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3-2 文化祭準備

女子の衣装合わせ。


「眼帯少女とか、ニッチ過ぎない?」


「この世の創作物には女体化という便利な言葉がある。あの独眼竜政宗すら女にする日本なんだよ?ゲーム会社やラノベがやってるんだから私たちがやったって問題はあるまい」


「えーっと、ボーカロイド?Vチューバー?」


「ただのゲームキャラ!コスプレ専門店で買った合わせ物!」


 女子生徒しかいない教室が姦しいです。皆して衣装を持って着てみたり、服の上から合わせてみたり。ウィッグまで持ち出して、メイクもして着ていきます。すっごくお金かかっている気がするんですが、予算的に大丈夫なんでしょうか。

 薫さんも何も言わずに楽しんでいるところを見ると大丈夫なのでしょう。文化祭って凄い宣伝効果があるみたいですからね。わたしたちは来ませんでしたけど。わざわざ文化祭のためだけに京都に来るのは結構な労力ですから。


 見たことのないような服装ばかりでとても華やかです。わたしがサブカルとかそういうことにあまり詳しくないからでしょうけど。漫画や小説は読んでも、ラノベやアニメ、ゲームは全然ですからね。ハルくんもですけど。

 息抜き程度ならいいんですけど、陰陽師としての勉強を優先していたらドラマとか見る余裕なかったなあと。それだけこの学校に入ることに必死だったからですが。結果としてハルくんと一緒に高校生活を送れているのでいいんですが。


「賀茂さんも、こういう明るい服が良いんじゃない?黄色とか新鮮でいいかも」


「賀茂さん、例の試合で和服着るんでしょう?ならこれで良いんじゃない?ちなみにモチーフはヘンゼルとグレーテルの、グレーテルね」


「何故わたくしがそれに則らなければならないのです?いくらクラスの出し物とはいえ、制服ではダメなのですか?もしくは、クラスTシャツとか。文化祭中は基本アレを着るのでしょう?」


「そうしたらコスプレ喫茶じゃないよ!」


 うーん。世間知らずっぷりがハルくんと同レベルというか。陰陽師大家の人たちは一般常識が若干欠けてしまうのでしょうか。それよりも大事な使命があるとかはわかるのですが、ちょっと心配になってしまいます。

 調理班で料理する時とか、できた料理を運ぶ人がクラスTシャツならわかるんですけど、接客する人間がコスプレをしていないのは。もしかしてあの服を着るのが恥ずかしいんでしょうか。

 調理班と言ってもわたしは表に出たかったのでこうして衣装を着る側に来ていますが。ハルくんの要望でもありますし。瑠姫様からは免許皆伝を言い渡されているので、あっちで料理をすることもありません。調理室は何度か借りていますし、今回作る料理は得意なものばかりです。瑠姫様の配慮でしょう。


「賀茂さん可愛いんだから、こういう普段はしない服したら男子が食いつくんじゃない?男子って単純だし」


「文化祭でカップルになる人多いらしいからねー。私も彼氏欲しいー」


「賀茂さんってそういう『イイ人』いないの?気になるなー」


 あれ、いつの間にかコイバナになっています。それは相手が誰であっても気になります。薫さんとはしたことがありませんし、瑠姫様は相談に乗ってもらっても瑠姫様自身の恋については聞いたことがありません。

 他にわたしの周りの人となると姫さんと大峰さん、マユさんにキャロルさんですね。姫さんはAさんを、大峰さんは星斗さんを好きなことは見ていればわかります。あのお二方はわかりやすいですから。大峰さんのことは意外でしたが。不毛な恋なので応援もしませんし、わたしって星斗さんのことはたまに会う親戚の人という認識しかないので良い人かどうか判断できないというか。


 星斗さんとハルくんを比べたら絶対にハルくんを選ぶので。というより誰を比較に出されてもハルくん以上の誰かなんて考えもしませんけど。カッコイイ俳優さんとかモデルさんとか、歌手の人とか見てもハルくんの方がカッコ良く見えるんですから。それを言ったら瑠姫様に白目で見つめられましたが。

 マユさんともキャロルさんとも詳しく話していないので、そういう人がいるのかもわかりません。この後メールでもしてみましょうか。海外の方の恋愛事情とか気になります。

 そんなことを頭で纏めていると、賀茂さんは若干顔を伏せながら耳を赤くしています。それを見逃す恋する乙女たち(年頃の少女)ではありません。


「その反応、いるね⁉」


「誰ダレだれ!私たちも知っている人⁉」


 一斉に詰め寄るクラスメイトの皆さん。さっきまでやっていた作業を全部投げだして賀茂さんに詰め寄ります。恋という力の原動力を見た気がします。薫さんまで詰め寄っていますが、わたしや数人は遠巻きに眺めています。

