫さんってもしかして危ない式神?」


「そんなことあるか。戦闘能力じゃぶっちぎりのドベ。まあ、プロの陰陽師なら瞬殺できるだろうけど」


「うん、実力はわかった。難波家の式神はおかしい」


 一応式神を重視してる家だからな。式神なんてろくに研究してない奴らに比べればそりゃあ雲泥の差があるさ。あとで瑠姫にはお仕置きしておかないと。


「明。ゴン先生出して良かったわけ?」


「俺に言うな。ゴンが自分で嫌がらせをしに行ったんだ」


 俺だって見せるつもりはなかった。次の行事で姿を見せて、活躍させれば心象も良くなるかと計画してたのに。


「明様、本当に申し訳ありません……」


「いや、タマのせいじゃないだろ。瑠姫」


『わかってますよーだ。坊ちゃん』


 床に正座して瑠姫が姿を現す。わかっているようでよろしい。

 俺は思いっ切り、瑠姫の頭に拳骨を落とす。……石頭め。殴ったこっちが痛い。


『~~~~~ッ!頭殴られたのニャんていつぶりかニャ……』


「マジで俺とタマの心象悪くなるから勝手な行動するな。怒ってくれたのは嬉しいけど、それと暴走することは別だ」


『だって我慢できニャかったし。あのガキ八つ裂きにしていい?』


「もう一発いっとくか?」


『冗談ニャ!坊ちゃんたちに危害を加えない限りこっちからは手を出さニャいニャ!』


「それって危害を加えられたら、やり返すってことですよね?」


『当たり前ニャ。正当防衛だし、坊ちゃんたちが傷付けられたら、地獄の沙汰を見せるまできっと腹の虫が収まらニャいよん』


 サラッとこういうことを言うからしっかりと手綱を握っておかないとと思う。瑠姫と銀郎は俺たちの護衛としてついてきてるから、その思考は間違っちゃいないんだけど。できるなら事前に防いでほしい。

 そんな一触即発な状況を作り上げた元凶はすでに教室から出ていていなかった。というか、あいつが教室でご飯食べてるのを見たことないな。

 今は殊更空気が悪いから、堂々と居座られても困るけど。


「祐介、ご飯買いに行かなくていいのか?」


「心配して来てやった俺に対する言葉がそれかよ……。まあ、大丈夫そうだし買いに行ってくるわ」


 その心意気は嬉しいが、夕飯食いっぱぐれるのは良くないだろ。祐介を待つでもなく、俺たちは弁当をカバンから出す。俺とミクの弁当は瑠姫が作ったもの。天海は自分で節約のために作っているのだとか。これはもう習慣になっていた。

 食べ始めてクラスメイトから視線を浴びていることに気付いたが、さっきのことで注目されるのは仕方がない。あんなことがあれば注目したくなるのが人間の心情だろう。


 うん、今日も美味しい。ハンバーグとか柔らかくて食べやすい。料理作ってる分には全く問題ないんだけどな。

 祐介も途中から購買で買ってきたパンをさっさと食べていた。全員が食べ終わって雑談をしていると、男子2人組が近付いてきた。残念ながら名前は憶えていない。


「難波。その、狐の式神見せてくれないか?」


「え?何で?」


 意味が分からなかった。ゴンが見たいだなんてずいぶんと酔狂な考えの持ち主だと思った。ゴンを見てみると、悪意はなさそうだが。


「狐とか、まともに見たことないんだよ。それに俺の家も難波家と同じで式神に注力してる家だし、八神先生の資料読んだら狐ってすごい優秀な生き物だって思ったしさ……」


「あー、摂津くんずるい!私も見たい!」


 何故か集まるクラスメイト。こんなに俺の周りに人が集まったのは人生初じゃないだろうか。迎秋会で分家の人間が集まるけど、あれは俺の周りに、というより本家の人間に、だからな。

 今回も正確にはゴンの周りに、だけど。


「ゴン」


『やれやれ……』


 俺の机の上に現れるゴン。それを見て特に女子生徒から黄色い歓声が上がった。


「キャー!お目目くりくりしててカワイイー!」


「尻尾が三本もある!天狐ってホントなんだ!」


「天狐に二又の猫に、人型をした狼の式神……?下手したら四神に匹敵するんじゃないか?」


 最後の摂津の言葉には断固否定する。瑠姫はミクの余りある霊気でかなり強化されているらしいが、今の俺ではゴンと銀郎二人分を賄っているためにそこまでの実力を引き出せない。

 四神の戦いは動画でしか見たことがないが、ゴン単体ならきっと匹敵できる。ただそれは、俺と契約していなかったら、だ。式神は契約者の霊気に左右される。俺では父さん並みのスペックを引き出せない。


 たとえ位が同格でも、術比べなどで勝ち負けが着くのはそういった陰陽師本人の実力から。ゴンと銀郎の二体使役は手数が増えるのでこれはこれでアリなのだが、お互いのスペックが若干下がってしまうのが問題だ。

 そう考えるとAさんって本当に規格外だよな。鬼二匹に姫さんの補助までしてる。幼い時の記憶から鬼もかなりの格だったはずなんだが。それで姫さんという大峰さんを超える陰陽師の補助まで。Aさんが補助しているからあの実力なのか。いや、さすがに何かしらの理由がないと式神にもしないと思うけど。


 ゴンは大人気になっていて、特に女子生徒が抱えたりしている。そこにミクも加わってゴンの喜ぶことを教える始末。嫌そうなゴンだけど、悪意はないからかされるがままになっている。悪意さえなければ、人間と関わるのも嫌いではないのだろう。分家の人間に崇められているのは嫌そうじゃないし。


「明。術比べどっち出すわけ?たぶん一対一だろ?」


「本当にそうなら銀郎出すよ。ゴンはあれだ。出したら卑怯だって分家の人間に怒られた。そいつも六歳児に大鬼仕向けたくせに」


「……本家付きの式神は卑怯じゃないのか?」


「本家の人間だからな。それにゴンと銀郎だったら銀郎の方が格としては下だからな?」


「そりゃあ、先生は別格だからな」


 賀茂との争いは別に何とも思っていない。銀郎なら自分を抑えて戦ってくれるだろう。式神相手に何もかもぶつけそうだが。

 中休みの終わりに教室へ戻ってきた賀茂は、クラスの中心になっていたゴンを見て目をギョッとさせていた。この光景が異常なのは俺でもわかるが、向こうの内心は穏やかじゃないだろう。


 恨んでいる対象がクラスメイトには可愛がられているんだから。呪術省の宣伝も意味がないというか、都築会長の言う通り一般人はそこまで狐に偏見を抱いていないというか。むしろ物珍しさから注目されている。

 あれだな。中国から贈られてきたパンダみたいだ。



次も三日後に投稿します。

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