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モールに行ってみましょう。

 



 所要時間10分。

 先ほど和樹と純平がいた大通りから、だいたい10分のところにそのモールはある。

 バスや電車などアクセス方法も多様で、それこそ休日になれば多くの家族連れや、カップルで賑わいをみせる場所になっている。

 そして何より一番の特色と呼べるポイントはその()()だ。

 総面積245、223㎡で、東京ドーム六個分という化け物じみたキャパシティを持つ。

 最も二人にとって、なじみのある場所に変わりは無いが、それでも毎回来るたび、こうしてその巨大さに圧倒されるほどの体躯をしていた。


 ***


「やっぱりすごい大きいね…」


「……そうだな」


 大通りに転がっていた金属バット。

 それが今のところのメインウェポンだ。


「この中に、ゾンビがうじゃうじゃいるのかな」


「分からない」


 ゆっくりとかぶりを振って、純平は不敵な笑みを浮かべる。


「…でも、なんかゲームみたいだな」


 ……このゲーム脳が。

 でも。

 本音を言えば僕もドキドキしていた。


 画面の中の世界が現実となって、こうして困難となって立ちはだかっている。

 セーブ無し。ライフ無し。武器縛りありの難易度鬼の無理ゲーにもほどがあるが、ずっと密かに思ってきたこと。


 ――――――――現実でゲームのようなことがしてみたい。


 それがこうして実現しているわけだから、何が起こるか分からない。


「駐車場には何もいない、か……」


 大通り同様に黒焦げの車や、横転している車が数多くあったが、人気は全くなく、閑散としている。


「和樹。見てみろよ」


 純平の視線の先。

 モールの入り口。





 そこには今にもあふれ出さんばかりの()()()がうごめいていた。


「………!!!あれ大丈夫なの!!?」


「…何が?」


「外に出てこないの!!?」


「出てこれないから、ああして出入り口にたまっているんだろうよ」


「…なるほど」


 それはそうか。


「とは言え、あそこから中に入るのは不可能だな。他の出入り口も見に行くか」


 出入り口って。

 このモールめっちゃあるんですけど。


 全部見に行くの?といった要旨の質問をしたら、当たり前との返答が返ってきた。


「まじか……」


 ***


 モールには客専用の出入り口が15個。商品搬入する際の出入り口が20個あった。

 結果から言うと、客専用の出入り口はすべてゾンビによってふさがれていた。


 逆に商品搬入の出入り口はポツポツといたりいなかったりと、安全に中に入れそうだった。


「何でまたこんなに結果がハッキリ分かれるんだろうね」


「一般の客は商品搬入の出入り口なんか来ないだろ」


「???」


「きっと、ゾンビになる前の記憶があるんだよ」


「………何を言ってるのか、よく分かんないんだけど……」


 純平は静かな口調で話し出した。


「今まで見てきたこととか考慮すると。まず、ゾンビは外に出るのを極端に嫌がる。それは外を出歩いているゾンビがいないことから分かるだろ」


「うん。そうだね」


「多分、屋内にいるんだろうな。まあ、次に商品搬入の出入り口にゾンビが少ないことに関しての推測だ」


「お願いします」


「そもそもこんな入り口があるのを、お前は知っていたか?」


「いや、知らなかったよ」


 純平が商品搬入の出入り口の存在を教えてくれた。

 というよりなんでコイツはこんなに、モールについて詳しいんだろう…。


「一般の人間はモールの構造について熟知していない」


「うん」


「それはゾンビになった今現在も変わらない」


「ゾンビになる前の一般常識とか、そういったものがまだ残ってるっていうこと?」


「多分な」


 多分なって……。

 結構すごいことを言ってるけど。


「だから、ある程度の行動の予測ができるんだ」


「どういうこと?」


「………あのなぁ、少しは自分で考えろよ…」


「考えれるだけの頭がないんだよ!」


 言ってて悲しくなってくるわ!


「……はぁ、モールには裏の通路があるって、分かるか?」


「裏の通路?」


 聞いたことないけど。


「それって…?」


「主に店員が通る通路があるんだ。商品の搬入や移動に使われる」


 そんなところあったかな……。




 不意に。

 店員がショップとショップの間にある通路に消えて行くのが頭をよぎった。


「あぁぁ~~……、あれか」


「分かったか?それがモールに入る上での生命線だ。一般人はこの通路の存在にあまり気づいていないだろう。つまり、ゾンビになってもそれは変わらない、ということ」


「裏の通路には入ってこないってこと?」


 首を縦に動かす純平。


「もちろん、店員がゾンビになった場合は、その通路の存在を把握していたはずだから、通路にもある程度の数はいるだろうけどな。普通に突入するのとでは安全性が格段に違う」


「なるほど…」


 普通よりも安全。

 根拠はないが、とても力強い自信へと繋がる。


「あまり長居したくないからな」


「……そうだね。ちゃっちゃと終わらそう」


  二人は不気味なほど静かな商品搬入口を見つけ、物音をたてないように、二人は静かに、中に入っていった。

 


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