 詰め寄られて狼狽している賀茂さんの表情は恋する乙女そのものです。うーん、難波の地に攻め込んだ土御門と懇意にしている賀茂さんがあんな表情をするのはちょっと複雑な気分です。彼女自身が何かしたわけではないので、ちょっとは見逃そうと思いますけど。


「何でそこまで気になるのです⁉そもそも言ってどうなると?」


「興味本位だゴラアアアァ!」


「こっちは毎日勉強家事部活動よくわからない騒動実地研修で癒しがないんだよ!私たちだって恋に生きたい十六歳なの、わかる⁉」


「あなたたちのその熱意、怖いです!」


「さあ、吐け!」


 あれは言うまで離さない感じですね。聞き耳立てていればいいでしょう。詰め寄っていない皆さんも同じようにしているみたいです。やっぱり賀茂家の御令嬢で霊気の量も髪や瞳が変色しているという事実から、陰陽師としても実力がある人として興味があるのでしょう。

 その皆さんの狂気に負けて、賀茂さんはぽつりぽつりと、語り始めます。


「一方通行、ですから。その人と恋仲になることはないでしょう」


「ええー、気になる!憧れの人とか?」


「憧れの人ではあります。婚約者ですけど、一度として恋慕の言葉など告げられたことはないですから」


「……ええええええぇぇぇ⁉」


「婚約者⁉いや、でも!賀茂さんの家だったらさもありなんっていうか!」


「皇族の方以外でこの現代日本に婚約者って存在したんだ……!」


 周りの方々は騒いでいますが、はい終了。一方通行かどうかは知りませんが、相手がわかったのでどうでもいいです。それにその相手に懸想していると知って、男性を見る眼がないなと思っただけです。

 賀茂の家と釣り合いが取れるのは土御門と難波だけです。政治家とか陰陽師の家以外で考えるともう少し居そうですが、彼女は賀茂家本家の御息女。たしか弟さんがいるので、本家は弟さんに任せるとして。

 難波は賀茂と交じり合うはずがありません。基本トップ同士の結婚を前提として、難波のトップたるハルくんはわ、わたしの、婚約者ですから。星斗さんも違うので、難波の末端の家で結婚する人は除外します。


 そして難波の慶事で異性同士であるからと婚約関係になったハルくんとわたし。それと同じ構図でしょう。同い年でどちらも良家のトップで、異性同士。きっと産まれた時から決まっていた関係なのでしょう。賀茂さんたちの家ではよくそういう事例がありましたから。

 賀茂静香さんの婚約者は土御門光陰で、懸想している相手。姫さんが言っていた深い仲というのはこういうことですか。

 もうあっちの盛り上がりはいいので、衣装合わせに戻ります。さっさと着替えて、裾とかを確認します。はい、問題なさそうですね。


「那須さん、こういう空色の服も似合うなあ。髪の毛も瞳の色も明るいから、全体的に色味が統一されていて映えるんだね。どこか苦しい所とかない?」


「はい、大丈夫です。どこも問題ありません」


 わたしの衣装は「不思議の国のアリス」に出てくるアリスの格好です。空色のエプロンドレスをして、白いニーハイソックスと白いスニーカーを履いて、頭にも白いカチューシャをつけています。

 何故か赤い本と懐中時計も付属品として渡されましたが、これはアリスではなくウサギが持っていた物ではないでしょうか。このあべこべ感も文化祭ならではと思って指摘しませんが。


「那須さんスタイル良いからおっかなびっくりだったけど、サイズ合ってて良かった~」


「そ、そうですか?そこまで突出しているわけではないと思いますが……」


「3サイズ聞いて絶望した女子がどれだけいたと思う?」


「しょうがないよ……。珠希ちゃん、トランジスタグラマーだから。珠希ちゃん、もう少し自分の身体の事認識してね?」


 賀茂さんの輪から戻ってきた薫さんがわたしの両肩に手を乗せながらそう言います。たしかに中学時代に一気に肉付きが良くなったという自覚はありますが、わたしなんてまだまだだと思います。

