期待と不安
魔物の大軍と戦い二週間過ぎた。
竜が乱入するなどのアクシデントもあったが無事勝利を納め王都では勝利を祝う祭りが行われていた。しかし、俺はそんな祭りを楽しむことは出来なかった。なぜなら王様……いや、女王から呼び出されたのだ。
ほとんどの国が男の王ではなく女性……。つまり女王がこの国の最高権力者ってわけだ。
そんな偉い人から呼ばれ当然断ることもできないので何か報酬でもくれるのかな?と軽い気持ちで王城に来たのだが……。俺の予想を遥かに超える事が起きた。
褒美をくれるのではなく、竜を倒した称賛でもない。
俺が魔法を使った事だった……。
最初聞かされたときは、何かおかしいことでも?と思ったが続きを聞いた瞬間。は?と間抜けな声を上げ思考がフリーズしてしまった。
“男は魔法を使えない"
この世界では誰もが知ってる常識らしい。男が魔法を使えない事は未だ謎のままで解明されておらず過去にも男の魔法使いが現れたケースもないらしい。
説明を聞いた颯真は先に教えてくれよ…と心の中でゼノアに文句を言っていると
「ソーマと言ったな……ではここで魔法を使って見せてくれないか?」
「…わかりました」
女王の前で膝を尽き、頭を下げた状態から身体を起こす。女王の姿は見えず。女王の周りに魔力を感じたので恐らく【隠蔽】系の魔法を使って姿を隠しているのだろう。なぜ隠すのがは知らないが……
「【揺刻】」
颯真の右手に黒い剣が現れると周りの大臣?たちがどよめき出し驚きの表情を浮かべていた。
「ほう……魔法は本当に使えるのだな……」
「…はい」
俺が魔法を使った瞬間。女王の近くに誓える魔法使い達が俺に警戒心を表すように顔を強ばられた。女王がいる前で魔法を使ったりしたら、まあ、警戒するよな……。と思い黒剣を霧散させる。
「…ではソーマよ。貴公は騎士団の一員になってもらいたい」
「え?」
唐突すぎる。いきなり騎士団に入れと言われ直ぐ様返事を返せる訳もなく目をパチクリさせている俺を放置し女王はどんどん話を進めていく。けど俺は女王を守るために力を使うことなどできない。確かに騎士団に入ることは光栄なのかもしれないが俺にとっては興味もない。恐らく戦力としてほしいだけなのか。それとも男で魔法を使えるから保護し監視をしたいのか。どちらかはわからないがあまり気が進むことではない。男で魔法を使える事は確かに異常なのだろう。けど騎士団とかに入ったりしたら俺の自由が奪われそうなのでここは丁重にお断りをしようとした瞬間……
「お待ち下さい」
謁見の間に凛とした声が響き、皆、声を発した女性に目を向ける。そこには灰髪赤目の女性が立っていた。
「レイア・グライム…」
「女王陛下。彼の事は私に任せてくれませんか?」
「どういうことです?」
「彼は男の身でありながら魔法を使うことができ、それも竜を倒すほどの力を保有しています。万が一女王陛下を襲うようなことがあればただ事ではすみません」
「そうだ。だから騎士団に入れ信用できる相手か見極めようとしたのだ」
確かに俺はここにいる誰からも信用されていないだろう。もし俺が悪人だとしたら女王にどんな危害を加えるか分かったもんじゃないと思ってるはずだ。俺だって逆の立場だったら警戒する。けどここまで信用されていないと思うと少しへこむな……。
「それでは騎士団の者達から苦渋が出るのではないでしょうか? 騎士団は正式に学園を卒業した者たちです。なのに男だからと言って簡単に入れることはどうかと」
「……なるほど。確かに騎士団に入るには学園の卒業資格がいる。この男を特別扱いしたりすると不満は出るか……」
「はい。彼はまだ十代後半の少年です。学園に入れ信用出来るかどうか見極めればいいと思います」
「……レイア。彼を任せられるか?」
「はい。任せてください」
どうしよう……。俺の知らない所で話がどんどん進んでいく。拒否権は恐らく無いだろう。全力で俺を取り込もうとする熱意が謁見の間に漂い顔がマジだ。
話を聞いたところ学園に入れられるらしい。まさか異世界に来てまで学校に行くとは思わなかったが学園に行くのは別に嫌じゃない。むしろこっちからお願いしたいのだ。理由は二つ。一つ目は魔法についてだ。俺の魔法は全て独学なので基本と言うものがよく分からない、だからいつかしっかりと学びたいと思っていた。二つ目は卒業資格。この世界では魔法使いが一番稼ぐと言われている。まあ、単純にお金を稼ぎたいだけなのだ。この世界に来てから白米を一度も食べたことがない。米は高価な物なのでお金を節約しながら生活していたのでいいまで買えることができなかった。日本人として俺の口は米を食べたいとウズウズしている。
その後、俺も学園に入ることを了承し今は学園の説明をする所だ。部屋に通された俺とレイアさんは対面で机を挟み革製の椅子に座った。座り心地は最高だ!
