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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
2章 新入生歓迎オリエンテーション
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3-1-2 陰陽師大家・賀茂の実力

生徒会長との邂逅。


 連れて来られた場所は一般教室の半分くらいの大きさの部屋。生徒会室というだけあってホワイトボードや大きな机、パソコンもあり、でも部屋にいたのは眼鏡をかけた男子生徒だけ。

 シューズの色が緑色だったためにこの男子生徒が三年生だというのが分かった。


「ようこそ、難波明君。那須珠希さん。生徒会長の都築蒼汰(つづきそうた)だ。難波家の関係者と会うのは初めてだ。よろしく頼む」


「初めまして。今日はよろしくお願いします」


「二人とも立ち話もなんだし座りなよ」


 大峰さんに促されて椅子に座る。椅子に座布団などがあって座る席が役職によって決まっているようだった。

 会長の都築さんはお誕生日席というか、上座にいるのはわかる。


「君たちに最初に言っておくと、僕は大峰さんが麒麟だということを知っている。正確には現生徒会役員全員が、だけど。だから生徒会役員のみがいる時は大峰さんをトップに添えるので、そういうつもりで」


「じゃあこれからの説明も大峰さんがしてくれるんですか?」


「えー、ヤダ。面倒だからソウタくんやってよ」


「わかりました。説明は簡単にしていくけど、行事の時は必ず役員はこのワッペンをつけることになる」


 机の上に置かれたのは黄色の生徒会と記されたワッペン。遠くからでも見やすいようなデザインで、一般生徒なら生徒会の言うことを聞こうとは思うだろう。生徒会っていうのは生徒の代表なんだから。


「僕たちが基本的に教職員や現場にいるプロの方々と協力して、生徒たちを誘導する。君たちに頼みたいのは僕らと生徒たちの橋渡し役、そして実力者という点からの時間稼ぎをお願いしたい」


「それは緊急時において、ということでしょう?俺たちも自分の命が大事です。自分の命を捨ててまで誰かのためには動けませんよ?」


「それはそうさ。僕たちも君たちもプロじゃない。そこまではしなくていいよ。やれることはやるけど、無理なことはしなくていい。そんな事態はこれまでに起こっていないけど、念には念を、だ」


 これまでは起こってなくても、これからは起こるんだよな。そういう意味では生徒会は優秀だろう。備えることはちゃんとしているんだから。


「特に君たちは式神という戦力を持っている。これは大きな手段だ。大峰さんも言っていたが、式神は時間稼ぎにはもってこいだというお墨付き。それなら四神に式神が与えられるのもわかるものだ」


「都築会長たちは、ゴンのことを知っているんですね?」


「ああ。校長先生から通達されている」


「じゃあ、この確認はゴンを大々的に投入しても生徒会や学校側が庇い立てしてくれるという裏取りのようなものですね?」


 都築会長はうなずく。校長だけが知っていても意味ないし、教職員が知っているのにそれと連携して動く生徒会が知らないのは効率が悪い。ゴンも不貞腐れていないのでいいと思っているのだろう。


「狐のことを嫌っているというのはどこまでの人間に適応されるのか正直わからない。一千年前に陰陽師の祖を陥れたとされているが、僕は安倍晴明信者でもないし、抱いた感想は『そうなんだ』程度だ。現代に生きる人のほとんどはそんなものだと思う。むしろ神経質になっているのは呪術省と深い関わりがある人間と、安倍晴明の血筋くらいじゃないかな。だからこそ、君たちは特殊なんだろうけど」


「……むしろ他の血筋の人に聞きたいんですよね。安倍晴明のことをどう思っているのかって」


「どうっていうのは何だい?明くん」


「明様が言いたいのは、皆さん安倍晴明を神聖視しすぎなのではないかってことですよね。様々なことを為した人なのでしょうけど、彼が亡くなったから都がなくなったのは言い過ぎではないかと。法師も同じ時代に居たわけですし」


 そう、安倍晴明と同等の陰陽師はもう一人いた。だから安倍晴明が玉藻の前に殺されたからといって、都の防衛に法師を宛てれば良かっただけのこと。それができずに法師に反乱を引き起こされたのは都の求心力不足だろう。

