剣士ギルドで
フィリアと別れた俺は今、猛烈に後悔していた。
(剣士ギルドって………。どこだ?……)
ただでさえ、バカ広い王都でひとりぼっちだ。少し歩いていると大通りに出たのか道は人だらけだ。
歩いているとすれ違う人々……特に女性が俺のことを見ると顔を真っ赤にしてヒソヒソと話しており、チラチラと熱い視線を飛ばしてきた。
(ん?すごい視線を感じるな……。まあ、和服姿だし、仕方ないか……)
颯真は自分の顔を中のまん中くらいだと思っているが実はというと颯真はモデル顔負けの容姿であり、かなりモテていた。この世界では黒髪黒目は希少であり、ただでさえ、注目を浴びるのだがそれに加えてこの容姿だ。女性は気にならないはずがない。
しかし、そんなことを知らない颯真は服装が珍しいからと勘違いしていた。
少し歩いていると香ばしい匂いが漂ってきた。
(そういえば、飯……食べてなかったな。まあ、道なんてあとで聞けばいいか…)
考えをやめ、少し早めの昼食を食べることした。
「おっさん、それ十本頂戴」
「あいよー!ちょっと待ってな!」
颯真が選んだ昼食は焼き鳥だ。他にも美味しそうな食べ物はたくさんあったが久しぶりに調理された肉が食べたかったのだ。
森の中では調味料なんてものがないため、ただ焼いた肉だけで食べていた。
そんなことを考えていると出来上がったのか俺に焼き鳥が小袋を渡してきた。
「ほら、銀貨一枚だ」
日本円で一本百円の計算になる。俺はポケットから銀貨を取り出し、おっさんに渡した。
「おっさん、剣士ギルドってどこにある?」
「剣士ギルド?お前さん……ギルドに入るのか?」
「一応そのつもりです」
「そうか!剣士ギルドはここから真っ直ぐ行ったところにあるでっかい建物だ。まあ、見たらわかるぞ」
「教えてくれてありがとう」
「ハハハ!頑張れよ!」
「はい!」
☆☆☆☆
おっさんに言われた通りに行くと門の前に大剣を飾っており、異世界の文字で剣士ギルドと書かれていた。
「ここか……」
中に入るとガラの悪い男たちが昼間などかまわず、酒を飲んでおり、歌ったり踊ったりしていた。しかし、俺が入ってきた瞬間、急に静かになり、俺に視線を向けている。
大勢の奇異の視線を感じながら受付まで歩いていく
「すみません、ここって剣士ギルドですよね?」
「うん?ああ、そうだ」
受付の人はゲームやアニメとは違い、目に傷が斜めに入っており、いかにもヤクザって感じの男だった。
「登録とかできますか?」
「おう、できるぞ……。ほら、これに名前、年齢、出身地、使う武器を書いてくれ」
「わかりました」
受付の男から紙と羽ペンを受け取り、記入していく。
(名前はソーマ・アマミヤで年齢は十七、武器は刀で出身地はどうしようか……)
そんな事を考えながら悩んでいると受付の男が気がついたのか
「出身地を書きたくないなら書かなくてもいいぞ」
と言われ、出身地は空欄で紙を渡した。
受付の男は正方形の形をした魔法具に紙を入れ、待つこと一分でカードが出来上がった。
「これがお前のギルドカードだ……」
男からギルドカードは銅でできたカードの表面には
ソーマ・アマミヤ
ランク:F
性別:男
年齢:17
出身地:
武器:刀
と異世界の文字で掘られていた。
「ランクがFEDまでが銅、ABCが銀、Sが金色になっている。ギルドカードはなくしたら、際発注するのに金貨三枚必要だから無くすなよ……。後は剣士ギルドの説明は聞くか?」
「お願いします」
「わかった。まず剣士ギルドにはランクがあるのは知っているか?」
と聞かれた。ランクに関してはゼノアから聞いたので俺は首を縦に降った。
「ランクが上がると様々な依頼を受けられる。依頼の難易度が高いものほど報酬は高くなると思え、お前は今日登録したから、Fランクだ。ランクをあげるなら多くの依頼を達成しないとダメだ。依頼の中には通常依頼。特別依頼。指名依頼。があるが特別と指名はAランク以上じゃないと受けられない。あと禁止行為は各国の法に違反すること。他人の依頼を妨害することが禁止行為になっている。……まあ、こんな感じだ。他に質問はあるか?」
「例えば、人を殺すとどうなりますか?」
「そりゃあ、当然罪に咎められる。盗賊や山賊は殺しても罪にはならねぇ。懸賞金がかけられている奴らを殺ったら賞金はもちろんもらえる」
「なるほど、ありがとうございます」
俺は短く礼をし、依頼の紙が張ってあるボードに行こうと思った瞬間、大きな男が道を防いだ。
「なんですか?」
「おい、坊主。ここは剣士ギルドだ。お前みたいな細いやつがいる場所じゃないんだよ!ハハハ!」
男が笑いあげると周りの人たちも笑いあげていた。
「別にいいだろ。あんたは俺のことを心配してくれるのか?先輩?」
と挑発してみると男は笑うのをやめ、殺気を放ってきた。
「口の聞き方がなってないようだな……。俺はCランクのバイズだ。Fランクのお前が舐めた口きいてんじゃねぇぞ!!」
バイズと名乗った男は腰に着けていた。剣を抜刀し、剣先を俺に向けてきた。
「少し、挑発されたくらいで剣を抜くとか、アホだろ」
「き、貴様ァ!!調子に乗るなァ!!!!」
バイズは顔を怒りで染め、剣を俺の顔に斬りつけてきた……
しかし、剣は届くことがなかった……。なぜなら、横薙ぎに振るわれた剣を颯真は人差し指と中指で受け止めていたからだ。
「う、嘘……だろ?」
バイズは全力で降った剣をたった二本の指で止められ、状況が理解できていないのか狼狽えていた。
「お前……。本当にCランクか?」
俺はバイズに殺気を向けるとバイズは震え上がり、腰を抜かしたのか立てなくなり、その場で失禁していた。
「邪魔だ……。どけ…」
感情がこもっていない冷めた声を告げた。
「ば、化け物……。う、うわぁぁぁぁァ!!」
バイズは逃げようとしたが腰を抜かしているので、立てずいわゆる赤子のハイハイで去っていった……
そんな光景を見ていた。周りの男たちは目を見開き、呆然として固まっていた。
颯真はふぅっと溜め息をつき、何事もなかったように依頼状を見て回った。