4. この部活は全然大丈夫じゃない
あれ?なんだこの気まずい空気は?さっき来た時はこんな感じはしなかったような・・・・
というかなんで誰も何も言わないの?まさか無視?俺無視されてる?
でも目線はこっち向いてるよな・・・・ってみんな可愛いな・・・・おい・・・・
そうですか。俺みたいな男は眼中に無いどころか話す価値もないですか。そうですか。べっ別に悲しくなんてないけどな!こんな女たち、こっちから願い下げだ!
・・・・・・誰かハンカチ貸してもらえる?多分涙以外にも鼻水とか付くだろうけど、それでもいいよっていう心優しい人いる?いませんね、分かります。
「あっあの!新入部員の方ですか・・?山田先生が言っていた・・・・水無月くんだっけ?」
長い沈黙は少女の一言によって終わりを告げる。多分人生で一番長い沈黙だったぞ?今の。
「あ!はい!そうれふ!水無月育人といいます。よろしくお願いします」
俺はこの場を和ませるためにわざと噛んだ。いいか?わざとだぞ?はあ?久々に話す女の子たちに緊張してるんじゃないかって?なに言ってんだ!その通りだよ馬鹿!
「あんたさぁ、さっきはなんだか全力疾走で走っていったけど、あれはなんだったの?入部する気あるの?」
さっきの態度が気に食わなかったのか、別の少女が俺に話しかけてくる。どうやらお怒りのようだ。
「いやその、あの時は正直入部しなくていいかなーって思ったんですけど、事情が変わりまして」
「へぇ?どんな事情?」
「この部活に入らないと俺、留年しちゃうというか」
「なにその冗談。面白くないわよ?」
これが冗談じゃないんだよなぁ。まあそう思われても仕方ないけど。
「まあまあ、あかっち落ち着いてよ?それと・・水無月くんだっけ?きみ1年生だよね?私たちも同じ1年生だから、敬語とか使わなくていいよー」
また別の少女が会話に入ってくる。どうやら俺に助け舟を出してくれたようだ。ありがたい。
「分かりました。これからは敬語を使わないように心がけていきます!」
「まったく分かってないじゃんっていうツッコミ待ちかなー?それ」
「あ!つい・・・・分かった。敬語は使わないようにする」
「うむ。えらい子だ。ではみなっち。その手にもっている入部届を渡しなー。はんこ押してあげるよー」
みなっち?俺のことかな?なんかちょっと嬉しい。
「ちょ!?設楽!?私は認めないぞ!こんなやつ!」
怒っていた少女が話に割って入ってくる。そして俺の方を睨みつけてくる。
「じゃあ多数決で決めよう?私はみなっちの入部に賛成ー」
「私も賛成かな。断る理由なんてないよ」
「私は絶対反対だぞ!!だいだい女子4人に対して男子1人ってマズいだろ?襲われるかもしれないぞ?」
ぼろくそ言われてるぞ、俺・・・・おっと目頭が熱く・・って泣いちゃ駄目だ!
現在2対1で賛成派の方の優勢。勝負の命運は最後の少女に託された。
「哀川はどうなんだ!?襲われるの怖いよな!?」
「ともみー。私の目を見てくれよー?」
「ちょっと2人とも!哀川さんが困ってるよ!」
哀川と呼ばれている彼女はガタガタと震えて今にも泣きそうだ。というか泣いている。あ、気絶した。
「ありゃ。気を失ってる・・これは無投票ってことだねー」
「な!?」
「哀川さん!大丈夫!?って白目向いてるよ!ちょっと!しっかりして!」
・・・・・・この部活大丈夫か?
こうして俺の読書部入部が決まる。うん、まったく嬉しくないな。というかもう帰ってもいい?