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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
2章 新入生歓迎オリエンテーション
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1-1-1 入学式から波瀾万丈

教室へ向かう二人。


 1



 四月初旬。京都は盆地ということも相まってこの時期の朝は中々に冷える。とは言ってもすでに十時過ぎだが。時計のアラームを止めて起き上がる。

 昨日入寮して、今日の十三時から入学式。十二時半には教室に入っていなければならない。逆算するとこのくらいに起きないといけないのだ。面倒くさい。


 寮の部屋は完全一人部屋の九畳はある大きな部屋をそれぞれに与えられる。部屋にある風呂を使っても良し、一階にある大浴場を使うも良し。キッチンなどはついていないが、冷蔵庫はある。料理をしたかったら食堂の隣にある調理室を借りるようにということ。俺には一切縁のない場所になりそうだ、調理室。

 着替えて制服に袖を通す。国立陰陽師育成大学付属高等学校の制服はどちらも緑色のブレザー。ズボンは茶色で、胸元に校章が大きくくっついている。ちなみに東京分校は焦げ茶色のブレザーだったか。女子も配色は変わらず、下がスカートになっている。


 ゴンと銀郎が隠形しているのを見て隣の部屋をノックする。隣の部屋はなんと祐介だった。というか寮の部屋は学年ごとにフロアが異なり、そこからさらに地方ごとに割り当てられていた。

 俺たちは関東勢という括りで近くの部屋になっただけ。数秒すると制服を着た祐介が出てきた。


「よっ。おはよう」


「おう、おはよう。先生もそこにいるんだろ?おはよう」


 ゴンは返事を返すわけにはいかないので応えない。

 というか本当に合格するなんてなあ。内申点より実際の試験を重視するとはいえ、あのサボりまくりの祐介が受かるなんて、代わりに落ちた一名に心の中で合掌する。

 今年は大峰さんのせいでさらに一枠減ってるんだよな。安倍晴明の血筋も多いし、今年の受験生は災難だったな。他の学校で頑張ってくれ。


「朝飯食いに行くか。本来なら三時から登校すればいいのに、今日だけは十二時半とか、ホントやってられねえ」


「そう言うなって。むしろ明日からは睡眠時間増えるって思ったら気が楽じゃないか?」


「祐介、今日にはもう附属図書館が使えるんだ。睡眠時間より読書の時間に決まってるだろ?」


「うへぇ、真面目」


 一階に降りて食堂に入ると、すでに多くの生徒たちが食事を取っていた。上級生も式に参加する人間はいるので準備などあるのだろうし、新入生は新しい生活に心躍らせているのだろう。

 ぶっちゃけ男共の輝いている顔とか見たって何も面白みがない。ミクとか動物の顔とかさぁ。動物たちが遊び回っている光景ならいくらでも見ていたいが、高校生にもなる野郎どもの無邪気な顔とか、どうしろと。


 ゴンは食事の場所が決まっているために、一人でそちらへ向かってしまった。俺たちは食券機に並ぶ。学生証をタッチして食券を選ぶと買えるのだが、この食費は月一万二千円を前払いしている。

 正確には寮の家賃に含まれている。諸々込みで四万五千円なのだとか。これが安いのかどうかはわからない。とりあえず父さんに感謝しておく。

 買ったのは焼き魚定食。祐介は朝定食だった。食券をおばちゃんに渡すのだが、このおばちゃんたちにはお礼を言っておかなければならない。


「ゴンが昨日からお世話になってます。三年間お願いします」


「ああ、あんたが明ちゃんだね?ゴンちゃんのことは任せておき」


 何も問題ないようで安心する。

 陰陽師の中では狐は嫌われているが、存外一般人には嫌われていないというか、そんな昔のこと気にしていないというか。魑魅魍魎なんて昔からいるんだから、危害を加えない狐程度怖くもないらしい。

 別に災厄をもたらす獣というわけでもないんだし。

 さっさと朝飯を食べて教室へ向かうことにする。クラスは寮の一階に張り出されていて、俺と祐介は同じクラスのC組。ミクも一緒だった。知り合いが同じクラスにいるというのは良いことだ。


「なーんか、作為的だよな。同じ中学の奴全員一緒な上に、タマキちゃんもだぜ?」


「悪いことじゃないだろ。それに俺とタマが一緒の理由はあるからな」


「いくら分家でも一緒にするかぁ?」


 ミクは狐憑きだ。もし何かで暴走してしまったらミクを悪霊憑きと知っていて放置することなど次期当主としてできやしない。そういう監督責任も高校の内に負っておけということだ。

 実際狐だから抑える手段はあるわけだし。ここは京都。悪霊憑きが暴走しやすい土地でもある。霊脈が活発すぎるのも問題だな。


「これは名家の本家と分家の問題だからな。お前はオマケ」


「そうかい。そういや明って新入生代表じゃねえの?」


「総代なんて何でやらないといけないんだよ?俺の内申点が悪いことなんて知ってるだろ?」


「あー、そうか。内申点があったか」


 それに総代とか面倒だし。そんなの他の安倍晴明の血筋にやらせておけばいい。本家もいるみたいだし。


「あと、アレな。賀茂って名前の生徒同じクラスにいたな。もしかしてあの賀茂家か?」


「この学校に入るような賀茂さんはあの家しかないだろうさ」


「だよなぁ」


 土御門と同等の陰陽師名家。安倍晴明の師であり、安倍晴明よりも古い陰陽師の家系。今の呪術界でも土御門と同等の発言権があり、本家の人間が結婚するとなればニュースになるほどに有名な家だ。

 というより、一般的に知られる陰陽師の家々のヒエラルキートップに君臨している双角。この下に二つの家の分家が並んで、その下に他の有名な家がいる状態だ。


 で、そんな有名な賀茂という家は陰陽師の中には一つしかない。土御門家が分家に土御門を名乗らせていないように、賀茂も分家に賀茂とは名乗らせていない。

 ウチが難波であって土御門じゃない理由だ。こういうこすいところが好かれない理由だって気付けよ。

 寮は学校の敷地内にあるので、歩いてもそこまで時間はかからない。バカみたいに敷地が広いので端から端へ移動するとなるとニ十分近くかかるが。男子寮と女子寮を対極に配置してるのは色々なことの防止だろうけど。


 正直助かる。

 東棟の二階にある一年C組の教室に入るとそこそこの生徒がすでに来ていた。一クラス三十五人なので半分くらいは来ていると思う。時刻はちょうど十二時。むしろこの時間に全員集まっている方がおかしい時間だった。

 ミクを探すと、すでに来ているどころか親しく話し合うような仲の人間がいるとは思わなかった。瑠姫も姿を隠して傍にいることを確認して近寄る。


「おはよう、タマ」


「おはようございます、明様。祐介さんも」


「おう、おはようさん」


 ミクの顔を確認してから顔を横にずらす。女子なら会ってすぐに仲良くなることもあるだろうと思って知らない顔がそこにはあるんだろうと思っていたらそんなことはなかった。

 ついこの間まで見ていた顔。中学での同じクラス、天海薫がそこにはいた。


次も三日後に投稿します。

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