「先程は失礼なことを言ってしまい。申し訳ありません」
レイアさんの最初に開かれた言葉は何と謝罪だった。
けれど学園に入ることは俺も賛成だったし監視するとしたらこれほど優れた所は無いだろう。
「いえ。気にしないでください。実は魔法の事をしっかりと学びたいと思っていたので」
「…そう言ってもらえると助かります」
先程の事をまだ気にしているそうだがとりあえず話を進めてもらうことにした。
「まず。ソーマさんには一年生のクラスに編入となります。学生服などは学園側が用意しますし、住むところも準備してあるので安心してください」
「ありがとうございます!」
魔法学園。この世界では魔法を中心とした学問が多い。日本の学校は古文や数学などやっているがはっきり言ってあまり楽しいものじゃない。魔法の授業はどんなことをするのかかなりワクワクしている。それに寮まであるとは最高じゃないか!今まで宿屋の埃っぽいベッドで寝ていたので期待度大だ!
その後は学園の校則など必要な事を教えてもらった。
「それでは学園に移動するので手を出してください」
「手…ですか?」
若干困惑しながら学園長と手を繋ぐと周りが歪みグルグルと回転しだす。まるで車酔いになったかのように気分が悪くなり頭がクラクラし始めると周りが先程いた部屋ではなく知らない部屋に変わっている。足元には魔方陣が描かれ、怪しく輝いており、それ以外にはなにもない部屋だ。
「転移の魔法ですか?」
「その通りです。よくわかりましたね」
「ここまで強烈だとは知りませんでしたよ」
「ふふふ、それでは学園を案内したいと思います」
案内された俺は事ある度に驚いていた。敷地内は東京ドームが五個くらいの広さで。教室、食堂、寮、図書館、グランドや闘技場などたくさんの設備が整っており十分に整備されていた。校舎は白くローマを感じさせる作りになっていて汚れが一つもない綺麗な校舎だ。
「すごいですね……」
「ありがとうございます。あ、見えてきましたよ」
学園長が指差す方向には一軒家が立っており、あれが自分の寮だ。つい顔が綻び早足になっていく。日本の一般より大きい家で住みやすそうな所だ。
「ここが俺が住む寮ですか……」
「はい。今日からここで暮らし学園に通うことになります。ソーマさんまだ学園の生徒ではないので食堂に入ることはできませんが料理を運んでありますので」
「おお!!本当にありがとうございます!」
「いえいえ。もう時間も遅いので私は失礼したいと思います」
「あ……」
気がつくと空は橙色に染まっており夕方になっていた。耳を澄ますと六時を伝える鐘が鳴り響いていた。
「すみません。こんな遅くまで案内してもらって…」
「気にしないでください。なにか困ったことがありましたら何でも聞きますので。それではまた明日」
「はい!」
学園長と別れた後。俺は飯を食べず真っ先に自分の部屋に入りベッドに寝転がった。
(今日はいろいろなことがあったな……。急に学園に入ることになったけど……学園に男って俺だけなんだよな……女子とは仲良く出来るか不安だけどフィリアとミラもいるし大丈夫だろう………)
瞼が重くなる。ふかふかのベッドは寝心地最高で眠気が襲ってきてどんどん意識が落ちていくのが分かる。
(まあ、頑張ろう……)
――と期待と不安を感じながらも睡魔には勝てずそのまま意識を手放した。
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展開がいきなり過ぎたかな?
どうも柊屋です!この作品を見てくださる読者様本当にありがとうございます!
他の人の作品を読むと自分の文章が無いことがよくわかりますねww
まだまだですけど頑張って書いていこうと思います!




