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異界覇王のテンプレハーレム  作者: 柊屋
二章
15/16

決着

闘技場。この場所は模擬戦や選抜戦などに使われる所で第一から第四の四つの闘技場が魔法学園に配備されている。その中の第二闘技場のステージに二人の男が佇んでいた。方や魔法学園の黒い制服を来た黒髪の男。方や剣士学院の紺色の生徒を来た金髪の男は互いに睨みあっていた。観客席からは溢れんばかりの人だかりと声援が闘技場に大きく響き盛り上がっている。


「……なんで?」


颯真はこの観客の多さに驚いていた。いくらなんでも情報が回るのが早すぎないか?と思って呆然としてしまった。高校に入学した時に代表挨拶をしたが高校の人数など比べられる非ではない。


「さてそろそろ始めようと思うけどいいかい?」


「ああ、大丈夫だ。先生合図お願いします」


「よし!それではソーマ・アマミヤ対テイル・レオナルドの決闘を始める!」


決闘を行うには先生の承諾がなければできないため今回はカイン先生に審判をお願いした。カイン先生の容姿を教えた方がいいのかな……。まあ、とりあえず、一言でいうと筋肉。

カイン先生は女性のはずなのに俺がいた剣士ギルドの連中より筋肉がついており、見た目がムキムキのおっさんが女装をしたような感じなのだ。しかもあれで剣士ではなく魔法使いなので人は見掛けによらないな……っと改めて認識したよ。


「それでは始め!」



「来い、【虐刃】」


黒いオーラが手のひらから迸り一振りの黒い刀が姿を見せる。天下三作の一つ。名刀《島津正宗》

【虐刃】は正宗をモデルに作られた一品。刃長68.7cm反り1.5cmの《島津正宗》は日本刀の平均刃長に比べるとやや長さがないが切れ味は最高峰を誇る。


「さあ、来てくれ。僕の聖剣。《巌牙剣(ディルファング)》」


先程着けていたキラキラの長剣の姿はなくテイルが抜刀したのはレイピア。斬るではなく刺すに特化した武器。竜の刻印が掘られた手の甲を覆う湾曲した金属板が取り付けられている。


(……聖剣…)


颯真はテイルが言った事が気になっていた。あいつが持つレイピアがもし本物の聖剣だった場合油断することはできない。

聖剣とは魔力を帯びた武器の事だ。聖剣、魔剣の数は恐らくこの世界に千もあるかどうかの貴重な物で王族や貴族が重宝している。それじゃあ、何が危険か?というと聖剣や魔剣には特殊能力が存在する。

火を刃に纏ったり、刃の風を起こすなど魔法のような力を秘めているのだ。

対して俺の持つ【虐刃】は特殊能力などすごい力など付与されていない。【戒造】は武器を作り出す事ができる。一見強そうに見えるがただ武器を型どる模造。つまり【虐刃】は強度や切れ味が良いだけの武器なのだ


両者武器を構え敵を見据える。


静寂


観客の歓声は試合が始まった瞬間、シンっと静かになり、ただ勝負の行く末を見守る。


「ハッ!」


先に動いたのはテイル。風が走ったかと思うと瞬間にレイピアの斬撃が颯真の顔、目掛けて放たれたが冷静に刀でレイピアの刃をいなし反撃に袈裟を放つが俊敏にテイルは回避する。


「はは!凄いね。今の斬撃、かなりの威力だ」


「そりゃどうも」


こいつはただのギザ野郎ではない。威力を落とし小手調べのつもりで斬りかかった。大抵の人はこの一撃を喰らっただけで恐らく致命傷を負うだろう。しかしテイルは避けた。つまりテイルはそこら辺の奴らよりも上位の人間だろう。本人はあの一撃を俺の本気だと思ってるようで流石に相手の力量を測る領域にたどり着けていないようだ。


「行くぞ…」


地を蹴り、懐に入ると右手に持つ持つ虐刃で斬りかかる。しかしまたしてもテイルは回避し、レイピアで三連発の攻撃を放つが颯真は全て払い落とす。だが最後の剣を払った瞬間、テイルは威力を殺せなかったのか重心が少しずれバランスを崩す。そんな隙を逃がすわけがなく右脇腹に横薙ぎを振るう。流石に避けられるわけがなく斬撃を食らったがレイピアの刃で威力を殺したことによって致命傷を避けたテイルはニタリと笑みを浮かべていた。


「魔法は使わないのかな?」


「そんなに魔法を使ってほしいのか?」


「そうだね。ぜひ見たいものだよ。まあ、出来たらの話だけど」


「そうか」


颯真が言葉を発した瞬間、颯真は忽然と消えた。風が吹き、砂埃が巻き上がる。颯真がいた場所には靴の跡を残し地面が抉れていた。


颯真が姿を消して約0秒。

それは起こった。


「ぐああぁッ!」


テイルの身体から鮮血が迸る。黒体に無数の切り傷を負い、地に伏した。血がポタポタと流れ落ち赤い水溜まりを作っていく。


「い、一体何が…起こった…」


人間の神経伝達速度の限界は0.13秒と記録されている。平均0.16~0.20秒。各感覚器官が感知した情報が脳で処理され、筋肉に伝わるまでのスピード。先程の颯真とテイルの距離は約十m離れていた。仮にテイルの反応速度が0.16秒だとしよう。テイルの視界から消えるには十mの距離を0.16秒以上の速さで縮めなければならない。通常ではそんな速さで動くことは出来ないと思うがこの世界には魔力と呼ばれる不思議な力が存在する。


