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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
2章 新入生歓迎オリエンテーション
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3-1-3 陰陽師大家・賀茂の実力

確認。


「初めまして、天狐殿。生徒会長の都築と申します。この学校では貴方様に迷惑をおかけしないように精進していきます」


『おう。都築、ねえ。そっちの小娘が麒麟か。麒麟。この街にいる他の四神は誰と誰だ?』


「青竜と玄武だよ、天狐さん。小娘かあ……。あ、麒麟とは呼ばないでよね?秘密なんだから」


『……フン。なら小娘だな。で?他の四神はどこに配置している?』


「えーっと、朱雀が北海道で白虎が東京だったはず。それが何か?」


『いや?バラバラだと思ってな』


 ゴン拗ねてるな。大峰さんの態度?それとも質問の答えか?意味のないことをゴンがわざわざ聞くとは思えない。京都を支える方陣についての質問だったんだろうか。


「都築会長、大峰さん。俺が星見ってことは秘密にしてください」


「もちろんだとも。自分が持っている能力を全て公表する意味はない。さすがに悪霊憑きや強力な式神についてはもしもを防ぐために明かしてもらわなければならないけど。星見は危険な能力ではないからね」


「そう言っていただけると助かります」


「これは生徒会としての義務だよ。ちなみに二人とも、式神を常時傍に置いて実体化させているのかい?」


 この質問に俺たちは頷く。俺もミクもそれぞれゴンと瑠姫を実体化というか霊線を繋げて霊気を送り続けている。ゴンは仕方がないが、瑠姫や銀郎は実体化させる時にだけ霊気を送れば霊気の節約になる。

 難波の家訓はゴンの方で補っているので銀郎は基本的には休ませている。


「なら、今度のイベントは隠形をさせなくていい。新入生のためにちょっとした陰陽術を用いた催しだから、陰陽術は積極的に使ってさっさと切り上げた方が良い。イベントの一環として攻撃性の術式を用いられる可能性がある。学校の中に犯人の一派がいるかも知れないからね」


「会長さん、この学校にスパイが紛れ込んでいるのかもしれないってことですか?」


「そうだね、珠希さん。入った時は一般生徒だったけど、事情があってスパイとか一派になったとか理由や可能性はいくらでも考えられる。用心に越したことはないからね」


 優秀な学校だからといってそこから犯罪者が出ないとは限らない。学校がどうだというよりは結局、その人がどういう人間だかということの方が警戒すべきだ。プロの陰陽師だろうが医者だろうが教師だろうが、犯罪者は現れる。

 肩書きで判断してはダメだということを都築会長は言いたいのだろう。それにおそらく事件は起こるから用心も正しい。


「そういう例が過去にあったんですか?」


「というよりは、ウチの卒業生が犯罪者になった。それも少なくない。陰陽術とは結局才能も関わる異能で、むしろウチの卒業生は優秀であるが故に驕り、堕落する。強力な力ほど、魅惑がある。お金や権力と一緒で、持ちすぎると邪なことに使いたがるのさ」


「学校の方で不測の事態が起こったらどうやって動くんですか?」


「まずは現場判断。校外授業にしろイベントにしろ警邏の先生たちが一定間隔で配置されてるから、その先生たちが教師やイベントの際に要請するプロの陰陽師との間で構築した陰陽術と電話連絡網の両方で事態の説明。そこから僕たち生徒会に連絡が来てどう動くか確認してから生徒へ避難勧告をする。現場に近い生徒はその場ですぐに避難させるだろうけど」


 マニュアルがきちんとあるようなら安心だ。急な事態に混乱するということもないだろう。するとしたらまだプロでもない生徒たちか。暴走しなければたぶん問題ないはず。


「だいたいこんなところだけど、他に何かあるかな?」


「……聞くかどうか悩んだんですけど、聞きます。土御門と賀茂にも同じようなことを説明するんですか?」


「するよ。特に土御門君は新入生総代だからね。入学時点ではトップの成績だし実力者なのは間違いない。ここだけの話、賀茂さんは新入生で二席だ。難波君が三席だね。そんな実力者二人をないがしろにするわけにはいかないよ。実家とか態度とか気になることはあってもね」


 入試結果を生徒会長が知っているというのはどうなんだろうか。個人情報保護的な観点で。しかしあの二人が俺たちの学年のトップ2なのか。


「あ、でも安心してね。あの二人にはボクが麒麟だって教えないことになってるから。親が秘密にしろってうるさくてさー。過保護だよね」


「ああ。何があっても自分たちで解決したと思ってほしいと。温室育ちばかりだから呪術省は歪み切っているのでは?不祥事を揉み消そうとするなんて似た者親子じゃないですか」


「たしかにそうだね。そういう家系なんだよ。どうにかして呪術省という組織を守りたい。そのためにエリート教育という名の過保護な条件下で育てる。その馴れの果てがあのビルなのさ。省庁のはずなのに辺りで一番の大きさの建物とか権力の象徴にしか見られないよね」


