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11. 赤怒田ももは今日も1人で後悔する

「はあ・・・・」


 私、赤怒田ももは学校の屋上で1人、深いため息をついた。


 なんで家に帰らないって? それは部室にかばんを忘れてきてしまったからだ。


「取に行こうにも、恥ずかしいしなあ。何やってんだ私は」


 全部あの男のせいだ。あいつのせいで全てが狂った。喜田にも、あんなに酷いことを言ってしまった。あいつさえ、いなければ・・・・


「いや、違うか」


 こんなことになってしまったのは私のせいだ。心の中では分かってる。でもそれを認めたくない。そんな醜いもう一人の自分が私の中にいる。


「またこれで一人ぼっちか・・」


 私は1週間ほど前まではクラスで孤立していた。理由は明白。私のこの性格のせいである。


 小学生の頃に男子にいじめられて以来、私は男を嫌うようになってしまった。中学に入るといじめは無くなったが、男に対してキツイ物言いをしてしまう癖がつき、それが原因で男の友達はおろか、女友達の1人も出来なかった。


 高校に入ってもこの癖は治らず、これからの3年間も一人ぼっちなのか、と諦めかけていた時。


 喜田さとみ。彼女は私に話しかけてくれた。私がどれだけ男に対して失礼な態度を取っても、彼女は私のそばにいてくれた。とても嬉しかった。彼女が読書部に誘ってくれたおかげで、哀川と設楽にも出会えた。友達になれる・・はずだった。


「嫌われちゃっただろうな」


 私は嫌いと言ったのだ。嫌われて当然だ。


 さて・・時刻は現在、午後6時半。そろそろ皆、帰ったころかな。


 部室に戻ろう。そう思ったときであった。






「赤怒田さん・・」

「え? 喜田・・?」





 喜田は私のかばんを持って、私の目の前に立っていた。まさか・・・・かばんを渡すために私を探していたのか? でも私が部室を出て行ってから2時間は立ってるぞ? その間ずっと・・どうして?


 感謝よりも疑念の思いがこみ上げてくる。どうしてそんなに優しくできる? どうしてそんなに喜んだ顔をしている?


「はい、これ」


 喜田は私にかばんを手渡す。


「なんで・・?」

「え?」

「なんでそんなに優しくしてくれるの?」

「えっと・・」


 喜田は困ったような顔をする。


「赤怒田さんに、遠くに行ってほしくないからかな・・?」

「別に私、転校とかしないぞ?」

「そういうことじゃなくて・・・・距離感の問題で・・」

「距離感?」

「私、中学の時はあまり友達いなくて。その・・気を遣いすぎたせいで、気がついたら皆、私の前からいなくなってた」


 友達がいなかった? 意外だ。彼女なら友達を作ることくらい、簡単に出来ることだと思っていた。現に彼女は今、クラス内でうまくやっているように見える。


 気を遣いすぎて友達が出来ない・・か。私とは真逆の理由だ。


「喜田・・さっきは悪かったな。あんなこと言って」


 私は久しぶりに自分に素直になれた。どうしてだろう? 相手が喜田だからか?


「私こそ、ごめんね。赤怒田さんを怒らせるようなことしちゃって」

「馬鹿。なんで謝るんだよ。あんたは優しすぎるんだよ」

「あ・・ごめん」

「次謝ったら友達やめるからな」

「ええ!? ってあれ? ということは赤怒田さん」

「なに?」

「今、私たちは”友達”なのかな?」

「さあな」


 私は外の景色を見るようにして、喜田と顔を合わせないようにする。いま赤くなっているであろう私の顔を見られるのが恥ずかしかったからだ。


「赤怒田さん? 何か見えるの? ・・あ、見て! 皆がいるよ!」

「え?」


 正門の方を見ると、哀川と設楽と水無月がいた。3人で何をしているんだろうか。遠すぎて表情こそ見えなかったが、楽しそうなのは分かった。不意に私も、あの中に混ざりたいと思ってしまった。


 私にはそんな資格はないのに。


「赤怒田さん、いこ!」

「え? どこに」

「皆のところ」

「え!? でも気まずいし・・」

「私も一緒に謝ってあげるから」

「次謝ったら友達やめるって言ったよな!?」

「じゃあ謝るのを応援してあげるから」

「はあ!?」


 謝るのを応援するってどういうことだよ!


「早く早く、皆帰っちゃうよ?」

「ちょっと! 引っ張るなって!」


 私は半ば強引に喜田に手を引っ張られたが、不思議と嫌な感じはしなかった。

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