妖狐 ~フィリア~
私は妖狐と呼ばれる獣人です。
妖狐は獣人の中では一番魔力を保有している種族で、私は妖狐の中でも魔力量がかなり高いらしいです。
そんな私に『王都:ゼルレイン』のファルシオン魔法学園と呼ばれる学園から推薦が届きました。
ファルシオン魔法学園は二百年以上の歴史を持ち、数々の優秀な魔術師を卒業させ、周りからは魔法のエリート学園と呼ばれるほどの有名な学園です。
ですが私はこのお誘いを断ろうとしました、けれどお母さんとお父さんが
「私たちは大丈夫だから、あなたはもっと自由に生きなさい」
「そうだぞ!父さんのことはいいから、せっかく推薦も来たんだし学園で楽しんで来なさい」
二人は優しく微笑みながら私に話してくれて、私は王都へ行くことを決意しました。
私の村は150人しかいない小さな村で、みんなで助け合い、いつも笑顔で満ち溢れており、私にとってここはかけがえのないところです。私は村の人たち、一人ひとりに王都で魔法を学ぶことを伝えました。
皆さんは応援の言葉や別れの挨拶などいろいろな言葉をもらい、嬉しさと別れの寂しさで一杯になり、少しだけ泣いてしまいました。
旅立ちの時にみんなはずっと手を振ってくれて、私は感謝の気持ちを胸に抱きながら、後ろを向き、大声で
「いってきまーーす!!」
とみんなに向かって叫び、みんなからは
「「「いってらっしゃーーい!!」」」
と山びこのように大きな返事が帰って来た……
☆☆☆☆
私が住んでいた村から王都まで徒歩で七時間、馬車で三時間かかり、少し遠い道のりかと思いますが、獣人は人間と違い、身体能力が高くこのくらいの道のりなら楽に移動できるのです。村を出て五時間が経過し、ようやく王都の城塞が見えてきて、安心した時でした……
私の後ろから殺気を感じ、無理やり身体を捻らせて回避すると先程まで私がいた場所に黒い腕が降り下ろされ、小さなクレーターができていた。私は殺気の正体を確認し……絶望した。
相手がまだゴブリンやオークなら倒せた……
けれど私の視界には黒い巨人オーガが三体も、
私を見て、まるでようやく食料を見つけたような顔を向け、よだれを垂らしながら笑っていた。
私はとっさに火の中級魔法【炎槍】を唱え、炎の槍をオーガに放った。炎の槍はオーガを飲み込み、大爆発を起こした。私は神に願うように立ち上がりませんようにと願ったが……黒煙から出てきたオーガは火傷すらなく、堂々とたたずんでいた。
私は恐怖で身体が思うように動かず、震える足で後ずさりをしていたためか、尻餅をついてしまい、もう逃げられない状態になってしまい、目に涙を浮かべ、震える声で助けを求めた……
――だれか……助けて……
オーガはそんな彼女を嘲笑うかのように顔を歪め、手を伸ばした。
私はオーガから伸ばされる手をただ呆然と眺めていた……
私は死を覚悟し、目をゆっくり閉じようとした……しかし、私にオーガの手が届くことはなかった。
強い風が吹いたかと思うと途端に私の視界は黒染まった。目を閉じたわけではない……
そう、黒を基準とした和服を着ており、さらさらの黒髪、切れ長の黒目、顔は見たことがないくらい整っている男の手には赤黒い刀が握られ、目ではとらえきれない速度で刀を降り切り、オーガの右腕は鮮血を噴き出しながら地面へと落ちた……