 呪術省は他の省庁と違って唯一京都にあるが、京都で一番大きな建物は何かと問われれば全員が呪術省と答える。三十階を超えるビルに、地下もある始末。そんなに大きなビルにする必要があるのかと疑問に思う人も多い。

 呪術省側からしたら研究所のような、実験施設も兼ねているためにそれだけの大きくて広いものが必要なのだとか。


「あとは大丈夫そうかな?」


「そうですね。ありがとうございました」


「いやいや、こちらこそ。大峰さんの話によると図書館で勉強中だったみたいじゃないか。貴重な時間を費やして悪かったね」


「いえ。時間のかかる調べ物なので大丈夫です。それじゃあ失礼しますね」


「お邪魔しました」


 一礼してから生徒会室から退散する。やることはわかったので、その事態に備えることをしないと。俺たちは実戦経験があるから良いけど、土御門とかは大丈夫なんだろうか。温室育ちってことは魑魅魍魎ともまともに戦ったことがなさそうだが。


「ゴン。四神のこと聞いたのは何でだ?マユさんのことは知ってただろ?」


『本当に五人を揃えずに地方に分配してるのかと思ってな。予想通りで呆れただけだ』


 生徒会室から出るのと同時に隠形をしたゴン。周りに人影がなかったので堂々と話していた。式神と話している生徒もいるのでそこまで変な光景じゃない。


「四神と麒麟はなるべく京都にいた方が良いんですか?」


『ああ。お前らもエイと姫から聞いただろ。五神っていうのは京都を守るための方陣を構成する要だ。その内半数は別の場所にいるだと?んなもん方陣の効力が落ちるに決まってるだろうが。しかも効力をまともに発揮してるのは玄武だけ。昼夜関係なく魑魅魍魎が現れて、強力な個体が現れるのも道理だろうよ。ここは霊地としては日本の中でも最大、人口も最大、それで方陣は不完全。魑魅魍魎が湧くのは呪術省の自業自得だ』


 本来は方陣の要としての役割を帯びていた式神が、安倍晴明の改造によって副次的な効果だったはずの戦闘能力こそを重要視される。時代の流れのせいなのか、呪術省の事実確認を怠ったミスなのか。

 どちらでもいいが、自分で自分たちの首を絞めているのはまだいいとして、他の人に迷惑をかけるのはどうなのか。温室育ちの観葉植物の方が人のためになっているっていうのはどうなんだか。癒しにもなれない温室の害虫か何かか。


「安倍晴明がいた時の方陣と比べてどれくらい効力は落ちてるんだ?」


『その頃は最盛期だぞ?あの時に比べたら今の方陣なんざ三割未満だ。いくら玄武の小娘のように適合者じゃなかったとしても、一応の実力者が方陣の維持にのみ注力していたんだ。方陣の維持なんて考えず、散り散りに式神の影法師を連れ出してたら方陣なんて歪むに決まってるだろうが。本体がこの土地に残っていて、あとはさっきの大峰っていう小娘じゃない、前の麒麟が頑張ってるんだろうよ』


「前の麒麟の方ですか?でもその方、もう引退されたか、とにかくもう麒麟ではないんですよね?」


『玄武が言ってただろうが。キー君が力を貸してるって。麒麟は未だに前の契約者に本体が力を貸している』


 やっぱりキー君っていうのは麒麟のことだったか。頭文字的に麒麟しかいないし、大峰さんにゴンは反応しなかった。つまり大峰さんより前の麒麟が式神の麒麟と未だに繋がっているということ。


「もしかして前の麒麟は今も方陣の維持をしてくれてるのか?」


『可能性はある。先々代なら知ってるが、先代がどうして麒麟を辞めたのかまでは知らん。だが曲がりなりにも方陣が機能してるのは玄武と前の麒麟のおかげだろうよ。あとはエイのおかげか』


「Aさんも力を貸してくださっているのですか?」


『いや、というよりは……。まあいいか。あいつはろくでなしだし、犯罪も犯しているがあいつがいなくなったら京都という街はなくなっていた可能性もある。あいつの方がよほど京都の守護者らしい。そんなあいつだからこそ、呪術省を潰す権利があるのかもな』


 犯罪を犯しながらも、京都を守る。それこそ陰陽を司っている、真の陰陽師と呼べるのかもしれない。いや、犯罪を犯そうとは思わないけど。


「……やっぱりあの二人が来るとしたらオリエンテーションか?」


『二人で済むと良いな』


「冗談でもやめてくれ……」


 始業には少し早かったが、図書館に行くのは時間がかかるために教室へ行くことにした。たまには授業の準備をしたっていいだろう。



次も三日後に投稿します。

感想などお待ちしております。

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