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18. 廃部の危機? 別によくね?

 6月。俺が読書部に入って、一か月が経過した。読書部での経験を生かし、俺はクラスに溶け込むことに成功していた・・・・・・訳もなく、相変わらず1人だ。


 たまに喜田から声を掛けられるせいで、余計に男子たちの反感を買ってしまい、孤立化に拍車がかかってしまっている。それだけ喜田が、クラスの男子に人気ということだ。


 だから今日の昼休みも一人ぼっちで過ごす予定だったのだが・・・・


「水無月、ちょっといいかい?」


 俺はある一人の男に話しかけられる。俺はこいつの名前を知っている。


「なんだ? 天草」


 天草あまくさ 古戸ふると。俺が名前を覚えている数少ないクラスメイトの一人。なぜ覚えているのかと言うと、それだけ彼がクラスにおいて目立った存在だからである。


 黒い眼鏡をかけていて、知的な感じを醸し出している。というか実際、めちゃくちゃ頭が良い。


 クラスの学級委員長を務めていて、1年にして生徒会の書記までこなしている。


 そして彼の一番の魅力は人柄の良さである。決して他人を馬鹿にせず、クラス内で問題が起これば、いち早く解決のための行動を率先して起こす。もちろん女子からは絶大な人気を誇っている。


 噂によると、既に彼女がいるとか。まさに人生の勝ち組である。


 そんな天草が俺に、一体なんの用があると言うのだろう? 今まで喋ったこともほとんど無いというのに。



「水無月って、確か読書部だったよな?」

「そうだな」

「実は生徒会に、読書部は部としての活動を怠っているっていう報告があってだな・・・・」

「あらま・・・・」


 事実、読書部の中で真面目に本を読んでいるのは俺くらいだ。だからその報告は間違ってはいない。


 だが・・・・・・


「そんな報告をするメリットが分からないな。大体、俺ら以外にも真面目に活動していない部活はたくさんあるわけだし」


 なぜ俺らだけが槍玉に上がった?


「うん。その通り何だけど・・・・報告があった以上、これは調査せねば!って生徒会長が張り切ってて。多分、今日の放課後にそっちに行くんじゃないかな」

「なるほど」


 つまり・・・・


「今日は真面目に活動しとけ、と」

「うん。僕としても読書部には廃部になってほしくないし」

「でも大丈夫か? こんなことを漏らして。抜き打ち検査みたいなもんじゃないのか?」

「まあそうなんだけど・・・・」


 天草は難しそうな顔をする。


「僕達だけの秘密ってことで、な?」

「了解した。他言はしない」

「話が早くて助かるよ。じゃ」

「あ、ちょっと待ってくれ」


 俺は天草を引き止める。


「なんだい?」

「なんで俺に言ったんだ? 喜田とかの方が信用できるんじゃないか?」

「それはね・・・・」


 天草は、しばらく間を開けて言う。


「水無月と一回、話がしてみたくてな」

「へ?」

「じゃあな」


 天草は軽く手を振り、教室の外へと出ていった。多分食堂に行ったのだろう。


 俺と話がしてみたかった? 物好きな奴もいるもんだな。








 放課後。俺は4人に天草から聞いたことを伝える。


「じゃあ今日は本を読んでなくちゃいけないね」

「めんどくせーなー。誰だよ、報告とかした奴」

「でもみなっちー。私は本とか持ってないよー?」

「私も・・・・」

「一応お前ら、読書部だよな? まあいい。俺の分の本を貸して・・・・ん?」


 待てよ・・? 別に廃部になってもよくね? そうすれば面倒な設楽や赤怒田と顔を合わせる機会も減るし・・・・むしろ廃部になるべきだろ。


 ならなんで部活に来るのか、という話だが、それは喜田のせいである。


 毎回、6限目が終わり帰ろうとする俺に向かって喜田が言うのだ。


「水無月くん・・部活・・いくよね?」


 とびきりの上目遣い。はいアウト!! 犯罪!! 可愛すぎる!!


 そのため、部活を休むことは不可能、と思われていたが・・・・


 チャンス到来! このチャンスを逃さない! 廃部になれば全てが解決!!


「あー。ごめんごめん。本持ってくるの忘れたわー」

「思いっきりカバンの中に本が数冊見えるんだけど・・?」

「みなっちー。何か良からぬことを考えてるねー?」

「大人しく寄こしなさい!」

「おっと!」


 俺はカバンを持ち、赤怒田の魔の手から逃れる。


 俺は地学室から出ようと、扉へ向かうが・・・・


「おい・・どいてくれよ喜田? 俺ら同じ部活の仲間だろ?(今日までは)」

「水無月くん・・・・ここから先は通せないな・・」

「ほう? 面白い」


 俺と4人の少女による本取り合戦の火蓋が、いま切って落とされた。


 

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