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4-3-2 夏空に響く、曇天の花火

見誤り。


「それにしても子どもに負けるとは。見込み違いだったか?」


 リ・ウォンシュンが周りを見渡すと、アキラもタマキもすでに戦闘を終わらせていタ。やっぱり二人ともワタシの組織に欲しイ。あの二人も異能犯罪者のリストで見たことのある人物だっタ。

 ただの子どもじゃ倒せそうもない相手だったのニ。JAPANがおかしいのか、それともあの二人が突出しているのカ。本当にあの二人、ただの学生なのかしラ?今度ちゃんと調べ直しましょウ。難波っていうのが凄い家なのか、彼らが特殊なのカ。

 でもこの社の結界を張っているのが難波の御当主とあと二人みたいだから、やっぱり凄い家なのかもネ。


「これで三対一ネ?」


「それを貴様のプライドが許すのか?あれは現地の子どもたちでお前たちの部下じゃないだろう。正義の味方が子どもに頼るのか?」


「あいにくワタシも子どもだもノ。……まあ、デモ?これはプロとしてのワタシの仕事だワ。彼らにはちょっと見学していてもらいましょうカ」


 挑発に乗るのも癪だけど、実際プロとして戦場を渡り歩いてきたプライドというものは確かにあル。物心着く頃から戦ってきたし、まだまだ余裕はあル。

 それに彼らにリ・ウォンシュンの相手は厳しいだろうシ。子どもとしては破格の力だとしても、目の前の男は中国でもトップ層の異能者。学生に無理をさせるわけにもいかないもの。


「それでこそだ、正義の味方。では、続きを始めようか。死者変生(キョンシー)


 リ・ウォンシュンが札を地面に叩きつけると、辺りの森が騒がしくなル。すぐに対応できるように警戒していると、猛スピードでこちらにやってくる人の反応ガ。いや、でも死んでル?頭には札が貼られているけド。

 キョンシーって、動く死体の妖怪だったかしラ?あの死体、人間のものネ。腐ってはいないようだけど、まさか本物を使うなんて悪趣味。


「結局彼らを巻き込むなんテ!」


「悪者の言葉を信じるとは、正義の味方失格だな。こちらにはどうしても達成したい目標がある。そのためには手段は選ばんぞ?」


 アキラもタマキも呼び出した式神と一緒にキョンシーたちの対処を始めル。あの本物の死体を隠しておくために随分早くからこの土地に潜入して死体を運び入れていたのネ。下準備に余念がないワ。

 でもこのキョンシーたち、結局は人間の力しかないみたいだからそこまでの脅威じゃなイ。死んでる人間を生き返らせることはできないもノ。死者をそのままに生き返らせる奇跡なんて、この世界に存在しなイ。死は死だかラ。

 それをアキラたちもわかっているのか、ハンドガンや術、あの生き物たちに対処させていル。人間と同じように首を切るか心臓を穿つか、札を剥がせばいいみたイ。対処はだいぶ楽な方ネ。数が厄介だけド。

 ワタシも、彼らに習ってみましょうカ。


「The Winter’s Tale」


 今回切り取るのは一側面。そこだけで充分だかラ。愛憎劇を産み出すよりも、人を食い殺した熊さえ現れてくれればいイ。キョンシーも元は人だし、活躍してくれるでしょウ。

 現れたのは三メートル近い茶色で屈強な熊。人食い熊のイメージ通りに現れて、それが周りのキョンシーたちを蹂躙していク。殺したてではないからか、食べていくことはないけド。

 もう間もなく、このキョンシーの群れもどうにかできそうネ。そして死体を操るということからこの男の目的もわかったワ。


「ダッキを生き返らせて、世界を変えようとしているノ?」


「ああ、その通りだ。彼女なら世界を堕とすこともできるだろう。生前彼女は一人だったから失敗した。今度は協力者がいれば失敗するはずがない」


「……身体はなくて、魂だけのようだけド?それで成功するの?」


「身体なんぞ、貴様のものを器にしても構わない。必要なものは妲己という魂と本質だ。それに魂から徐々に身体を変質させることもあるだろう。むしろ最初から妲己という存在が確定した状態より、いささか不完全の方がこちらの言うことを聞いてくれる。好都合だ」


