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19. 生徒会長・・・・降臨!

 今の状況を簡潔に説明しよう。


 まずは喜田。彼女は扉の前で手を広げ、ディフェンスに徹している。


 そして俺の後ろでは赤怒田と設楽がチャンスを窺っている。俺が一瞬でも隙を見せれば、彼女らは襲い掛かってくるだろう。


 哀川は・・・・そもそも戦う気が無いのか、机に突っ伏して気持ちよさそうに寝ている。


 そして俺は5冊の本をカバンの中に潜ませている。これがいわゆるヒットポイントってやつだ。0になれば死ぬ・・ことはないが、読書部継続の危機に陥る・・・・何としてでも守り抜かねば!


 とは言え、守ってばかりでは分が悪いように思える。長期戦になればなるほど、俺の集中力が散漫になり、隙が生まれやすくなることだろう。


 なら攻めるしかない。正面突破だ。


「喜田」

「なにかな?」

「そこを通さないって言うんなら、お前の身の安全は保障されないぞ?」

「どういう意味?」

「スカートをめくられても、文句は言えないってことだ!」


 ふっ、我ながら決まった・・・・なんか周りからの視線が凍るように冷たいけど気のせいだろ。


「別にいいけど・・・・体操服のズボンはいてるし・・」

「夢がねええええええええええ!」

「へ?」

「お願いだ・・・・ズボン脱いでくれよ・・・・そんなのあんまりだ・・・・」


 スカートをめくってもパンツが見えないとか、世の中って理不尽だなあ・・・・


「そんなこと言われてもなぁ・・」

「頼むよ・・・・」

「勝負ありだねーみなっち」

「なに!?」


 いつの間にか俺の背後に接近していた設楽にカバンを奪われる。


「ば、馬鹿な!? この俺が女子のパンツごときで集中力を乱しただと!? まさか喜田! わざとスカートがめくりやすい態勢を取ることによって、俺を誘惑したのか!? いやらしい女め!」

「そんなことしてないよっ!」


 喜田が顔を真っ赤にして反論する。


「いやーみなっちって案外ちょろいねー?」

「男ってほんとに単純ね」


 くっ! 好き放題言いやがって! 今に見てろよ・・・・


「はーい、本配るねー」

「げっ! なによこの本・・あんたセンスないんじゃないの?」


 こいつぶん殴りたい。


「みんな座って、本を読んでくれるかな? いつ生徒会長が来てもおかしくないし」

「そうだねー」

「しょうがねえなぁ」

「すやすや・・・・」

「ともみ起きなー。じゃないとクロワッサン買ってやらないぞー」

「それは嫌!!」


 哀川が飛び起きた。俺よりちょろいだろコイツ・・・・


 こうして我らが読書部は、結成以来初めて、真面目に活動することになった。













「失礼する」


 本を読み始めてから15分ほどが経過した時、挨拶とともに一人の女性が入ってくる。


「私は生徒会長の桜山さくらやま 凛音りんねだ。いきなりですまないが、今日は読書部の活動を見学しに来た」

「そうなんですか。なぜわざわざ見学を?」

「実はある生徒から報告があってな。読書部が部としての活動を怠っている、と」

「へー? 誰がそんなこと報告したのかなー?」

「それは教えられない。匿名希望だそうだ」

「そっかー、なら仕方ないねー」


 桜山は俺らのことを、ゆっくりと見渡す。


「・・どうやら報告はデマだったらしいな。君たちに不快な思いをさせてしまったな。非礼を詫びよう」

「いいですよ気にしなくて」

「では、これで失礼す・・・・ん?」


 桜山は俺の方をじっと見つめる。いや、正確には俺の手にしている本を見つめている。


 さすが生徒会長。気付いてくれると信じてた。


「そこの君。本が逆さまに見えるんだが・・?」

「あ! いけね! いっつも本なんて読まないから間違えちまった! ウワーヤラカシター」

「ちょっと水無月くん!?」

「おい水無月!?」


 ふふっ・・・・・・俺が諦めるとでも思ったか!! 馬鹿め!! これで読書部はおしまいだ!!


「どうやら報告は本当だったらしいな。では仕方ない・・・・」

「待って! 桜山先輩! どうか廃部だけは・・」

「そこのお前! 部としての活動を怠っていた罰だ! お前には生徒会に入ってもらう! そこで私がみっちりと指導してやる!」





『え・・・・?』





 俺と喜田と赤怒田の声がシンクロする。


「えーと・・桜山先輩。今なんて・・・・」

「お前には生徒会に入ってもらうと言った。拒否権はない」

「桜山先輩・・・・廃部には、ならないんですか・・・・?」

「当たり前だろう? 君たち4人は立派に読書をしている。見ろ! そこの彼女なんて本の世界に集中するあまり、瞑想しているじゃないか!! 素晴らしい心掛けだ!!」

「寝てるだけだから! というか目をつぶったら、字なんて読めねえだろ!!!」

「ええい! なんだその口の利き方は!? こい! まずは礼儀というものから教えてやる!」


 俺は桜山に引っ張られる。ちょっ、どんな怪力だよ!? まったく抵抗できない!!


「お前ら! 見てないで助けてくれよ!!」

「応援してるよ、水無月くん」

「自業自得ね」

「にゃははっ! みなっち面白すぎ! やっぱり最高だよー!」

「すやすや」


 おい待て!! なんだこの結末は!? 俺は認めん! 認めんぞおおおお!!!

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