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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
7章 神の縫い止めた災厄
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1−2−1 さて、九州へ

新幹線の中で。

 というわけですぐに宿泊学習の日はやってきた。

 登校初日に班編成と、自由行動でどこに行くのかを大雑把に決めて。次の日にはもう新幹線に乗っている。今日も朝早いからと、昨日は学校が朝の十時に始まって夕方の五時前に終わった。普通の学校みたいだった。

 皆の反応はマチマチ。今までと態度が変わらない奴もいれば、距離を取る奴も。まああの宣言って学校を襲った奴の仲間ですよっていうことだから、俺が責められるのもわかる話だ。直接そう言ってくる人はいないけど。生徒で死人は出なかったけど、大怪我した人はいたはず。詳しい数も誰がそうだったかも覚えていないけど、俺を恨んでいる人もいるだろう。それがミクに向けられなければいい。


 同じような状況なのは賀茂。土御門よりはマシだろうけど、賀茂も孤立している。元からそうだったと言えばそうだけど、忌避の目線を向けられているのは前以上だ。賀茂自身が何かしたわけじゃないが、あれだけ家のことで横暴に振る舞って来たぶり返しというか。家がやらかしたら、家を笠にしてきた賀茂に向けられる目線も悪いものになるのは当然。

 賀茂と同じ班になった奴ドンマイ。宿泊学習楽しくなさそう。班活動とか守らずに土御門の元に行きそう。

 俺たちは班のメンバーでひとかたまりになって、トランプに興じていた。俺と祐介が進行方向逆向きに座っていたけど、これくらいで酔ったりしない。ミクは膝の上にゴンを乗せて参戦。


「しっかし、陰陽術の無駄遣いだろ。トランプのために物理障壁作るとか」


「テーブル無いんだから仕方がないだろ」


 新幹線でトランプができるように設定されてるわけないだろ。だから仕方がなく俺が物理障壁を真ん中に設置してやっている。新幹線とはいえ道中暇で、祐介が持ってきていたトランプをやっている。こういうところは気が利いて何より。

 やっているのは大貧民。大富豪って言うのが一般的かもしれない。地元ルールとして8切り、11バック、階段革命ありでやっている。

 で、ゴンが強いんだかミクの運が良いんだか。今三回連続で大富豪になっている。一回勝ちだすとそのまま勝ち続けるゲームだからな。


「はい。革命です」


「ここで!?……誰か、革命返し!」


「できない。パス」


「クソ、俺もパス」


「私もパス」


「成立ですねー。じゃあそのまま、3です」


『お前ら、ジョーカー使わないとまた珠希が上がるぞ?』


「じゃあジョーカー!」


「ごめんなさい。スペードの3です」


「んなっ!先生ズリイ!」


 あーあ。祐介虎の子のジョーカーを切ったのに。スペードの3まで持ってたのか。

 ゴンがいるとミクの独走状態が止まらない。俺のセコンドになっても勝たせてくれないのに、ミクだとボロ勝ちするんだよなあ。運の問題か?俺って昔からこういう運要素絡むものって弱いんだよな。おみくじとかでも大吉出したことない。


「4のダブルです。ありますか?」


「パス」


「えー。珠希ちゃんあと一枚じゃん。パス」


「……パスだね」


「はい。上がりです。ゴン様ありがとうございます」


『珠希お菓子よこせ』


「はい、ただいま」


 お菓子食べたかっただけかよ。バッグから出したチョコ菓子を美味しそうに食べる一人と一匹。

 そこから泥仕合。祐介はジョーカーを切ったからか革命中で手札が良くないらしい。なんだかんだで富豪天海、貧民俺、大貧民祐介になった。富豪から大貧民ってすごい転落っぷりだな、祐介。俺?ずっと貧民だけど?さっき祐介にジョーカーあげたの俺だし。


「UNOにしようぜ!銀郎さんと瑠姫さんも込みで!」


「どれだけ遊び道具持ってきてんだよ。二人を呼ぶのは無理。スペースがない」


 新幹線の中で式神をそうぽんぽん呼べるか。通路を塞ぐのはマナー違反だ。ゴンは膝に乗せられるから呼び出してるだけ。あとはお菓子食いたいだけだな。


「難波君!ここにも物理障壁出して!」


「自分たちでやれよ……」


「だって私たちじゃ呪符ないと出せないもん」


「ハァ。ON」


 女子の集団に請われて、物理障壁を出した。お茶会のためのテーブル代わりを俺に頼むな。これくらい簡単だけど。

 祐介がUNOを用意し始める。大貧民になったからやめるって調子いいな。


「いやー、良かった。普通に受け入れられてるじゃん。明も珠希ちゃんも」


「クラスメイトに?」


「そう。もうちょっとお前のせいで!みたいに掴みかかってくる奴いるかと思ったけど、そんなことないし」


「どうだか。他のクラスや学年だったらわかんないぞ?賀茂と土御門には恨まれてるだろうし」


「それでも。二人が普通の学生として受け入れられてるのは、私も嬉しいよ。この前のは凄く衝撃的だったし、疑っちゃうのはしょうがないけど」


「そういう薫さんは大丈夫ですか?あの瑞穂さんと親戚に当たるわけですし……」


 祐介も天海も心配してくれるのはありがたいけど、天海は遠縁とはいえ同じ天海として注目されるからなあ。どうあったって話題にはなると思うけど。

 そこは俺たちも心配してた。四月の事件の後にもそういうのがちょっと増えていた。天海本家とは遠縁っていうことと、実家が那須にあるって知れ渡ったらすぐ鎮静化した。


「学校の人は瑞穂さんが裏・天海家の人って知ってるからそんなには。まあ昨日は道摩法師がどう関わってるのかって聞かれたけど。私も知らないから答えられなかったけどね」


「法師も最初は天海内裏って名乗ってたから、そうもなるか。ただの犯罪者と、道摩法師じゃだいぶ違う」


 たぶん一千年の間に法師が興した家が天海だと思うけど、ゴンにも聞いてないしそこら辺は特に気にしていない。

 ただ法師って世間的には呪術犯罪者でかつての都を落とした大罪人って認識だからな。陰陽師を実際殺してるし、かつての都を落とそうとしたのも事実。いくら晴明と仲間だったとしても、消えない事実はある。帳消しにはならないことはいくらでもある。

 どうしたって法師は好意的に見られないだろう。彼に殺された人の親族は許せないだろうから。


「でも、天海家って本家もそうだけど、現代で何かしたわけじゃないから。私も血縁からしたらだいぶ遠いってわかってもらえたし、私は大丈夫」


「そりゃあ良かった。薫ちゃんが学校辞めるってなったら味気なくなる」


「……祐介。天海を口説いてるのか?」


「ごめんなさい。そういう目で見られないかな」


「俺勝手に告ったことになって、勝手にフラレてんのかよ⁉︎失礼な、地元仲良し四人組が欠けたら嫌だなってだけだろ」


「私、住吉君とまともに会話し始めたのって今年に入ってからだよね?」


「わたしは地元ちょっとズレてるんですけど」


「細かいことはいいんだよ!今こうして仲良くしてるんだからさ!」


 天海が辞めたらミクが悲しむ。あとゴンもここまで鍛えたんだから、弟子が辞めたら気分を害するだろう。

 あの人たちの迷惑を被るのは俺たちだけでいい。天海は普通に生きてくれ。


次も二日後に投稿します。

感想などお待ちしております。

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