表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

6. みんなにいい顔なんて出来ない

 赤怒田が1位になってしまった以上、俺は最下位になるわけにはいかない。別にこの部活をやめることは嫌じゃない。というかやめたい。だがそうなれば山田先生が黙っていないだろう。


 だいだい話を通したって言っておきながら、約1名納得してないってどういうことだよ!ちゃんと説得しといてよ!あの先生ほんとに適当だな!


「水無月くん?捨てるカードないなら始めてもいいかな?」

「ああ、問題ない。始めようぜ」

「1枚もそろってないとか、ついてないねー、みなっち」


 赤怒田が俺に、はやく始めろよ?的な表情を送ってくる。ちっ!覚えとけよ?


「じゃあ、水無月くんが設楽さんのカードを取るところからスタートだね」

「みなっち、どうぞー」


 俺は設楽から1枚カードを取る。クイーンの8だ。


(さすがにこんだけ手札があったらそろうよな・・)


 俺はカードを2枚捨てる。だがどれだけカードが減っても、ジョーカーを持っていてはあがれない。逆に言えば、ジョーカーさえ他人に引かせれば勝機はある!この枚数差をひっくり返せる!


「喜田、取っていいぞ」


 俺は1枚だけ上に出すようにして、喜田に選ばせる。メジャーな戦法だが、こういう場合、飛び出たカードを意識するあまり端の方を取る人間が多い。喜田は見た感じ素直でいい子っぽいし、引っかかってくれるんじゃないか?


 ちなみにジョーカーは俺から見て左端にある。喜田は右利きだと思われるので、こっちの方が取りやすいと判断すると思ったわけだ。


「これかな」



 喜田は迷わず”飛び出ているカード”を取る。


 あっれええええ?だったら次はジョーカーを飛び出させて・・・・


「これにするね」


 喜田は今度は俺からみて左端のカードを取る。



 読まれてるうううううう!俺よわ!!というかこの子強い!容赦ない!



「あ、おさきー」


 そうこうしている内に設楽があがってしまう。これであとは俺と喜田の一騎打ちだ。勝てる気しねえ・・・・


 でも妙だ。喜田は毎回ジョーカーこそ取らないが、まだ1枚も捨てれていない。運が悪いのか・・?


 あれ。なんか赤怒田が喜田のことを睨んでいる。なにかあったのだろうか。


 まあとにかく・・負けるわけにはいかない。あんまりこの手段は使いたくなかったが、仕方ないか。




 そこからはお互いにカードを減らしていき、ついに最終局面。喜田が残り1枚。俺が残り2枚だ。


「ねえ、赤怒田さん。水無月くんに部活をやめろって命令するのは可哀想じゃない?」

「そういうルールで始めたはずよ?私の意志は変わらないわ」

「そっか・・・・」


 喜田は俺の方を向くと、目を必死で合わせてくる。どっちがジョーカーなのか教えて!とでも言いたそうな目だ。


「喜田!!」


 赤怒田が怒鳴る。


「何つまんないことやってるの!あんたはいつもそうやって気を遣ってばっかり!私、あんたのそういうところ、嫌いだわ!」


 喜田は今にも泣きそうだ。辛い立場だろう。俺は喜田に話しかける。


「喜田。俺のことは気にするな。俺は運がいいからな。お前は絶対に”あがることはできない”。だから安心して取れよ?」


 俺はそう言い、2枚のカードを喜田の前に差し出す。どちらかを飛び出させたりはしない。純粋に選ばせる。


 喜田はもう一度俺の目を見てきたが、ジョーカーを教える気がないことを悟ると、手を伸ばし2枚のカードのうちの片方を選ぼうとする。


 




 喜田は、ジョーカーではない方のカードに手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