表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1

『狂気の沙汰ほど面白い。

 le chaos folie Online、7月25日正式オープン!』


どこかで聞いたような名言を織り交ぜたキャッチフレーズ。

けれども画面を流れるPVは、驚くほどまともだった。


『五感の完全再現!現実よりも美麗なヴァーチャル!NPCは最新の高性能AIを積み込み!時間加速は5倍!』


PVと共に次々に流れる売り込み文句だが、時代と共に技術は進み、ゲームと言えばフルダイブ型のVRが当たり前となった昨今では別にそこまで珍しくもない内容だ。


「時代モチーフは中世ヨーロッパ。剣と魔法があるファンタジーMMO。種族も・・・うん、王道ばっかり。レベル制でステータスあり、さらにスキル制による補正もありのハイブリット型。行動によっては称号が付くこともあると。戦闘系にも生産系にも随分、力を入れてるよねぇ。開発費、いくらだろ・・・。」



『le chaos folie Online』



略してLFO。フランス語で、混沌と狂気。

どこもかしこもLove&Peaceを謳う昨今では実に珍しいタイトルに惹かれて、クローズαから参加したのは半年前の話。死んだらリポップしないNPCに、一定時間でも戻らない壊れたオブジェクトや地形、リアルタイムに進む世界観に刺激され、暇つぶしのつもりが、気が付けばトップ組と呼ばれるほどに没頭してしまったゲームだ。


当然、正式オープン開始直後にはスタートダッシュをかける所存である。



「・・・ふふふ。夏休みの宿題は全て終わらせた。正式サービスの情報も可能な範囲で収集済み。とりあえず、キャラクリエイトを終わらせてこよう。」


サービス開始まではまだ1日あるけれど、キャラクリエイトは今日のお昼から行うことができる。その後はチュートリアルサーバーで初期スキルやステータスを色々と試せるらしい。クローズβとの変更点は細かなものばかりで、戦闘スキルに大きな変更はないらしいけど、確認作業は大事だよね。なにより、1秒でも早くプレイしたい気持ちが抑えきれない。


「トイレもOK。水分補給もバッチリ。わん太、とりあえず17時までログインするよ。時間加速は5倍だから・・・6分前にアラームをお願いね。その他の設定はいつもの通りに。」


『指令を認識しました。コンディションチェック、オールグリーン。ダイブインを開始致します。』


最新のVR装置には高度な人工知能が搭載されていて、プレイヤーの体調管理だけでなく、現実世界の監視をかなり高度なレベルで行ってくれる。火事や地震などの感知は当然のこと、誰かが呼んでいたり、玄関のチャイムが鳴っても教えてくれる。もちろんスケジュール管理もバッチリだ。ちなみに、わん太とは、私のVR装置に搭載された人工知能の名前である。


そんなことをつらつらと思っているうちに視界はブラックアウトし、ハッキリとした意識だけがふわふわと浮かび上がってくる。


肉体を置き去りにして、自分の魂だけが別世界に飛んでいくようなこの感覚。

私は、結構好きだなぁ。



『ようこそ、le chaos folie Onlineの世界へ。キャラクタークリエイトにあたり、サポートをお付け致しますか?』


おっと。相変わらず、読み込み早いね?


「狐耳で巫女風の美少女NPCをお願い。」


『・・・ご要望のサポートキャラクターが存在しません。最も条件に近いNPCを雇用し、サポート用AIをインストール致しますので、少々お待ちください。』


機械的で無機質な音声に答え、とりあえず最高の美少女を要求しておく。

・・・いや、別に他意は無いのよ?


最近では現実の姿を投影するリアルモジュールを使用するのが主流であり、キャラクリエイトをする人はほんの一部になりつつある。遺伝子操作やら整形やらで、みんな現実でも自分好みの容姿をしているからね。けれど、一からキャラを作り上げるつもりならば、サポートNPCは必須なのだ。なぜなら、キャラクリの自由度を売り文句にするゲームでは、設定項目は、ウインドウでは表示しきれないほどに多いのが当たり前。また、初期の種族、職業、スキルなどに関する情報も呆れるほどに多い為、プレイヤーの要望や質問に対して要点を絞って答えてくれたり、バランスのおかしい箇所の修正を申し出てくれるサポートNPCが必須なのだ。


実際、一人で作成するよりもサポートNPCをつけたほうが、速い上に完成度が高く、満足できることが多い。そしてせっかくサポートをつけるんだから、狐耳で巫女風の美少女を要求するのなんて、普通でしょ?