 法師と安倍晴明が繋がっていた時点で、どちらかが都を見放せばどうなるかなんてわかりきっていたことだけど。法師についても一般的には安倍晴明の弟子で、安倍晴明の死後に都へ反旗を翻した悪逆人というくらいしか知られていない。


「法師も実力は同等だったみたいだし、でも反乱起こして死んじゃったからねえ。晴明様は今の陰陽術を体系化させた偉人ではあるんだろうけど、法師も呪術を極めた人物。貢献度ではあまり変わらない気がするけど、法師を悪者にする流れはあるね」


「悪者を作り上げた方が統制が利きやすいという面もあるんだろうね。安倍晴明の偉業はもちろん讃えられるべきものだろうけど、神様には思えないかな。だって人の子だろう?」


「それをわかってない人が多いと言いますか……」


「我々は陰陽教とか、そういう宗教に入った覚えはないからね。それに玉藻の前が悪いとしても、だからと言って狐全てが悪いわけではないだろう?そうしたら犯罪者を出している人間は全部悪い人になってしまう。まあ、人間は悪い存在かもしれないけど」


 そう笑う都築会長の思惑がわからない。自分も人間なのに、自分が信じられないのだろうか。悪い人間も多数いるだろうが、良い人間もいるだろう。たぶん。


「話を戻して。緊急時には力の出し惜しみをしなくていい。それで君たちが死ぬなんてことはあってはならないからね。そして、直近のイベントが新入生歓迎オリエンテーションだ。一年生たちへ部活や陰陽術研究会への勧誘をする一大イベントだけど、君たちが遭遇した蟲毒、それを引き起こした何者かがまた君たちを狙うかもしれない」


「そこまでご存知でしたか」


 蟲毒は世間から消された事件だ。そもそも地元に住んでいる人たちしか魑魅魍魎の大量発生と市役所全壊という事実を知らない。百鬼夜行と等しい事件が起こり、市役所が全壊したと父さんと市長は発表したが、呪術省はそれを認知せず、有耶無耶になった。

 それを大峰さんは知っていた。大峰さんから聞いたんだろうか。

 知った経緯は良いとして、たしかにイベント事は襲撃しやすいかもしれない。Aさんたちが攻めてくるとしたらここか。


「父が独自に調べていますが、犯人はまだわかっていないそうです」


「あの星見の康平殿でもかい?」


「ええ。視える未来と過去にも限りがあります。今回は特に邪魔が入っているようで」


「邪魔?僕は星見については浅学の身だからわからないのだが、見たいと思う対象によっては妨害がされるものなのかい?」


「土地やそれこそ星の見え方などにも左右されるようです。俺も過去は視えますが、土地や近くにいる人物、その過去に誰がいるかなどは状況によって異なりますから」


 俺だってまだまだ未熟だが、あれだけ過去視を視ていればなんとなく条件は分かる。しかし、邪魔されてるってことは相手にも星見がいるってことだ。

 星見をどうにかできるのは星見だけ。干渉するには星見の才能が必要だ。父さんにはすでに土御門の子息が犯人だと伝えてある。だというのに土御門本家の動向を視れなかったということだ。


 土御門に星見の陰陽師は公には存在しない。だが父さんという表向き最高の星見に対抗できるほどの星見が土御門本家にはいるということだ。また隠し事。それが陰陽師の祖の血筋で、しかも陰陽師の取り締まりを行っている総本山だというのに。

 ちょっと苛ついていると、ゴンが隠形を解いて俺の目の前の机の上に現れた。ゴン、姿を自分から見せるなんて珍しいな。


『バカ明。気を緩めすぎだ。星見について何をバラしてやがる。康平から言うなって言われてただろうが』


「あっ……」


 そうだ。父さんから俺はまだ星見について呪術省に登録してないから誰にも漏らすなって言われてたんだ。土御門に目をつけられるからって。

 しまったな。完全に俺のミスだ。情報なんてどこから漏れるかわからない。特に京都には良くないモノが多いから警戒しておけって言われたのに。


次も三日後に投稿します。

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