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1. 水無月育人は読書が好きだ

 俺、水無月みなづき 育人いくとはこの春に桜山さくらやま学園に入学し、晴れて高校生となった。俺の学園生活最大の楽しみは読書である。昔から本を読むことが大好きで、今もそれは変わらない。本の何がいいかって、読むだけで違う世界に引き込まれるような、あの不思議な感じ。本の数だけ世界は存在している、そう思うと今日も読書をせずにはいられない。


 授業中は先生にバレないように、教科書の後ろに本を置いて読書。

 

 休憩時間は正々堂々と読書。


 放課後はすぐさま帰宅。家で読書三昧。


 こんな生活を入学してから1か月間続け、5月。


 

 俺は完全にクラス内で孤立していた。



 まあ、そうなるわな・・・・


 今までクラスの人たちに何回か声をかけてもらったことがあるが、俺は読書で忙しいという理由で関わらずにきた。


 当然の結果である。でも寂しいのは慣れている。中学の時だってこんな感じだったのだ。今さら慌てることもない。このまま動かざる山のごとく、3年間を過ごしていこう。


 しかし放課後に担任教師の山田先生から呼び出される。俺はすぐさま家に帰りたい気持ちを顔に出さないように、先生と向かい合う。


「なあ、水無月よ。毎日読書に勤しむのは関心なんだが、もう少しその・・・・クラスメイトたちと交流してみないか?」

「先生。安心してください。僕はこの1か月間で良好な交友関係を築くことに成功しています」

「その成功してるやつが、どうして休憩時間も昼休みも1人なんだ?」

「うっ!」


 もう少しオグラートに包めないのか、この教師。


「水無月。とりあえずお前、部活に入れ。お前にぴったりな部活がある」


 友達を見つけるために部活に入る?実に安直な考え方だ。そんなもの断固として拒否だ。


「読書部っていう名前なんだが・・」

「前向きに検討させて頂きます」


 読書部だって?素晴らしい!なんて素敵な響きであろう!


 確かに現状のままではいけないことは俺が一番よく分かっていた。両親も友達は宝とか何とかうるさくて、最近読書に集中できなかったし・・・・これはいい機会かもしれない。


 放課後に読書に集中できる場所が確保でき、なおかつ友達を作ることが出来る・・かもしれない。一石二鳥とは、まさにこのことだ。


「それじゃあこれ」


 先生は俺に入部届を渡す。


「今日も活動しているから、その紙もって部室に行ってこい。話は俺から通してあるから」


 話は通してある?俺が断ったらどうするつもりだったんだ?


「それにしても水無月が素直に承諾してくれて助かったよ。おかげで・・」


 先生は指をポキポキと鳴らす。


「無駄な体罰を振るわなくてすみそうだ」


 (こいつ首にならねえかな)


 心の底から俺はそう思った。


 

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