 だって、金蘭様を見た後ですから。あの方の黄金比とも称せる肉体を見たら、わたしの身体なんて貧相の一言でしょう。皆さん金蘭様を知らないからそんなことが言えるんです。


「難波君のは同じ世界観の帽子屋さんにするんだっけ?」


「見に来る人にもわかるようにね。隣にいることが多いだろうし。でも楽だったよ?スーツとシルクハットとセーターとステッキだけだったから。難波君も体形的には痩せてるし、合わない服とかなかったからね」


「明様とお揃いっていうオーダーを通してくれてありがとうございます」


 そう、できるならハルくんと隣にいて違和感のない服が良いとお願いしていたら衣装班の人たちはそれを叶えてくれました。ちなみに祐介さんもお揃いの世界観ということでチェシャ猫に。猫耳と尻尾を見てハルくんが爆笑していました。


「ん~?別に分家としての体裁を守らなくていいんじゃない?明様って、お堅いじゃん」


「そうだよ。私たちと一緒にいる時はくん付けなんだから、本当に必要な時だけ様付けで良いんじゃないかな」


「そうでしょうか……?」


「というか、恋人同士で様付けとかしてるとそういうプレイなのかと勘繰っちゃう」


「……え?」


 衣装班の佐々木さんにそう言われて、バッチリ目を合わせてしまいます。隣にいた薫さんはあちゃーという表情で口元を抑えています。


「……気付いて?」


「いや、あれだけイチャついていて気付くなって方が無理でしょ?今回の衣装だってお揃いにしたいって言われてまあ、そういうこともあるよねーって流してたけど」


「私は誰にも言ってないからね?でも二人とも、場所も考えずに幸せオーラ全開にしてたらわかるよ……」


 薫さんには夏休みの段階で伝えてあります。ハルくんが聞かれたので答えたとは言っていましたので、そこは気にしていません。ですが、クラスの皆さんに気付かれていただなんて……。


「そんなにわかりやすかったですか……?」


「「「うん」」」


 クラス中から肯定の返事が。さっきまで賀茂さんに質問攻めをしていた人たちもこっちに注目しています。これを見て逃げようとしている賀茂さん。標的がわたしに移ってしまいました!


「那須さん、いつから付き合ってたの?幼少期?」


「どっちからの告白?初デートは?」


「ずばり、好きになった理由は?いやでもわかるよ?成績良いし、呪術の才能もあるし、顔立ちも整ってるし、背も平均よりは高いし」


 皆さんが詰め寄ってきます。わたしの身体中の体温が上がって、特に顔と心臓が茹っているのがわかります。こんなの答えられるわけないじゃないですか。薫さんはその質問内容をある程度知っているのに、ハイエナには近寄らない方が利口とばかりに離れていきます。

 さっきまではそのハイエナの一員だったのに。薫さんに裏切られました。そしてハイエナの皆さんの手が何故かわさわさとしています。


「いやーーー!助けて明くーん!」


「そうやって彼氏に助けを求めちゃうのも可愛いー!」


「なんだこの可愛い生き物は!もみくちゃにしてしまえ!」


 その言葉の通り、もみくちゃにされるわたし。それは瑠姫様が確認のために教室にやってくるまで続けられて、根掘り葉掘り聞かれてしまいました。

 そのことをハルくんにも言ったのですが、しょうがないと言って頭を撫でてくれました。その行動で更に女子たちが黄色い声を上げて、男子からハルくんがフルボッコにされていました。


「お、お前!那須さんと付き合ってたのかよ⁉」


「仲の良い分家の子って言ってたじゃねえか!」


「者共、やってしまえ~」


 フルボッコにしようとする男子たちを煽り立てる祐介さん。なんなんでしょうか、この光景は。その様子を見て女子たちは呆れかえっていました。


「ウソ、気付いてなかったの……?」


「男子って子どもねえ。というか、夢見がち?」


「那須さんはあんな素敵な彼氏で良かったねえ」


 そう言って抱きしめられたり撫でられたり頬擦りされたり。あれ、わたしの扱いがまるでゴン様と同じなんでなんですが。

 ハルくんが褒められたのはいいんですが、なんか釈然としません。




ラブコメ書くの楽しい……。これだけ書いていて今さらそんな感想を覚えるとか。


次も三日後に投稿します。

感想などお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] もっとイチャラブしてください! 口の中が甘ったるくなっても構いません! 学生っぽさが出ていてほっこりします。 [気になる点] チェシャ猫では?チャシャ猫になっています。
[一言] 加茂の好きな人わかった瞬間の冷め具合が面白すぎる
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