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陰陽師の当主になってモフモフします(願望)  作者: 桜 寧音
7章 神の縫い止めた災厄
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1−1−1 さて、九州へ

休校中の呼び出し。


「未来視ですか……。ハルくんも随分と色々な力を身に着けてますね?」


「まあ、初めてのことだったし意図的にはまだできないんだけどな」


 「神無月の終焉」と呼ばれる姫さんによるクーデターから四日。俺たちは昼過ぎに校舎の中を歩いていた。制服を着て、休校中なのに。今は日本も京都も陰陽師も大混乱だから全国の学校は臨時休校状態。会社などはやってる場所もあるけど、念のために休業している店も多数。

 妖や魑魅魍魎の数が増えたわけじゃないから、人類の脅威が増えたわけじゃない。むしろ魑魅魍魎の数は明らかに減っている。問題は呪術省が機能しなくなってプロの陰陽師の統制が取れていないこと。まあこれもすぐに姫さんが指揮を取って表面上は問題なく動いている。姫さんの指揮能力が高いのか、特に不満も出ていないらしい。混乱はしてるけど。


 まあ、トップがいきなり武力で挿げ変わったんだから混乱もするか。今まで信じていたものが根底から壊された人もいるんだろうし。世の中は姫さんが発表した内容の真偽を確認して大慌て。五神の遺体を利用していたことと、難波家が普通の人と異なるDNAをしているってことがわかったことくらいか。俺も見たことなかったけど、神と狐が混ざっていると染色体って螺旋の形はしてるけど、構造がかなり細かく、染色体もかなり太くて丈夫らしい。それであちこちに五芒星が見られるんだとか。

 今ではニュースを見ると俺たちの遺伝子が載っている。人間じゃないみたいだ。

 現状はそんなところで。今日俺たちが休校なのに学校に向かっているのには理由がある。校長先生に呼び出されているからだ。呼び出される要件はわかってる。どうやって誤魔化すべきか。ミクとも口裏を合わせているけど、誤魔化すべきか。


「んー。どうしよう」


「本当のことを話すかどうか、ですか?」


「正直話していいと思うんだよ。世間的には正義の難波、悪の土御門だし」


「わたしたちにとっても悪ですよ?難波に攻めてきた悪党じゃないですか」


「そりゃそうだ。それと、あの人たちには話しても問題ないと思うから、隠すよりはいいかなと」


「わたしは反対しませんよ。風向きが変わったのは良いことです」


 日陰者の難波が台頭する。静かに暮らしたかった俺としては微妙な気分だけど、土御門が大きな顔をするよりは良い。それで土御門も賀茂もダメとなると、立ち上がるには難波か天海を御旗としなければならない。で、先日の放送で天海家は元を辿ると難波家だとわかったわけで。そうなると俺か星斗が立ち上がるのが筋となってしまった。

 他にも陰陽大家はいくつかあるけど、安倍晴明正当後継者という看板は大きい。それだけで土御門が大きな顔をしてこられたんだから。陰陽師の始祖としての認知度を改めて思い知った。


「……ここまでAさん、いや道摩法師は視ていたんだろうな。じゃなきゃ四月の頃から俺たちに目をかけているはずがない」


「難波の真実を知っていたからでしょうね。わたしに優しかったのは、ハルくんの婚約者だから。難波の血筋で初めての狐憑きですし、納得です」


「でもなあ。何で過去視で法師の顔だけぼやけてたんだろ。ミクにはちゃんと見えてたんだろ?」


「はい。とても端正なお顔でしたよ?晴明様に比べるととても目つきが鋭い方でした。今度仮面を外してもらいたいですね」


「俺も気になる。何か意味があるんだろうか」


 映像で見てもぼやけてるんだよなあ。星斗たちはこの前素顔を見たらしいけど。難波に伝わる道摩法師そのものだったらしい。

 この前電話ですっごい怒られた。何やらかしたって星斗に問い詰められたけど、呪術省に侵入して麒麟の間から書物を盗んだだけで何もしてないんだよなあ。あとは道摩法師とも姫さんとも仲良くさせてもらってるけど。

 俺たちを指名したのは難波家の当主筆頭だったからだろうし。

 そうやって話していると校長室の前に着いた。ここに来るのは入学する前だから、随分と前のことだ。一般生徒はここに用事ないよな。何かあったら呼び出して来るの、生徒会だったし。

 三回ノックして、「どうぞ」と伏見校長に言われたので中に入る。ソファに座っていたのは伏見校長と俺たちの担任の八神先生。それと立ったまま大峰さんがいた。まあ、予想通りのメンバーだ。


