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1-1-1 新学期と準備

新学期初めての登校。


 九月一日。夏休みが終わった。俺とミク、天海は寮の部屋の掃除や買い物などもあったので夏休みが終わる三日前には京都に戻っていた。がしゃどくろがもたらせた被害とかの状況も知りたかったし。星斗から何となくは聞いてるけど、実際に見るのは違うし。

 学校には全く被害がなくて良かった。聞いた感じ死者は学校で出てないらしい。街中はがしゃどくろと五神が暴れて酷かったけど。復興には大分時間がかかりそうだ。京都の職人たちは仕事がとてつもなく速いが、今回は大天狗様の時と同じくらい被害が出ている。それだってまだ残っているのに、また建物や道はかなり壊れてしまっている。

 京都から人口の流出が始まっているらしい。大きな事件が起きすぎだし、純粋に危険だろう。生活がままならなくなるのもわかる。まだ東京に行った方が安全だ。

 朝のHRが始まる前に、祐介が席に近付いてきた。結局夏休み丸々会ってなかったから、一か月ぶりに会う。


「よう、明。珠希ちゃんに薫ちゃんも。久しぶり」


「本当に久しぶりだな。借金はなくなったか?」


「借金言うなよ!前借り、前借り」


 意味的には同じだろうが。それの返済で夏休み丸々バイトに充てたってことになってるのに、何を今さら取り繕ってるんだか。学校側にもバイトしてること伝えてあるんだし、学生が奨学金借りたわけじゃないんだぞ。

 そういや祐介って奨学金借りているんだろうか。そういう話はしたことなかった。


「祐介、奨学金って借りてるのか?もし借りてるなら借金三昧じゃん」


「借りてるけど……。俺が苦学生ってわかった?」


「家庭の事情でそうなってるのはわかるけどよ。それ言ったら天海だって奨学金借りてるだろ?」


「あ、うん。でも返済しなくていい奨学金だから負担じゃないよ?」


「そんな魔法のような奨学金が⁉」


 日本人なのに魔法とか言うなよ。まあでも、陰陽術のような奨学金……。うん、意味が分からないな。

 それにしてもそんな魔法のような奨学金制度があっただなんて。そんなの誰でも喉から手が出る代物だろうけど。返さなくていいなら俺も欲しい。


「プロの試験に合格すれば返さなくて良くなるんだって。私夏の試験に受かってライセンス貰ったから……って、住吉くん⁉」


 祐介が崩れ落ちる。なるほど。それは俺も祐介もダメだ。俺たちはプロの試験を受けられない理由がある。呪術省に目を付けられるわけにはいかないからな。


「それはダメだ……。せめて二十歳にならないと、親に連絡が行く……」


「成人は一応十五歳なのに、そういうのは以前の二十歳のままだからな。まあ、そんな早くから酒とかタバコとか手を出させないためだろうけど」


「投票権は十五歳からあるクセによ~。こんなの成人でもなんでもねえよ!」


「仕方ないですよ。わたしたちは今の年齢だと働き始める人は少ないですし、保護者の支援がないと学校にもまともに通えませんから」


 ぶっちゃけ元服に合わせただけだろう。成人したからって何か劇的に変わることなんてほぼない。成人の年齢が高かった時はお酒とかタバコを飲むことができる年齢と同じだったのでまさしく大人の仲間入りだったらしいが、こんな十五歳で大人ですと言われてもそんな実感は全くない。

 だって周りを見たら子どもばっかだし。世間的には高校生って大人扱いだからな。それなのに色々と書類には親の署名が必要だし。俺たちだけでできることって少ないんだよな。祐介が苦労する理由もここだ。


「まあ、頑張れよ。苦学生で成人の祐介君」


「ああ、頑張ったるよ。まずは文化祭だな」


「月末にあるからな……。でも気楽なもんだろ?中学の時の文化祭なんていつの間にか終わってたし」


「サボってただけだからだろ……。俺たち二人で屋上行って先生の講義に耽ってただけじゃん。中学の文化祭で何やったかなんて覚えてないだろ?」


「全くだな。何にも覚えてない。ゴンの授業は覚えてるぞ?」


 中学でも一年に一回文化祭があったが、ちゃっちいものだったという覚えしかない。私立だし地元ではかなり有名な学校だったが、学生募集のためのイベントというイメージしかない。

 その事実に、中学でも同じクラスだった天海が苦笑していた。


「一回も姿を見かけないと思ったら……。先生もダメですよ?」


 天海が俺の足元目掛けて言うが、残念ゴンは今そこにいない。ある事件を調べるために外出中だ。銀郎にはそういうことできないし、こういうことさせるならゴンが一番だ。気配絶てるし、大抵の陰陽師になら勝てるからなあ。

