表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
8章 家の呪縛・終わりの始まり
292/405

3ー1ー2 二人の背景・喧嘩

喧嘩勃発。

 京都は中心だけど、そこを治めている者が土御門でも賀茂でも、問題はなかったんだろう。晴明が産み出した陰陽術を正しく理解せず政治の道具にして。利権を得続けるための肥やしにした時点で見限っていた。

 その一方、難波も裏・天海家も正式な陰陽術と呪術を受け継いだ家だ。


 だから例え間違った統治者がいたとしても。力で潰せると考えたのだろう。桜井会や裏・天海家、そして天海本家も動員すれば簡単に勢力図はひっくり返る。

 そんなことをしなくても、法師の腹心たる姫さんと、昔馴染みの妖たちを呼んだら簡単にひっくり返ったわけだが。


「祐介。お前が土御門の関係者だなんて、詳しく調査しないと出てこないと思う。それに、そんな些事に関わってる時間が新しい陰陽寮にはない。……今なら引き返せる。その術式を止めろ。そのことを伝えたくて、俺はここに来たんだ」


「できねえよ。これは俺が、やらなくちゃいけないことだ。俺にしかできない。今更アイツを、裏切れない」


「……それほどの人物か?土御門光陰は」


「光陰については、俺もわかんねーよ。愛憎入り乱れて、どの想いが本物なんだかすらわからねー。……でもな。死なずに済んだ女の子に、顔を合わせられないままなのは、俺自身が許せない。救えなかった女の子を、見殺しにした俺は、せめてもの結果を残したいんだ。このちっぽけな身体に誓って」


 口で言ってもダメ。そうなると、もうこれしかないか。

 俺は腰のホルスターからハンドガンを抜き、もう片方の手には呪符を取り出した。それを見て祐介も呪符を取り出す。

 平行線の口論をいつまでもするわけにはいかず。なら、わかりやすい方法は相手を文句のないように屈服させるしかない。

 俺も祐介も、陰陽師相手の術比べなんて得意じゃないんだけどな。これしか方法がないのも事実。


「銀郎、手を出すなよ」


『了解です。坊ちゃん』


「良いのかよ?お得意の式神使わなくて。ゴン先生もいなくて、俺を止められるってか?」


「ゴンはタマの看病してる。──式神がいなかったら、俺の能力が落ちると思ってるのか?」


「失言だったな。上がることはあっても、下がるなんてありえねーや」


 そう、式神は式神だ。いなかったら負けるほど、難波家次期当主は甘くない。たったそれだけで弱くなる人間が、日本の調停者として指名されるわけがない。

 銀郎が後ろに下がる。それと同時にお互い呪符を前に繰り出した。


「ON!」


「解!」


 俺の呪符から出たのは水の濁流。それが周りの木や地面を抉りながら祐介に迫るが、祐介が産み出した土の壁によって防がれてしまう。五行の関係性をよく理解しているし、あの術式を起動しながらこちらも問題なく迎撃できるんだから、今の祐介の実力はそこら辺のプロよりよっぽど上だろう。

 段位で言えば七段は確実にある。マルチタスクができている証拠だ。


 ここまで急に実力が上がった要因は、何となくわかってる。それとも、俺が祐介のことをちゃんと理解できていなかっただけなのか。

 どちらにせよ、敵対してしまった。なら、やることは一つだけ。

 無理矢理にでも、止めるだけだ。


雷神砲(らいしんほう)!」


磁場障壁(じばしょうへき)!」


 前に出した一枚の呪符から飛び出した一直線に進む雷の大砲も、砂鉄を集めた防壁で防がれた。相性って本当に大事だ。金剋木。木に属する雷は砂鉄の属する金に打ち勝てないとされる。

 五行の基礎的なルールだが、それはやっぱり基本的に、という頭言葉が付く。

 俺がこの前の龍に対して行った雷撃を、同じように祐介に使ったとしても。たかが砂鉄を集めただけの磁場結界で防げるわけがない。あくまで相性が良いってだけで、込めた霊気や神気、術式の種類によっては突破される。


「単音詠唱に、正式詠唱。なのにこの威力……。小手調べか?明」


「そう言われても仕方がないな。時間稼ぎしたって増援が来るわけでもない。こんな場所で戦ってたって、誰かに見付かることもないだろ」


 林の奥で陰陽術を使っているからと言っても、国道や建物が近くにあるわけでもない。

 人の気配がないような場所で戦ってるんだから、誰かが乱入して来るなんてありえない。プロの陰陽師は巡回していても人の往来があって危険がありそうな場所を回っている。人に被害が出ないような場所に来るのはサボリ魔くらいだ。