『お待たせ致しました。これよりあなた様のサポートを担当させて頂きます、ミーナと申します。よろしくお願い致します。』


「うん。よろしくね、ミーナちゃん。」


おぉっと、さすがLFO。美少女のレベルがとても高い!


『さっそくですが、キャラクタークリエイトを開始致しますか?』


「その前に、ミーナちゃんの口調設定を変更できるかな。んー、近所の親しいお姉さんと接する感じにお願い。あと、表情がもっとあったほうが嬉しいな。明るくて元気な娘が好みだよ。」


『承りました。思考パターンを検索してロード致します。

 ・・・・・・・・。

 お姉さん、ロード完了だよー!こんな感じでいいかなぁ?』


うん、かわいい。見た目も14歳くらいだし、最高だね!


「うん、ばっちり!改めてよろしく。」


『こちらこそ、よろしくですお姉さん!』


「それじゃあさっそく、キャラクリのサポートをお願いね。」


『はーい、任せて!ベースにはリアルモジュールを使う?それとも、LFOのモデルアバターから選択する?』


「モデルアバターを見せてもらえるかな?タイプは、華奢でかわいい感じの娘をお願い。」


『・・・お姉さん、鏡みたら?リアルモジュールでも華奢でかわいいと思うよ?』


そういう問題ではないのだよ、ミーナ君。私は、【自身の分身としてのアバター】を作成するのではなく、あくまで【自分好みのキャラクター】を作成したいのだ。見た目が好みなキャラを好きなように弄り、そして自分好みの女の子に成長させたいのだよ!

・・・あぁ、想像するだけでもうたまらないねっ!


「と、いうわけでリアルモジュールは使うつもりないよ。対象のモデルアバターを全部一気に表示できる?」


『う、うん。わかった。えっと、それだとここからこのあたりまでかな?表示するね。えいっ!』


ミーナちゃんの掛け声と共に、華奢でかわいいモデルアバターがずらりと出現する。

八重歯がかわいい小悪魔、おっとりした見た目の天然娘、守ってあげたくなる儚い美少女、笑顔が似合う天真爛漫な美少女などなど選り取り見取りである。


昔の遊郭みたいにずらりと並んだ美少女たちを眺め、好みの女の子を探して歩く。

こんなにもレベルの高い遊郭なんて、存在しなかっただろうけどね!


あぁ、この子もかわいいなぁ。でもあっちの子もかわいかったなぁ。あ、この子は髪の色を薄い青なんかにしても似合いそうだなぁ。こっちの子はワンピースが似合うかな?


LFOのキャラクターは少しアニメチックにデフォルメされていて、カラフルな髪の色や瞳でも違和感がないようになっている。種族を獣人やエルフ、天使にしてもきっと違和感なくかわいいだろう。うむ、うむ、みんな実に愛らしい。


上から下まで舐めまわすようにじっくりと堪能し、次の子へ。ふははははは!苦しゅうない、苦しゅうないぞよー!ぐへへへへ!


しかし、あれだね。

とりあえず一通り見て回ったけれども・・・


「うーん。モデルアバターよりも、ミーナちゃんが一番好みだなぁ。」


『ふにゃぁっ!?』


モデルアバターもみんなかわいいんだけど、なんかこう、アニメチックにデフォルメされていながらもリアル寄りなんだよね。リアルモジュールが主流の昨今では仕方ないとはいえ、私はもっとこう、二次元っぽいかわいさが好きなのだ。


「と、いうわけでミーナちゃんをベースにしたいから、ちょっと堪能させてね。」


『あわわわわー!?』


LFOは五感全てにおいて現実よりも美麗を謳っているだけあって、ちょっと人様には言えないあんなところやこんなところまで、そこまでやるのかっていうほど実に多彩なキャラクリエイトが可能だ。


例えば肌触り。もちもち肌とかうるおい肌とか選び放題。

例えば匂い。お花の良い香りを首元から常に出してくれたり。

例えば味。・・・ん?キスの味?

をい、なんで選択肢があるの?開発陣は変態ですか?よくやった!


選択肢があるならば仕方ない。

私にとって理想の女の子を創り出す為に、全ての項目を全力で試してあげないといけないね!


