学校から脱出しましょう。
「学校から逃げる…?」
「説明してる暇はない。とりあえず教室から荷物取ってくるぞ」
「あ…あぁ…」
小走りで教室に戻った。
教室内はいつもの喧騒に包まれている。
二人で黙々と帰り支度を進める僕たちに、訝しげな視線を向けてくるクラスメート。
『クラスの奴らには言うな。どうせ誰も信じねーよ』
純平はそう言っていたが、やはり悶々とした思いが残る。
やっぱり伝えた方が…。
「和樹」
人差し指を唇につけて、「静かに」のジェスチャー。
分かったよ…。
小走りで階段を降り、昇降口へ。
閑散としていて何か寂しい。
「とりあえずお前の家に行くぞ」
無言で頷き、チャリ置き場に向かう。
「ゾンビは居るか?」
「…いや、居ないよ」
先ほどのゾンビの姿を探すが、見当たらない。
「それじゃさっさと行こうぜ」
「…うん」
純平の意図は分からないが…、純平が言うならきっと帰った方がいいんだろう。
力強くペダルを踏み込む。
***
…平和だ。
平日の昼下がり。犬の散歩をするおじさんや、買い物帰りとおぼしきおばあちゃん。
チャリを漕ぎながら、そんな何気ない日常が目に飛び込んでくる。
大変なことが起こっているというのに…。
「ちょっとコンビニ寄るぞ」
「何を買うの?」
「食料と水」
サバイバルっぽい…。
僕が焚き付けたというのに、不思議と罪悪感は無い。
コンビニで大量の非常食(カロリーメ○ト)やミネラルウォーターを調達し、僕の家へ。
「お前、何号室だっけ?」
「203だよ」
「二階か…」
文句を言いながらも、大量のビニール袋を携えて階段を上る。
ふぅ…、やっと着いた。
学校から20分程の道のりを寄り道込みで走ってきたため、背中はジットリと汗ばんでいる。
「よし。これで取り敢えず大丈夫」
「…どうして家に帰ってきたの?学校の方が武器とかたくさんあるんじゃ…」
「……ちょっと涼ませてくれ。汗かいた」
エアコンをつけた。
程なくして涼風が吐き出される。
しばらく涼風にあたり、そして純平は語り始めた。