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3. 喜田里美はいつも気を遣っている

 実は読書部は、まだ発足して1週間ほどの新しい部活である。そんな読書部の部長をやっているのが私、喜田きだ 里美さとみである。現在この読書部のメンバーは全部で4人。ちなみに私を含めて全員が1年生だ。


「それにしても、さっきの男の人は何だったんだろう?私てっきり入部希望の子かと思ったよ」

「さあ?教室間違えたんじゃねーの?」


 彼女は、赤怒田あかぬた もも。私のクラスメイトである。


「すんごい勢いで走っていったなあ、にはは」


 そう言って笑う彼女は、設楽したら ゆう。隣のクラスの子だ。


 そして最後の一人が・・


「びっくりしました・・・・」


 ブルブルと震えている彼女、哀川あいかわ ともみ。設楽さんと同じクラスの子だ。


 私たち4人は今、トランプをしている。なぜこんなことをしているのかというと、私がやろうと言ったからだ。


 え?読書はどうしたかって?


 そもそもこの部活は読書をするために作られたものではない。こんな風にトランプなんかをしながら、楽しく遊んでいくという、そんな目的のために作られた部活だ。


 私は中学時代に、あまり友達がいなかった。別に人と話すのが苦手という訳ではないのだが、どうしても必要以上に相手に気を遣ってしまい、距離感が縮まらなかったのが原因だ。


 この高校ではしっかりとした友達関係を築いていきたい!そんな思いで作ったのが、この読書部である。なぜこんな名前にしたかというと、私が担任に友達関係について相談しにいった時のことだ。



「なるほど。気を遣ってしまい距離感が縮まらない、か」

「はい・・・・どうすればいいんでしょう」

「よし!喜田。部活を作ってみるのはどうだ?」

「部活・・・・?」


 担任の山田先生は自信気に言う。


「ああそうだ部活だ。もちろん文化系のな。ずっと同じ空間にいれば、自然と距離感が縮まるかもしれんぞ?」

「それは・・そうかもですけど、そんな理由で部活とかって作れないんじゃ・・?」

「大丈夫だ。もっともらしい適当な名前を付けておけば、生徒会も文句は言うまい。そうだな・・」


 先生はしばらく考えると


「読書部なんてどうだ?うん、そうしよう!そっちの方が何かと都合がいいしな!」

「え?都合がいいって・・・・?」

「ああ!こっちの話だ。気にしないでくれ!」



 こんな感じで部活を作り今に至るわけだが、なんで読書部という名前にしたのか、その理由はいまだに分からない。


 部活が発足して1週間。今この空間には私以外に3人の部員がいる。


 なにはともあれ・・・・このチャンスを生かさなきゃ!私はそう強く決心する。


「また負けてしまいました・・・ぐすん」


 哀川さんがガックリと姿勢を崩す。


「弱いなぁ、ともみは。ジョーカー持った時に顔に表情出しすぎだよ。まあ可愛いからいいけどなー」


 設楽さんが茶化す。


「というか喜田?」

「ん?何?赤怒田さん」

「喜田ずっと2番か3番だけど、狙ってやってる?」

「え?そんなことは・・」


 やってしまった・・・・私の悪い癖だ。どうしても真ん中の順位を取ろうとしてしまう。


「そういやそうだなー。喜田っちって全然表情が顔に出ないから1番とってもおかしくないのになー」

「そんな・・ババ抜きなんですから、運がないだけですよ、設楽さん」

「でも最下位にもならねえよなぁ?」


 赤怒田さんが私のことを疑うような目で見てくる。まずい・・


「まあそれはともみのやつが弱すぎるだけなんですけどねー」

「うう・・ひどいよ優ちゃん」

「でも確かに不思議かもなー?」


 赤怒田さんに続いて設楽さんまで、私のことをじっと見てくる。


 やばい。気まずい。なんて答えよう。実はカードが2枚そろっても捨てずにもってましたー!てへぺろ!とでも言うか?いや馬鹿か私は?どうしよう・・・・頭の中が真っ白に・・・・


 また距離が開いていく・・そんな感じがした。誰でもいい。この状況を変えてください!お願いします!・・・・ってそんな都合のいいこと起こるわけないか・・・・


 困ったときはいつも人頼み。本当にダメだなあ。私。


 もうだめだ。どうしようもないと諦めかけたその時・・



 扉が開いた。さっきの男の子がそこには立っていた。





「あの・・ここって読書部で合ってますかね?」


 彼はそう言った。


 私は何か、流れが変わっていくような、そんな感じがした。

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