表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

15. 哀川ともみは断れない

 私、哀川ともみには中学の時からの知り合いが2人いる。


 1人は設楽優。中学生時代に人見知りで孤立していた私に、積極的に話しかけてくれた人物。おかげで私はクラスに少しだけ馴染むことが出来た。私にとって、たった一人の親友である。


 そしてもう一人が・・・・


「ともっち、例のモノはちゃんと持ってきた?」


 今、私の目の前にいる彼女、西城さいじょう 利佐りさである。


「うん・・持ってきたよ・・」


 私は彼女にあるモノを渡すために、このBクラスの教室で会う約束をしていた。


「じゃあ出して」

「分かった・・・・」


 私は自分のカバンから、赤怒田さんの制服を出す。


「おー。さっすがともっち。持つべきものは優しい友達だね」


 彼女は私から制服を受け取ると、カバンの中にしまう。


「それ・・・・なにに使うの?」

「私、赤怒田さんのこと、嫌いなんだよねー。なんなのよ、あの偉そうな態度は。女王様にでもなったつもりかっての」

「・・・・嫌がらせってこと・・?」

「そうよ」


 キッパリと彼女は言い切る。まるでそれが正しいことをしているかのように。


「あの・・西城さんに一つ、お願いがあるんだけど・・」

「なに?」

「その制服、今から赤怒田さんに返しにいかない・・? 赤怒田さん、すごく困ってて・・」

「へー。困ってるんだ! だったら作戦大成功だね!」

「でも・・こんなことしちゃダメだよ・・」

「ともっちー」


 彼女は笑いながら私を見てくる。私はこんなにも冷たい笑顔が出来る人間を、彼女の他に知らない。


「あんたは黙って私の言うことを聞いてりゃそれでいいの。分かった?」

「・・・・うん。分かった」




 今回も私は彼女の命令を断ることが出来なかった。いつも通り、流されてしまった。


 私はもともと、断ることが苦手だ。断れば相手を傷つけてしまう、そんな風に思ってしまうからだ。


 だから彼女の日に日にエスカレートしていく命令も断ることが出来ない。悪いことと分かっていながらも断れない。


 従っていれば、相手を傷つけることはない。あれ・・でも赤怒田さんは困ってる・・?




 結局私は怖いだけなのかもしれない。相手を傷つけるのが嫌、なんてのは建前。


 本音は自分の身を守りたい、だ。


 私は決して可哀想な人物などではない。自分の保身のために友達を困らせている・・・・最低だ。


「うっ・・」

「ともっち? 泣いてるのー?」


 気が付けば私は泣いていた。自分の不甲斐なさが情けなくてたまらない。


「じゃあ私そろそろ帰るね。またよろしくね? ともっち」


 彼女が教室を去ろうとする。止めなきゃ・・でも体は動かない。




 ほんと・・・・どうしようもないな・・・・私・・





「ちょっといいか?」





 突然、男の子の声が聞こえ、私はびっくりしながら、その声の主を見る。


 そこには・・・・


「なによアンタ・・私に何か用?」

「ああ、そのカバンの中身。見せてくれないか?」




 水無月くんが・・・・そこにいた。どうして? みんなと一緒に赤怒田さんの制服を探してたんじゃ・・




「はあ? なんで見せなきゃなんないのよ? というかあんた誰よ?」

「俺はAクラスの水無月だ。そのカバンの中、赤怒田の制服が入っているんだろ?」

「は? 言いがかりはやめてくれない?」

「さっきまでの2人の会話、全部聞いていたぞ?」

「だから何? どいて、私は早く帰りたいんだけど」

「見せる気がないんなら、俺にも考えがある」

「へー? どうするの?」


 水無月くんは恐れることなく、堂々と言う。



「お前を押し倒してでも、そのカバンを奪い取る」


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