協力し合いましょう。
ヒュウ、ヒュウと喉がなる。
本当にキツい。
多分小学校でのマラソン大会以来にこんなに全力疾走をした。
純平、そして女子二人の方を見てみると、同様に胸を押さえて、息を切らしている。
とりあえずチャリを停めていたところまで走ってきたが、もう……。
なんか……、死にそうだ……。
「あの…、ありがとう……」
息も切れ切れ、ポニーテール女子が口を開く。
「うっ……いや……、はぁ…はぁ………、無事で良かったよ……」
こちらも当たり障りない感じで返答しようとするが、ポニーテール女子以上に死にそうになっているため、非常に格好がつかない。
「どうしてあんなところに?」
純平が女の子達に問いかける。
ってか、コイツ復活早いな。なんでさ?
「私たちは…、食料とか…、色んなものを取りに来てて……」
少しずつ落ち着いてきたのか、明瞭になる口調。
「純平君達は…、どうしてここに…?」
えっと、僕たちは……。
………………ん?
「俺たちはゾンビの様子を見に来たんだよ」
何の疑問もなく答える純平。
いやいや……、そうじゃなくてさ……。
「あの…、純平?この方達は……知り合いですか…?」
「……は?」
虫けらを見るような視線を向けてくる。
え……?僕がおかしいの…?
「クラスメイトの橘さんと北村さんじゃないか」
空気が凍りつく。僕の周りだけ。
……ヤバイ。何か言わないと。
「でっ……」
「「「?」」」
「ですよね~~~~~」
****
結果から言って、どうやら僕はクラスメイトの顔と名前すら覚えていないクズ認定をされたようだった。
彼女らは純平と交流があったようで、けっこう親しげに言葉を交わしている。
ポニーテールの女の子が橘さん…で、ショートボブの女の子が北村さん…か。
改めてその容姿と名前を確認する。
華の女子高生で、リアルが充実してそう…。
それを踏まえると、こっちはただのゲーオタであるため、やっぱり僕とは関わりがなくて当然だと思う。
おかしいのは純平だ。
僕と同類である純平が、どうして彼女達と知り合いなんだよ。
ちくしょう!気に食わない!
「おい。和樹」
だいたいコイツは昔からそうなんだ。僕が知らない内に女の子と遊んでさ!
「おい」
ゲーオタの風上にも置けないクズ野郎だよ!バーカバーカ!
「聞け」
「んぎぃ!!?」
脳天に衝撃。
何なんだよ!?
「急に何するのさ!?」
「名前呼んでも反応しないからだ」
「自己紹介しろ」と、無理矢理彼女達の方を向かせられる。
いや、気まずいわ…。
「えっと…、今野和樹…です。覚えてなくて、何か…ごめんなさい…」
すると二人は「あぁ…」とか「はい…」と苦笑いを浮かべる。
うっわぁ…。死にたい…。
「ってなわけでな、和樹。彼女達も一緒に山に帰るぞ」
「あぁそうですか……て、えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
てなわけでって、どうしてそうなった!?
「いや、話聞いてただろ?」
著しく聞いてないよ!ずっと純平に呪詛の言葉を投げ掛けてたよ!!
「このまま街中に留まるのも危険だからって」
「まぁ、それもそうか…」
成行とは言え、キツいなあ…。
今現在もこちらを見て、ヒソヒソやられている。
間違いなく嫌われているっぽい。
「はぁ…」
仕方ないか…。
僕が大人の対応で受け入れてあげよう…。
「それじゃ、使えそうなチャリを探してくるから待ってろ」
そう言い残すと、他の三人はどこかへと行ってしまう。
あの、僕は着いていっちゃダメなんですかね…?
釈然としない心持ちで、街路樹の作る日影に座り込む。
日はだいぶ傾き始めている。帰るならそろそろ帰った方がいいだろう。
…彼女達と過ごすのか…。
考えれば考えるほど気が滅入る。
如何せん、口すらろくにきけないというのに、コミュニケーションとかどうすればいいんだろう?
大体、純平も純平だよ。
いつの間にあんな仲良しコミュニティを構築していたのか。
…本当にそんな奴だったかな…?
思い返してみると、昔はどっちかと言えば僕の方が女の子と話せていたような…。
まぁ、そんなのどうでもいいか。
もう、あまり覚えていない記憶を探りながら、僕は三人を待った。