「失礼します」


「休校中なのにすまないね、二人とも。かけてくれ」


 伏見校長に言われて、対面のソファに座る。ゴンたちは呼ばれたら実体化すれば良いだろ。

 まずは担任ということで見知っているからか、八神先生が問いかけてくる。


「難波。先日の天海瑞穂の発表。どこまでが事実なんだ?」


「それはもう、全部です。あの過去視を視たのなら、あれが幻術ではないとわかったと思います。TV局や新聞社に送った資料については俺たちも全部を確認していませんが、三家で交わした誓約書と、家系図については事実です」


「土御門は、安倍晴明の血筋ではないと」


「はい。彼らのDNA検査どうなりましたか?おそらく通常の人間と同じような染色体だったと思いますけど」


 二枚の写真が出される。一枚は父さんが出した染色体。もう一つは生物の授業で見る人間の染色体だ。

 もう調べてあったのか。ニュースでは言ってなかった気がするけど。まだ彼らの権力は残っているのか?


「こっちが土御門晴通の染色体だ。神の血は一千年くらいでは薄まらないようで、難波の血筋は末端まで人間の染色体とはかけ離れているようだ。今日中に、難波家の分家と元分家のDNAがニュースでも発表されるだろう」


「ものの見事に別ですね。多分俺たちも調べたらこれに酷似していると思います。そういや血液型知らないや。タマは?」


「わたしも知らないです。輸血が必要なほど大怪我をしたことありませんし」


 父さんたちのも知らない。既存の血液型に当てはめるなんてできないんじゃないかな。すごく希少な血液型のように認知すらされていないんだから。俺たちって大きな怪我をしても、陰陽術による治療でどうにかしてきたらしい。陰陽術の発展って素晴らしいな。逆に発展しすぎて俺たちの性質の発覚が遅れたんだから、どっちもどっちか?

 そんなことを考えていると、大峰さんがもう二枚の写真を取り出す。どちらもやはり普通の人間とは異なる染色体を写しているけど、そういうことだろうか。


「これ、ボクと狐憑きのDNA。すごく似てるけど、これも玉藻の前の影響かな?」


「でも父とは異なりますね。何というか、大峰さんのものは細い」


「そうだね。難波とは違う。君たちと六百年は離れてるらしいけど、ボクたち天海と君たち難波が本当に傍流なのかは疑問が残るね」


「そもそも一千年経ってるのに、神の血と思われる証拠が残っているこっちがおかしいんだと思いますけど」


「それもそうだけど。……呪術省の嘘を暴露したんだから、さらに嘘を重ねるような愚行をあの人がするとは思えないんだよね。だから、血に関することは全部本当でしょう」


 そう納得して大峰さんは写真をしまう。革命する側が嘘を言っても信用されないからな。そこら辺は気にかけてると思う。

 それにあの過去視は紛れもない本物だ。あとは状況証拠を出せばいい。それが俺たちの血だったりするわけだけど。


「こんな確認は序の口でね。本題は君が呪術省の後釜、仮称陰陽寮の実質的なトップに任命されたことだ。一応我々も呪術省の管轄でね。君をトップとすると組織編成を考えなければならない。それとも名代の香炉星斗にすべきか。そこら辺で今混乱が生じていてね。君たちからその返答がない」


 伏見校長が確認を取ってくる。まあ、元呪術大臣殿には頼れないよなあ。呪術省を陥落させて、詐称してきた相手だ。まだ呪術大臣の座にはいるけど、彼をトップとしておけないだろう。今諸々をやっているのは姫さんだし。

 俺たちも記者会見とか行っていない。やり方も知らないし、父さんにやれとも言われていない。こっちはまだ学生の立場なんだから。


「今は香炉星斗でいいと思いますよ。彼を瑞穂さんが補助してくれると思いますし。俺はまだ学生です。これ以上の緊急事態が起きない限り、学校を辞めて陰陽寮を率いるとかそういうことはしないと思いますが」


「そうかい?今が緊急事態じゃないと?」


「いえ。代わりがいますので。星斗ではどうしようもないと判断したら立ち上がるとは思います。けどまだ俺は学生ですから。瑞穂さんのように五神だったとか、そういう実績もありませんし」


「うむ。わかった。ではそういう意向だと伝えておこう。君がもし学校を辞めるのであれば、那須君の手綱を握る者がいなくなってしまう。予定としてはこのまま大学まで進んで、その後に陰陽寮のトップに立つつもりかな?」


「何事もなければ、そうなると思います」


 難波の当主になりたいんだけどなあ。もう無理だよな。ミクを一緒に呼んだのは俺とセット扱いされてるからか。狐憑きということを伏せてもらってるし、俺が抑える前提で色々優遇してもらってるし。俺が辞めるとなると、ミクもどうするか聞きたかったんだろうな。

 俺が辞めたらミクも辞めそう。その辺りは後でミクからちゃんと聞いておこう。


次も三日後に投稿します。

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