 というわけで天海を辱しめよう。


「ゴン、街中にいるからそこに居ないけど?」


「…………え?」


「ちょっと調べごとをさせてる。……狙われてるのはプロだから大丈夫だと思うけど」


「あぅ……」


 天海がミクに抱き着いて顔が赤いのを隠そうとしている。隠せてないけど。ミクの背は小さいから隠れきれないし。


「よしよし。でも明様。今回はちゃんと文化祭参加するんですよね?」


「するよ。桑名先輩の所には確実に行くだろうし。あと、なんか星斗が大変かもしれないって言ってたけどなんのことだ?楽しみだか楽しいだかって言ってたけど……」


「さあ?普通の文化祭と何か違うのでしょうか?」


 他の学校の文化祭とかも行ったことがないのでよくわからない。二人して首を傾げていると、ミクに抱き着いていた天海が顔の赤さを元に戻してこちらを見ていた。


「え?難波くんも珠希ちゃんも香炉星斗さんのこと知ってるの?」


「知ってるっていうか、分家の兄貴分だけど?」


「え、えぇ⁉土御門系じゃないの!てっきり星斗さんって土御門系かと……」


「あいつ、有名なの?」


 その返答をする代わりに天海が自分のバックから一冊の雑誌を取り出す。その表紙には「陰陽師マガジン」というタイトルと、モデルみたいにカッコつけている朱雀の姿が。そういうのいいから陰陽術の仕事しろよ。

 天海はいくつかのページを飛ばしていって、見付けたのか目的のページを開いて見せてきた。


「ここ!安倍晴明の血筋であり、呪術省の一押し呪術師だって。四神も注目してるって結構なページ割かれて特集組まれてるんだよ」


「タマ、夢月さんに連絡。金は俺が出す」


「わかりました」


 ミクが携帯電話を出して夢月さんに連絡をする。あとで星斗のことはからかってやろう。アイツ、特集組まれるようなことしたか……?

 いや、めっちゃしてるな。大天狗様が来た時は大峰さんやマユさん、あと白虎と一緒に迎撃したんだっけ。がしゃどくろの時も迎撃に参加したって言ってた。それで五体満足で帰ってるんだから、注目もされるか。


「広告塔にされてるなあ……。本人的にも快く思ってないだろうに」


「難波の家ってこういう呪術省に協力するのはNGみたいな部分あると思って、てっきり土御門系かと……」


「その認識で間違っていないけど、星斗は立場上仕方がないだろうからなあ。今血筋の現役で一番力がある陰陽師だし」


 それもこれも土御門の血筋が不甲斐ないからだ。あと賀茂。なんかこの記事に次の四神の最優良株とか書かれてるけど、アイツきっと四神にならないだろうな。夢月さんと長く一緒にいるために地元に戻りたいだろうし。

 まあ、星斗のことは良いや。また弄る材料が見つかったのは愉しみだけど、兄貴分がカッコつけてる写真とか見たくねえし。本分は何なんだよって言いたくなる。写真見る限り星斗も嫌々撮られてるけど。天海とか見て気付かないものか。


「そういえば薫さん。ライセンスは何段を取られたのですか?さすがに四段は取っていないでしょうけど……」


「三段。風水を見せたら驚かれたけど、やっぱり実戦がね……。それに知識もまだまだプロには足りないよ」


「それでも高校一年生ってことを考えたら十分凄いですよ」


 大学生が卒業と同時に貰えるのが二段だからな。そこら辺の大学生よりもよっぽど凄いってことだ。誇っていい。

 朝のHRが近付いて八神先生がやってきたことで解散になった。そういえば賀茂もプロの試験を受けたのだろうか。プライド高そうだから受けてそう。でもあの大鬼程度じゃなれても四段な気がする。


「さて、連絡事項だが。最近お昼に陰陽師が狙われる事件が起こっている。通称『かまいたち事件』だな。まだその襲われた陰陽師の共通点がわかっていないので、計画的なものか偶発的なものかわからないので注意しろ。無駄な外出は避けるように。犯人の特定がいまだにできていないからな」


 八神先生が言っている事件は、今ゴンに調べさせているものだ。妖のかまいたちが起こすような、首からいきなり斬られていたり、心臓を一刺しされていたりする事件。これまでで三人が犠牲になっていて、共通点は被害者がプロの陰陽師ということと、事件が起こる直前強い風が吹いたという証言のみ。

 俺たちが狙われていないか。それの確認も込みで今ゴンが確認中だ。




次も三日後に投稿します。

感想などお待ちしております。

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