顔を真っ赤にして照れるミーナちゃんを逃がさないように抱きしめ、至近距離からじっくりと全身を観察して耳元で声を聴き、色々と触りながら首元の匂いを嗅いだり、ちょっと甘噛みしたりして堪能する。あ、巫女服も脱がせてあげないといけないね?大事な所もちゃんとつくりこまないと。


『ひゃっ!ちょ、だ、ダメですお姉さん!』


「うふふふ、怖くないからねー?キャラクリの為に仕方なく、ちょっと試すだけだから。ちょっとだけだから!」


『こ、こ、コピーしまふ!私のアバターを複製するからちょっと待ってぇ!』


「表情とか反応があったほうが楽しいし・・・」


『LFOはそういうゲームではないのです!!』


あ、はい。ごもっともで。


「ふむ。じゃあ、ミーナちゃんのお姉さんな感じを目指そうか。」


『はぁ、はぁ。わかったのです。えいっ!』


掛け声と共にモデルアバター達が消え去り、代わりに表情の消えた無機質な狐耳巫女風の美少女が出現する。


・・・ふむ。表情豊かで元気いっぱいのミーナちゃんは実に好みだけど、双子の姉にするなら、クールな感じに攻めるのもいいかも?


「うん、やっぱりかわいいね。これをベースにキャラクリを進めていこう。種族は獣人、狐タイプでいいとして、まずは名前だけど、ミーナちゃんのお姉さんだから・・・」



――――――――――――



や、やりきった・・・!五感が完全再現されているゲームだと、ついついこだわっちゃうね。

現実にはないあれやこれやとカスタムを繰り返し、LFOの世界に合わせた実に魅力的な美少女が出来上がったと思う。


金髪碧眼、太陽のような明るいミーナに対し、

銀髪紫眼、月をイメージした物静かなイメージのアバター、名前はルーナ。


姉妹なのに色違いはどうなんだろう?と思ったけど、設定上の話だし、アニメっぽい世界ではよくあるよね。うん、とてもかわいい。


「・・・ふぅ。これで完成、かな。私をオーバーライドしてみてくれる?」


『はーい!それじゃあやるね。えいっ!』


ミーナちゃんの掛け声と共に一瞬視界がブレ、

私の意識がルーナの身体に乗り移る。

うむうむ、これが理想の女の子の身体かー!


「うん。多少リーチの違いやらはあるけれど、違和感もあまりないね。いい感じ。とりあえず・・・」


手を握ったり開いたり、その場でジャンプしたりして軽く身体の感覚を確かめ、次に目に見えないあれやこれやを確認する為に、かわいいミーナちゃんを捕獲する。


『うにゃあ!?』


目に見えないアレコレ。

例えば聴覚、嗅覚、味覚、触覚。


『ひっ!?あの、お姉ちゃ、んぅっ!?』


ルーナを作成する際にもじっくりと堪能したミーナの身体を弄り、五感がリアルモジュールと差異の無いことを確認する。獣人タイプではあるけれど、やっぱり特別に聴覚や嗅覚が鋭くなった感覚はないかな?まぁ、種族によってそんなに差がでてしまったら不公平だしね。うん、味覚も問題なし。

強いて言うなら、無表情キャラにする為に表情筋を減らしたせいで、顔がちょっと引きつる感覚があるくらい。これで、アバタークリエイトは終わりかな。


「ん。ミーナちゃん、お疲れ様。」


『ふぁぁ、はぁ、はぁ。お、お疲れ様ですぅ。』


「思ったより疲れちゃったから、少し休憩してくるね。帰ってきたら、続きをお願いね?」


『つ、続きっ!?』


「ん?だってまだ種族と名前しか決めてないし。ステータスとか初期スキルとか、あるよね?」


『あ、そっちの続き。うん、大丈夫。お姉ちゃん、行ってらっしゃい。』


「うん、行ってきます。」


本日できたばかりのかわいい妹を撫でてから、ログアウト。

お姉さんじゃなくて、お姉ちゃん。この違いが、実に心地良いね!

表情筋がないせいで、思わず顔がニヤけないのは良い副産物だと思う。


さて、休憩が終わったら初期ステータスとスキルを決めて、実戦だー!



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


名前:ルーナ

種族:獣人(狐タイプ)

レベル:1


HP:150/150

MP:50/50


STR:8

AGI:12

VIT:8

INT:12

MID:10

DEX:10



ステータスポイント:20

スキルポイント:10


【スキル】なし

【称号】なし

【装備】なし

【装備アバター】月の巫女服セット


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【種族タイプ】

LFOでは種族によって違うのはステータスのみです。

五感はどの種族を選んでも大差なく、

天使など翼のある種族を選んでも、スキルがなければ飛べません。

逆に、スキルさえあれば人間でも普通に飛べます。


獣人:狐タイプはAGIとINTが高く、STRとVITが低めのステータスとなってますが

育成の仕方次第ではどんな方向性にも育成可能(特化型には劣ります)

わりとバランスのよい種族となっています


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