魔力鎧(エンチャントオーラ)


この力は魔力を筋肉などに付与することで信じられない力を発揮することができる。巨大な石をデコピンで割ることすら、50m走で1秒で走ることすら容易くできる。

しかしデメリットもある。それは魔力操作だ。身体能力向上とかアニメやゲームでは簡単に出来る物だろと思っているが全く簡単ではない。

針に糸を通す作業を100回くらい行うレベルで難しいのだ。一つ間違えば筋肉繊維を魔力でズタズタにしてしまい最悪足を動かせなくなる危険な行為なのだ。

他にも《身体能力向上(ステータスアップ)》というスキルがあるがあれは単純すぎるのだ。例えば魔力鎧なら石を三当分に割るという調整が出来るが身体能力向上では石を壊す動作しか行えない。つまり調整しようにも出来ないため対人用ではないのだ。

ならなぜ颯真は出来たかというと答えは単純。

颯真が異世界人だからだ。

日本人ならアニメやゲームなど誰でもしたことがあるだろう。アニメとかは一番参考になる。つまり魔力操作のイメージがしやすいのだ。

しかしオリジンに住む人間は当然アニメなど知るわけがないのでイメージをやろうと思っても分かるわけがない。たとえ教えたとしても難しいだろう。


(今ので倒すつもりだったんだが…)


思うように身体が動かない。人を斬ったのは始めてだ。いつかは来ると覚悟していても本番になると躊躇ってしまう。


(まだまだ甘いな……俺は…)


刀に奴の血がべっとりと着いている。黒い刃を濡らし、綺麗な波紋を血で汚していく。


「くそッ!これでも食らえ!」


必死の形相で自身の血で汚れたレイピアを地面に刺すと奇妙な事が起こり始めた。土や石が混ざりあい、何かを作っていく。それは細長く体長5mを越える大蛇の姿に変化し、合計四体の大蛇がテイルの側に作り出された。


「もう手加減なんかしないぞ!行け!【土岩蛇(ロックスネーク)】!」


「シャアアアァァァ!」


一匹が鋭い牙を見せ噛みついてくる。だが颯真は冷静に回避していく。避けられた蛇はそのまま壁に激突し自身の身体で砂埃を撒き散らす。


(おいおい、まじかよ……)


この闘技場の壁は鉄製だ。普通なら激突して大蛇は砕けて終わると思ったが目の前の光景を見たらその思考は無惨に消えた。


ガリ…バキッ!…ベキゴキッ!


鉄を噛み砕いている。蛇の牙は折れることなく、鉄を食らっていた。そんな強靭な牙で噛まれたら身体は一瞬で潰れるだろう。他人事にしたいがあいつが狙っているのは俺だ。かなりめんどくさい。


「シャアアア!!」


蛇は俺を視界に捉えると叫びながらその巨体で飛び付いてくる。そんな蛇に向けて手をかざし唱える。


「【揺刻】」



バゴンッ!


何かが壊れる音が闘技場に響く。土で出来た身体には無数の穴が空きバラバラと崩れ、地面に落ちていく。


「う、嘘だろ…僕の【土岩蛇】が…」


テイルはもちろん観客まで驚いていた。あの鉄すら砕く蛇が一瞬にしてやられたのだ。驚かない訳がない。


「く、黒い剣?」


黒い霧状の剣。突如と現れた剣は蛇を斬り砕き容赦なく破壊した。


「もういいか?お前の負けだよ」


「な、何か言ってんだ!僕にはまだ三体の土岩蛇がいる……ん…だ……」


後ろを向いたテイルの顔から血の気が引いていく。先程まで自分の後ろにいた蛇達は颯真に攻撃した蛇と同じように別の黒剣によって無惨に砕かれていた。


「これで終わりだな…」


颯真は黒い霧剣の剣先をテイルに向ける。


「や、やめろ……やめろ!この僕が負ける?ふ、ふざけるな!お前は負けるべきなんだよ。そして僕はミラを手に入れるんだ!邪魔するな!」


怒り狂った形相で吠えてくる。先程のキメ顔は一体どこへ言ったのやら……


「なら、まずは相手の気持ちを理解できるようになるんだな」


こいつはミラの事が好きなんだろう。あんな美人だ。気持ちは分かるがあれはやりすぎだ。自分の権力を使って脅すなど言語道断だ。


「僕こそが!勝者…ッ!!…なん……だ……」


バシュ!


黒い剣はテイルの頭を貫く。貫かれたテイルは白目になり、口から泡を吐きながらバタリと地面に倒れる。流石に殺した訳じゃない。俺が貫いたのは奴の意識だ。頭には怪我なんてないし、あるとしたら俺が刀で斬った切り傷くらいだ。


(…当分は剣が使えないな)


俺がただ奴の意識を奪った訳じゃない。また復活して勝負を挑まれたりしたら堪ったもんじゃない。なので聖剣との繋がりを一時斬らして貰った。これで特殊能力を使うことすら剣を握ることすらできないだろう。


(しかしまたやらかしたかな?……)


そんな事を考えながら逃げるように背を向け闘技場から退場するのだった。



――――――――――――――――――――――


戦闘シーンはどうしても苦手です……



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