1−5ー1 さて、九州へ
男子部屋にて。
消灯十分前に戻って来たはずなのに部屋はだいぶ明るかった。布団は敷いてあるが、その中央に男子たちが集まっている。祐介が帰って来た俺に気付いたようだ。
「お、明おかえり。もういいのか?」
「ああ。祐介、入浴セットありがとうな」
「いいってことよ。バッグの隣に置いてある。タオルはそこに干してあるから」
使ったタオルは窓の近くにあったタオル掛けに干してあった。明日回収すればある程度乾いているだろう。
集まって何をしているのかと思えば、ボードゲームである人生ゲームを用意していた。まだ始めていないらしい。
「今からやるのか?」
「そう。陰陽師としての生活スタイルに合わせてたら、こんな時間でも眠くならなくてさ」
「朝早かったけど、全然だしよ。住吉がこれ持って来てて良かったぜ。トランプとかはある程度やったし」
「テレビはこの前の事件のやつ延々と話してるだけだし」
祐介はどれだけ遊び道具を持って来てるんだか。こいつこそ学習目的の修学旅行じゃないよな。別にこういう遊び道具を持って来てはいけないなんて書かれてなかったけど、持って来すぎ。
「女子の部屋に遊びに行ったりしなかったのか?祐介ならやりそうだけど」
「オメーのせいで下手に女子部屋近付けなかったんだよ。ホテルで騒ぐの禁止されて、女子は皆オメーみたいな彼氏が欲しいって話ばっかで他の男子が近寄る隙なし。全く羨ましいぜ、貴公子様は」
「なんだその歯が浮くような渾名は」
誰が貴公子だ、誰が。そんなホストみたいな称号はいらない。
誰にでもあんなことするわけないだろ。ミクにだからこそやったんだし、告白が面倒だから周囲に見せつけ的な意味も込みでやったのに、何で話が広がってるんだ。明日からも楽をできそうにない。
「その不名誉な渾名は捨て置くとして。消灯時間になるけどどうするつもりなんだ?」
「防音の術式と、あとは照明は火の玉かなんか出してくれ」
「俺任せか?」
『ならオレがやってやる。電気消せ』
「さっすが先生!」
俺が明日万全でいるために、ゴンがやってくれることになった。電気を消した後防音の結界と、火の玉を六個ほど出してくれた。これのおかげでお互いの顔も見えるし、マス目とかもちゃんと見える。
ジャンケンで順番を決めて、始める。俺は青い車だ。
「で?恋人の時間って何やってきたんだ?」
「特には。ゴンとかのご飯買いに行く口実だったし」
「またまた〜。あんだけ長くどっかに行ってたのに?」
「星斗から電話かかってきたけど、お互いのこと話してそんくらい。どうせ見つかったらそうやって聞かれるだろうからって消灯時間まで外で時間潰してたんだよ」
「今や一番有名な二人になっちゃったからなー」
人生ゲームをやりつつも、雑談しながら話題を逸らしていく。何回キスしただの、恋人繋ぎしてただの、お姫様抱っこやっただの聞きたいわけじゃあるまいし。
しっかし、人生ゲームも初めてやったな。こういうゲーム家族でやらないし、中学の友達って言ったら祐介しかいなかった。もしくはミク。二人しかいないのに人生ゲームとか寂しいからなあ。
いやいや、陰陽大家なんだからそれが普通か。どこだって陰陽師を育成しようとする家なら、遊びよりも陰陽術を教えるのを優先するって。俺だけが特別変なわけない、と思う。後で星斗に聞こうかな。ミクは一般の家だからやったことありそう。
「土御門と賀茂は?ウチの学年で有名って言ったらあの二人だろ」
「土御門はエリートって雰囲気あったけど、賀茂さんはお前に術比べで負けたじゃん。それでそこまで有名にはならなかったぞ。態度もキツかったし」
「そこは俺が有名になるってだけじゃないのか?」
「ほら、茨木童子。そんな鬼を使役してるのに難波に負けたから、賀茂が有名にはならなかったなー。それに本物は法師が使役してるんだろ?偽者でイキちゃった人ってことで、今相当評価悪いぜ?」
「見た目だけなら悪くないんだけどなー」
ふうん。賀茂ってそんな感じなのか。家の代名詞、星見も使えないしそういう評価になってもおかしくないか。
そんで今回の一件で評価を落としたってところかね。明日あいつらの一派に闇討ちされないか?大丈夫か、これ。めっちゃ恨まれてる要素あるんだけど。
土御門と賀茂は家のせいで旅行だってのにイチャつけないのに、逆に俺たちはめっちゃイチャついてる。調子に乗るなって言われそう。あいつらって案外短気だからなあ。何をされるかわからん。
「あ、陰陽師になった。職業カードくれ」
「はいよ」
「……なあ。陰陽師にしては給料良すぎないか?公務員だよな?」
「そんなところまで現実に寄せなくていいってことだろ。ゲームだし。子どもの夢壊さないようにってことだろ。命張ってる公務員なんて他に自衛隊くらいだし」
「そんなもんか」
人生ゲームなのにそれでいいんだろうか。こういうのって子どもに将来をイメージさせるために作ってるんじゃなかろうか。
現実とゲームは違ったってショックを受ける子どもはいないだろうか。ゲームはゲームとして面白くなるように色々調整してるんだろうけどさ。
「あ、結婚。……え、恋人の影もなかったんだけど。いきなり結婚すんの?怖っ」
「まあ、ゲームだから。はい、妻のピン」
「……俺、幼馴染としか結婚する気ないんだけど」
「そんな設定ないけど、幼馴染ってことでいいよ!難波ってめんどくせーな!」
「お前そんなに那須さんのこと好きか!」
「好きじゃなかったら恋人になってないだろ」
「くそう!惚気聞く気なかったのに!リア充め!お前以外この部屋に彼女いる奴いないんだぞ!」
「頑張れ?」
「下手な慰めなんて余計虚しくなるだろうが!」
そんな感じでバカみたいに騒ぎながら、楽しくゲームを楽しんだ。一時を過ぎた辺りで朝の起床時間もあったので寝ることに。大勢でゲームするっていうのも楽しいもんだな。
明日、もう今日か。どうなるか不安は残るけど、出たとこ勝負だなあ。
次も二日後に投稿します。
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