14. 事件の終わりは突然に
「ねえねえ、ともみー」
「なに? 優ちゃん・・」
「ともみは今回の件どう思う?」
「どう思うって言われても・・・・よく分からないな・・」
「じゃあ質問を変えるね。みなっちが犯人だと思うー?」
「それは・・・・」
哀川は俺の方を見る。本人がいる前では答えづらい質問なのだろう。
「私は・・その・・・・水無月くんは犯人じゃないと思う。制服を盗んだりする人には見えない・・」
「だよねー。私も同意見だよ」
随分と信用されているものだな・・・・まだ知り合って間もないというのに。
「いいや、こいつは制服を盗みそうな顔をしているわ」
それとは逆に、赤怒田からは全く信用されてないな。というか制服を盗みそうな顔って何ですか?
「なあ、設楽」
「なに、みなっち」
「俺のことを信用してくれるのは嬉しいんだが、本当にいいのか? 一応俺は健全な男の子だぞ?」
「私、こう見えても人を見る目には自信があるんだよねー。だからみなっちを信用していると言うよりは、私の人を見る目を信用しているって言ったほうが正しいかなー」
人を見る目・・か。確かに設楽の洞察力はとても鋭い。
「ねえ皆。とりあえず校内をくまなく探してみようよ。もしかしたら何かヒントが見つかるかもしれないし・・」
空気の悪さを変えたいのか、喜田がそんな提案をする。
「そうだねー。これ以上話し合っても進展は無さそうだしー」
「ちっ・・しょうがねえな・・」
こうして俺ら5人は、赤怒田の制服を探しに校内を回ることになった。
制服を探し始めてから30分ほどが経過した。依然として、なに一つ手掛かりは見つからない。
山田先生に今回の一件を話してみたのだが、誰かが盗んだという確実な証拠がないと動けないようだ。
朝のホームルームで皆に話してみるのはどうか、と喜田が提案したのだが
「そんなことをしたらクラス内で犯人当てが始まって、全体の雰囲気が悪くなるからなぁ」
とのこと。
「もう・・全然見つからないじゃない!」
赤怒田が不満を口に出す。どうやら我慢の限界のようだ。
「やっぱりこいつが犯人なのよ! いい加減にしてくれない?」
「あかっち。まだ時間はあるんだから・・」
「こんなことしても意味なんて無いわよ! 時間の無駄だわ!」
「・・あ、あの・・!」
2人の会話に割り込んだのは、まさかの哀川だった。
「なによ、哀川」
赤怒田が哀川を睨む。哀川は蛇に睨まれた蛙のようになっている。
「哀川さん。何か言いたいことがあるの?」
喜田がフォローを入れる。
「その・・・・私そろそろ帰らないといけなくて。用事があるっていうか・・・・」
「うん。分かった。無理やり付き合わせちゃってごめんね」
「別に・・大丈夫・・・・じゃ・・」
そう言うと哀川は申し訳なさそうに手を振り、この場から去っていった。
「じゃあ、私たち4人で探そっかー」
「設楽。すまん。俺も用事が出来た」
「へえー?」
設楽は俺のことを、まじまじと見てくる。しばらくすると何か納得したのか、
「分かったよー。いってらー」
と言った。
「待って。あんた逃げるの?」
予想通り、赤怒田が俺を呼び止める。
「別に。用事が終わったら、また部室に戻ってくるよ」
「ちなみに用事って何なの?」
「先生から呼び出しをくらったことを、いま思い出してな。職員室に行ってくる」
「職員室なら、さっき行ったばかりじゃない。その時は思い出さなかったの?」
「そうだな。じゃ」
「ちょっと! 話はまだ・・」
俺は赤怒田の話を最後まで聞かずに、この場を後にする。
それからしばらくして、用事を済ました俺は、赤怒田たち3人と部室の中で合流する。
「あ、水無月くん。戻ってたんだ」
「おう。そっちは何か進展はあったか?」
「ううん、何も。ってあれ・・・・?」
喜田は机の上に置いてあるものをみて固まる。
「ちょっと! これはどういうつもり!?」
同じように赤怒田も、それを見て、俺の方を睨んでくる。
それもそのはず、机の上には盗まれたはずの赤怒田の制服が置いてあったのだから。