「妲己も道具としか思ってないのネ……」


 その発言に、結局は犯罪者かと吐き捨てル。いくら悪しき存在だとしても、命を道具扱いするのはあってはならないコト。意思はそれだけで尊重されるべきことなんだかラ。そして悪に代わってから裁けばいイ。

 まあ、そういう人間だっていうのは街中で被害を出している連中を切り捨てている時点で分かっていたけド。こういう悪を見逃せないから今の組織に入ったんだシ。この男はここで失敗してもまた別の場所で必ずやらかス。ここで絶対に止めないト。


「世界を陥落させた程度で、世界のテクスチャが変わると思ってるノ?」


「変わるさ。人間というのは地球に与える影響が大きすぎる。その人間が粗方死滅すれば世界は流転せざるを得ない」


「第三次世界大戦でも勃発させるつもリ?」


「そうせざるを得ないさ。妲己という宝を求めて皆が奪い合う。世界を騙しきることだってできる。今の科学技術は凄いらしいな?地球を何度も滅ぼす火力があるらしい。地球が壊れない程度にこちらでコントロールして争ってもらい、テクスチャを裏返す。人類が滅亡寸前まで逝くということは有史以来初めての出来事だろうからな。そんな非常事態になればこんな偽りの世界でもさすがに剥がれるだろう?そして私は行く。世界の裏側にある楽園に」


 この男の目、淀んでいル。今まで見てきた犯罪者とも一味違うというか、絶望を背負っているというカ。何が彼をそうさせたのかわからないけど、まるで人類全体へ、そして世界へ復讐しようとしているようにしか見えなイ。

 そうさせてしまった理由は後で捕まえた後に問い質せばいイ。今は、その過程で犯した罪を清算させるために、そして人類を守るためにこの男を止めなければならないということだケ。


「喜べ、少女。貴様は世界の者共から求められる妲己に作り替えられる。そのための贄だ。世界の頂点に立てるなんて、光栄なことだぞ?」


「全く嬉しくないワ。そこにワタシの意志はないじゃなイ」


「ないな。だからこそ、貴様には世界の真実を見させられずに残念だ」


 キョンシーが全滅する。アキラたちもワタシの後ろに来て、それぞれの得物をリ・ウォンシュンに向けた。


「あの程度の児戯じゃ、このぐらいしか時間稼ぎができないか。そんなにそちらの戦力も削げなかったらしいな」


「投降しなさい、リ・ウォンシュン。この二人もかなりの実力者ヨ。あなた一人じゃ結果が見えていル」


「結果が見えている?まだこちらの手の内も全て明かしていないのに?……丹術士だと、見誤ったのが貴様らの敗因だ」


 その言葉の後、いきなりワタシたちの身体が地面に押さえつけられル。立っていられるのは呼び出した熊と、アキラたちが呼び出した狼と猫だケ。身体が全く動かなイ……⁉

 それぞれ呼び出した存在に身体を引っ張り上げさせるが、それでも一切動かなイ。こんなこと、丹術で出来るはずがなイ……!地球の重力を、丹術や魔術では操れないはずなのニ!


「いつ丹術士だと言った?そんな低次元で物事を語るな。金縛りに耐えられるのは神に等しい者か、身体に魂がない存在だけだ」


「金縛リ……?」


「我が名はリ・ウォンシュン。仙人の教えを受け、神通力に目覚めし者。神の領域にも辿り着けない凡俗が、我が覇道を邪魔立てするな」




次も三日後に投稿します。

感想などお待ちしております。


あと、明日から昔書いた作品を投稿しようと思います。特に直さず投稿するだけなのでこの作品の進行が遅れるということはありません。

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