 そんな人間が来たとしても、銀郎が気絶させるだけ。つまり、俺たちの術比べは誰にも邪魔されない。


 祐介がどの程度できるのか調べていて。今の状態を完全に測り終えた。今までの祐介の情報を上書きしつつも、万全じゃないと知る。

 その結果に答えを出すように、俺は右手に持ったハンドガンを向ける。

 すると祐介の鋭い視線がハンドガンに向いた。これが気になるらしい。


「それ、どこのメーカーで作らせた呪具だよ?土御門の情報網でも調べられなかったんだが?」


「そりゃそうだ。これを作ったのは妖だぞ?」


「……は?」


「妖の中には、人間に協力したり商売をする連中もいるんだよ。土地神だったらもっと人間にも好意的だったり、むしろ嫌悪してたりするけど。妖はそこまで遠い存在じゃないってところだ。呪術省はそう思っていなかったけど」


「わかってたら、あんな大軍が集まるのを予見できなかったわけがない」


 妖のことを軽視していたことも「神無月の終焉」における呪術省の問題だけど。

 もう一つはやっぱり星見を冷遇していたことが要因に挙げられる。何人かの星見は十月頭の事件を予見していたのに、呪術省のために動こうとする者がいなくて、それに住民や街そのものに対する被害はほぼ出ないとわかっていて何もしなかったということもあるだろう。


 極め付けは「婆や」だろうか。彼女の忠告を一切聞かず幽閉し、最終的に話も聞きに行かなくなった。それじゃあどうにもならないだろうと。

 自ら破滅の道を進み続けた呪術省に、力を貸す者は奇特な存在だ。プロの陰陽師になっても、呪術省に忠誠を誓う者などいたのだろうか。


「祐介。裏の存在っていうのはここまで見てるもんなんだよ。どんな妖がいるのか、それが害を為す者なのか、益をもたらす者なのか判断して保護したり、討伐したりする。人間だけを見て、異形は全て敵として。神に見放される。それがこの一千年の中で呪術省が学ばなかったことだ」


「……そうだな。不勉強だったところだろうよ。五神がいて、平安時代なんていくらでも妖はいた。それが今や神の存在を認めずに、妖のことをプロにも伝えないほどだ。呪術省が狂ってるのは、俺がよく知ってる。そこを運営する土御門と賀茂が狂ってたんだ。あの二つの塔は、混沌を詰め込みすぎた」


「それであれ、元々は晴明の式神二体を模した塔らしいけど。絶対嘘だろ。土御門と賀茂の象徴だろ?」


「今じゃ、そうとしか思えないな」


 二人して苦笑する。

 祐介も呪術省に忠誠を誓った者じゃない。かといって土御門や賀茂の家に忠誠を誓ったわけでもない。

 となると、やっぱり個人か。光陰についてもわからないって言ってたけど。

 賀茂静香に対する罪悪感で動くには、腑に落ちないことがいくつかある。


「祐介。お前が使おうとしているその術式、世界にどういう影響を及ぼすかわかって使うのか?──その術式じゃ、賀茂静香は蘇らない」


「わかってる!降霊もダメ、本物の泰山府君祭を使おうにも、本物を使ったって静香はこっちに戻せない!あれは……神に使う術式だ。神の領域に干渉する術式で、人間の静香には効果がない。……これだって、成功するかわからない博打の術式だってことも」


「そこまでわかってて、やるんだな?」


「ああ。もう、これしか。方法がない」


 それは違う。他にも方法はある。

 ただそれを祐介が認めないだけだ。いろいろなことから目を逸らして、わざと視野を狭めて。

 強迫観念か知らないけど、それしかないと決め込んでいる。

 ……なんで、そんなに辛そうな、苦しそうな顔をしながらこっちを見てるんだよ。俺はお前のこと、救えないのに。


「それを使わせるわけにはいかない。考え直す時間も猶予もないんだろ?」


「わかってるじゃねえか。俺は、もう後戻りできない」


「なら、それを貫け!俺とお前じゃ、もう道は異なる!罪悪感も覚悟も全部背負って、その上でやりたいようにやれ!」


 引き金に指をかけて、ただ引く。

 霊力が塊となって、腑抜けた顔をした祐介に一直線で向かっていった。


次も三日後に投稿します。

感想などお待ちしております。あと評価と、ブックマークも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 明くん、祐介に銃のことおもちゃとしか説明してなかった。 そりゃあ妖が作ったものだなんて気付かないわけだ。妖なんて不倶戴天の敵だろうし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