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5-2-3 新天地では、やることが山積み

年齢詐称との会話。


 校長室から少し離れた所に先程案内をしてくれた大峰翔子さん(仮)が廊下の壁に寄っかかっていた。どうやら俺たちのことを待っていたらしい。理由は不明。


「終わったみたいね。明くんに珠希ちゃん」


「ああ。ロリババア先輩どうもです」


 なんとなく貶してみる。麒麟とは聞いていても、年齢詐称している同級生に待たれているというのは不気味だ。こちらが護衛対象のはずなのでいきなり殺されるなんてことはないはずと踏んでのことだ。

 数秒の静寂の後、件のロリババア先輩は腹を抱えて笑い出した。どうして廊下って声が反響しやすいんだろうな。うるさくて耳が裂けそうだ。


「キミ、本当に難波家の次期当主かい?普通遜るもんだけど。校長から全部聞いてるんだろう?」


「ええ。ですが名前とは言霊を用いる陰陽師として大事なものです。それを偽るというのは人としても陰陽師としても信用なりません。たとえあなたが麒麟で、俺たちの護衛だとしても」


「そう。無条件で信用して来たらどうしようとも思ってたけど、合格ね。ただその呼び方は辞めるように。ボクだって正体は隠したままにしないといけないんだから。翔子ちゃん、って呼んでいいんだよ?」


「そんなに親しくするつもりはないので。というか、いきなりあなたと親しくなっていたら俺の知り合いが驚くでしょう?」


「あら。友達いたんだ?」


 酷く傷つく発言だ。友達、いるけど。それが人間である必要はない。それにミクだって親戚ではあるが、血が遠すぎて親戚というよりは友達という枠組みの方が近い。


「ここに合格する予定でもあるの?それとも在校生?」


「一応中学の同級生が一人。先輩には分家の人はいなかったはずです」


「やっぱり友達少ないのね。そっちの珠希ちゃんは?」


「知り合いの方はここを受験しないと思います。そこまで陰陽術に重きを置いてる人がいなかったので……」


 ミクの実家は田舎も田舎。どうもウチから断絶した際に田舎へ引っ越したらしい。あとはウチの分家のメンバーだが、京都ではなく東京の方を受験している人が多い。

 その方が近いからと、わざわざ京都まで行かなくてもウチの分家の当主程度であれば東京でも充分だということ。意識の高い家の子どもだけが京都に来る。ちなみに星斗は京都の卒業生だ。


 あとは、京都の方が安倍晴明の血筋を重要視している。血筋というだけでやっかみを受けるというのは星斗から当時聞いていた。難波の名前は能無しということで軽んじられるらしい。

 全国に二十人しかいない九段が当主を務めていて、星斗という若くして八段になる逸材もいるというのに嘆かわしい。大きな理由は狐のことだろうが、負け犬が僻んでいるようにしか思えない。


「明くんどうどう?こうして珠希ちゃんと並んでると同級生って感じしない?」


「まあ、背丈は似てるんでかろうじて」


「かろうじて⁉」


 ミクは同年代でも背が小さいほうだが、大峰さんも似たり寄ったり。大峰さんの方が三cmほど大きいだろうか。つまり五十歩百歩。


「背が小さいのは家系の問題だからねー。まあ、そのおかげで高校生に見えるなら今回は助かったってことで」


「チビの家系と?」


「キミ、本当に口が悪いね?難波は京都では軽く見られがちなんだからそういうところから気をつけなさいよ?」


「では今後気を付けます。……ああ、あなたは同級生でしたね。なら今後敬語を使わなくていいってわけだ。よろしくな、おチビさん」


「気を付けてないじゃないか!」


 何で俺の周りには星斗といい弄りがいのある年上が多いのかね。いやあ、愉しくてたまらない。やりすぎには注意しないとだけど。


「大峰さん。真面目な話、護衛としてはどこまで関わってくるんですか?学校はまあいいとして、寮ではタマのことを中心に守ってくれるので?」


「あとはお偉いさんの依頼に一人女の子がいるからね。その子と珠希ちゃんが主かな。君たち男子は学校が主だと思って。ああ、休日までは干渉しないよ?休日は依頼の方を優先したり、麒麟としての仕事をしないといけないからさ」


「それは良かった。ラーメン食べに行くのにもついてこられたらどうしようって思いましたよ」


 自由な時間が欲しい。そこまで縛られたくはない。式神っていう従者は今までもいたけど、分家だって俺に従ってくれるわけじゃない。好きにやればいいとさえ思っている。だから桜井会も見逃しているわけだし。

 次期当主、安倍晴明の血筋だからってぎゅうぎゅうに縛られたくない。だからこそ、京都から離れたあの地にいるわけだし。


「お姉さんがおススメのラーメン屋教えてあげようか?」


「お姉さんなんてどこにいるんだ?俺たち同い年じゃないか」


「ムキーッ!こういう瞬間に切り替えないの!本当に良いお店知ってるのに!」


「それを自分の足で見付けるのが楽しいんですよ。その趣味を奪わないでください」


 ネットなどを見ればすぐにわかるが、そんな他人の評価を気にしない。自分に合う、合わないはもちろんあって、他人が評価しているから良いお店とは限らない。

 というか、他人のこと気にしてたら狐なんて信奉できないっての。


「……まあ、二人にはちゃんと伝えておくね。京都が地元じゃないし。最近魑魅魍魎もだけど、この近畿に根付いてる安倍晴明の血筋が活発に活動してる。何かをしようとしているみたいだけど、純粋に自分たちの力量を磨いている家もあれば、きな臭いことをしている家もあるわ。いくら血縁とはいえ、ちゃんと見極めて交流した方が良いわね」


「ご忠告どうも。ちなみに大峰さんとしてはどこが怪しいか目星付いているんですか?」


「ええ。本家本元。土御門には気をつけなさい。あなたたちの土地で蟲毒を起こした疑惑もあるものね」



次も三日後に投稿します。

次で一章的なのは終わりです。たぶん。

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